特例は愚の骨頂 ― 2025年02月21日

「年収103万円の壁」を巡る自民、公明、国民民主の協議が難航し、延期された。自民案は所得制限を設けた上で非課税枠を160万円まで拡大するものだが、国民民主は新たな壁の設定に反発。自公は所得制限の緩和を検討し始めた。自民案では基礎控除の特例を設け、年収200万円以下の人には恒久的に37万円を上乗せし、非課税枠を160万円に拡大。年収200万~500万円の人には2年間限定で10万円を上乗せし、非課税枠を136万円以上とする。ただ、有権者からは「年収制限をなくし、シンプルにしてほしい」との声もある。200万円と500万円の線引きは、最低賃金労働者と平均年収を考慮したものだ。財務省OBの専門家は、非課税枠160万円の評価が得られなかったことや、政治の駆け引きで税の論理が崩れることへの財務省の懸念を指摘している。メディアは税金問題をもっとシンプルに説明すべきではないか。まずは減税総額がいくらになるかを示せばよい。国民民主党案の172万円は財務省の試算で減税総額7.5兆円。最初の自民党案の123万円(所得制限あり)なら6千億程度。今回の自民党案の160万円(所得制限あり)の減税総額も6千億を超えた程度とされ、国民民主の提案額のわずか1割にも満たない。先進国標準ではインフレ率で非課税枠は自動的にスライドする仕組みになっており、それで計算すれば少なくとも2兆円の減税は当たり前で、現在のみみっちい自公案では話にならない。その上に、徴税は公平・効率・安定の三原則に沿うべきであり、熱海の旅館のように継ぎ足しで特例を増やすのは愚の骨頂と言える。
国民民主案の非課税枠178万円への引き上げに対し、財務省が計算した国・地方の減収は7.5兆円。その内訳は、地方が4兆円の減収、さらに交付税減額1兆円を加え、合計5兆円の減収になるという。ただし、この計算は地方減収に対し国が何の手当ても行わない場合のものだ。仮に国が地方に4兆円分の補填を行い、交付税の減額をしなければ、地方の財政は影響を受けない。しかし、これを恒久的に続けることは困難であり、国と地方の税収分配割合を変更する税法改正が求められる。そうすれば減税による地方税収減は少なくなる。地方創生が叫ばれて久しいが、国には税収の配分を見直す気配がない。大規模な所得減税を皮切りに、地方の権限を強化するためにも、税収配分の見直しに着手すべきだろう。そして、まずその前に先進国並みの非課税枠のスライド制に改正すべきなのは言うまでもない。
国民民主案の非課税枠178万円への引き上げに対し、財務省が計算した国・地方の減収は7.5兆円。その内訳は、地方が4兆円の減収、さらに交付税減額1兆円を加え、合計5兆円の減収になるという。ただし、この計算は地方減収に対し国が何の手当ても行わない場合のものだ。仮に国が地方に4兆円分の補填を行い、交付税の減額をしなければ、地方の財政は影響を受けない。しかし、これを恒久的に続けることは困難であり、国と地方の税収分配割合を変更する税法改正が求められる。そうすれば減税による地方税収減は少なくなる。地方創生が叫ばれて久しいが、国には税収の配分を見直す気配がない。大規模な所得減税を皮切りに、地方の権限を強化するためにも、税収配分の見直しに着手すべきだろう。そして、まずその前に先進国並みの非課税枠のスライド制に改正すべきなのは言うまでもない。