トランプ米政権の関税政策2025年03月14日

トランプ米政権の関税政策
トランプ米政権の関税政策が景気の先行きを不透明にしている。4月に新たな関税措置を発動予定で、市場は警戒を強めている。米国の関税強化に対し、中国は報復関税を実施し、EUやカナダも対抗措置を表明。貿易摩擦の激化による経済の停滞が懸念される。エコノミストは経済成長予測を下方修正し、景気後退リスクの高まりを指摘。JPモルガン・チェースは米国の景気後退確率を40%に引き上げ、ウェルズ・ファーゴは世界経済が2026年に景気後退に陥る可能性を示唆した。トランプ氏の関税強化姿勢を受け、10日のNYダウは1100ドル超下落。12日にはEUの対米報復計画に対し、「やり返す」と述べ、さらなる対抗措置を示唆した。まさに関税戦争である。武力こそ用いないが、このエスカレーションは歴史上、恐慌や世界大戦の引き金となったことがある。トランプ氏によれば、関税を引き上げるのは輸入品を締め出し、国内産業を復活させるためだという。しかし、関税は自国民が値上げの負担を強いられる政策でもある。つまり、コストプッシュインフレを引き起こし、ようやく落ち着きを取り戻した米国内の物価が再び高騰する恐れがある。

おそらく、増収となる関税を減税や国内投資に充てるというシナリオを持っているのかもしれないが、これもインフレ要因となり、結果としてFRB(米連邦準備制度理事会)は金利を引き下げられず、為替はドル高が進行し、米国の輸出は伸び悩むことになる。関税戦争が続けば、インフレによる価格高騰とドル高に加えて、関税負担もかさみ、米国製品はますます他国から敬遠されるだろう。アメリカの主要輸出品には精製石油、航空機、自動車、医薬品、半導体、トウモロコシや大豆などの農産物があるが、輸出額はGDPの約13%だ。トランプ氏は輸出量が減少しても国内生産を拡大し、インフレを抑制しようと考えているのかもしれない。しかし、その戦略に市場が納得する保証はない。また、高関税を課すアメリカを嫌い、各国が独自の経済圏を形成すれば、世界第2位の経済規模を誇る中国がその中心となる可能性が高い。アメリカが最大の標的とした中国経済がむしろ活性化する事態も考えられる。つまり、安全保障の観点からも、この関税政策は米国にとってマイナスに働く恐れがある。トランプ氏の関税政策は理屈では説明がつかず、予測不可能な要素が多い。関税戦争が世界恐慌や世界大戦へとつながらないことを願うばかりである。
Bingサイト内検索