硫黄島星条旗写真の削除2025年03月19日

硫黄島星条旗写真の削除
米国防総省が、太平洋戦争の激戦地・硫黄島で1945年2月に米軍が星条旗を掲げた歴史的写真をウェブサイトから削除したと、ワシントン・ポストが報じた。この写真はAP通信のカメラマンが撮影し、ピュリッツァー賞を受賞した有名な一枚である。削除の背景には、国防総省が進める多様性・公平性・包括性(DEI)に関する方針があるとされ、写真に米先住民の海兵隊員が写っていたことが影響した可能性が指摘されている。また、国防総省は、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」を削除候補に指定。「ゲイ」という単語が男性の同性愛者を指す言葉と誤認された可能性があると報じられている。米軍は近年、DEI政策を推進してきたが、その見直しが進む中で、戦争の重要な記録が消去される動きが再び表面化した。硫黄島の戦いは米軍の太平洋戦線における重要な勝利の一つとされる。今回の写真削除は、歴史的記録の扱いに関する議論を呼び起こしている。これを報じたワシントン・ポストも共同通信も、リベラル寄りと見なされることが多く、アメリカの政治において民主党寄りの報道姿勢が指摘される。そのため、今回の報道の説明が中立的かどうかは疑問が残る。バイデン政権のDEI政策の影響で、コロンブスが黒人迫害をしたとして市民が銅像を破壊したり、南北戦争の南軍の軍人銅像を撤去したりする動きが加速し、米国内の分断が進んだ。今回の国防総省のウェブサイトでの掲載削除報道は、写真そのものが消滅したわけではないし、バイデン政権下での実物の破壊行動と比較する報道もほとんど見られない。

しかし、歴史的価値が確定している作品に対し、評価を理由に撤去や削除を行うのは間違いだ。特に、国民の評価が分かれる事柄については、公平で中立的な扱いが重要だ。例えば明治政府に反逆した西郷隆盛や江藤新平の銅像が破壊されたら、国民はどう感じるだろうか。また、中国大陸への侵攻の礎となった203高地の奪還を描いた司馬遼太郎氏の作品や、ピュリッツァー賞を受賞した沢田教一氏のベトナム戦争の写真集が図書館から排除されたら、市民の反応はどうなるだろうか。作品に対する歴史的評価が存在することは問題ではないが、市民運動や政府の意向によって排除する行為は、表現の自由を守る民主主義を損なうものである。今回の国防総省の対応は、行き過ぎたDEI政策へのカウンター行動と考えられる。しかし注意すべきなのは、政権が意図しない行動を点数稼ぎの役人が行うことだ。ジョー・ローゼンタールの作品は、人種を超えた兵士たちが激戦を勝ち抜いた姿を表現しており、その構図も評価されている。長い間、アメリカの歴史的記録として広く知られ、さまざまな場面で使用されてきた写真を「多様性を描いているから問題がある」として削除するのは、あまりにも浅はかな判断ではないか。

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