『TRUE COLORS』2025年03月08日

『TRUE COLORS』
1月から全9話で放送された『TRUE COLORS』は、源孝志の小説『わたしだけのアイリス』を原作とし、脚本・演出も本人が手がけた。東京・天草・イタリアを舞台に展開するロードムービーである。突然、眼の難病に襲われたファッションフォト界のトップフォトグラファーであるヒロインが、徐々に色覚を失っていく苦境の中で「本当に美しい “色” とは何か?」を探し求める再生の物語。4Kテレビを持っていて良かったと初めて思うほど、天草の海の美しさが存分に映し出される。天草には3年前の秋に旅したことがある。ロケ地となった崎津教会は、重厚なゴシック様式の天主堂で、集落の中心地に位置する。チャペルの鐘展望公園から眺めると、河浦湾に浮かぶように見えることから「海の天主堂」とも呼ばれている。堂内は国内でも珍しい畳敷きで、鮮やかなステンドグラスから優しい光が差し込んでいた。ドラマでは、この教会と周辺の静かな青い海が何度も繰り返し映し出される。物語は、高校生の主人公(倉科カナ)が、父の船と商船が衝突した事故によって、航海士(渡辺謙)と自分の母親が結ばれることに耐えられず、天草を後にするところから始まる。しかし、難病が発覚し、東京でのすべてを投げ出して故郷へ戻ることになる。

初恋の幼馴染の勧めで父に会い、「母と再婚したのは哀れみか」と問いただす主人公。父の「惚れたからに決まっとる」という言葉にハッと我に返る。そして、あれほど嫌っていた母と再会する決意をし、カメラに母の姿を収めるシーンは胸が熱くなる。すべてを許した主人公は、父の船に乗って熊本へ向かう。そのとき、幼馴染の漁船がいつの間にか追いかけてきて、「海咲〜! こん色ば心に刻み込めーっ!」と絶叫する。さらに、仲間の漁船が大漁旗を掲げ、主人公の再起を励ますかのように船団を組んで並走するシーンは、涙なしには見られない。天草の青い海の映像に合わせ静かにシンディ・ローパーの『TRUE COLORS』が流れ出す。

この世界が貴方をおかしくなるほどギリギリのところまで
追い詰めてしまっているのなら
私に助けを求めて欲しいの
私ならずっとそばにいてあげるから
本当の貴方の色を取り戻してあげられる
光をもう一度見出してあげられるわ
奥に眠っている本当の貴方が
私は大好きでたまらないの
自分らしく生きることを恐れる必要なんてどこにもないわ
本当の貴方の姿は
虹のように周りの人を魅了するのよ、本当に美しいわ

美しいドラマだった。
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