Nスペ「国債発行チーム」2025年04月14日

Nスペ「国債発行チーム」
『未完のバトン 第1回 密着 “国債発行チーム”』というNHKのドキュメンタリーは、財務省の「国債発行チーム」に密着し、国債発行の舞台裏を描いた作品である。日銀の金利引き上げや国債買入縮小をテーマに、国内外の投資家とのやり取りが描かれている。特に中東など海外市場へのアプローチが注目されるが、冒頭で政府が国民に借りた負債である国債残高を「国の借金」と表現した点に嫌な予感を抱いた。視聴を続けるうちに、その予感は怒りを超え、あきれ果てるに至った。

番組内では、日銀による国債購入縮小と連動して財務省が行う国債売りの「営業活動」が強調されている。これでは、視聴者が国債発行の実態を誤解する恐れがある。特に、日銀の保有率低下とそれに伴う海外投資家の登場が、まるで国債発行に対する不安を煽るかのように描かれており、印象操作にしか見えない。なお、特別会計による180兆円分の国債購入額を示して多額に見せているが、実際にはほとんどが借り換えであり、新規の資金調達を意味するものではない。確かに海外資本がある程度の国債を保有することはリスクヘッジとして一定の意味を持つが、多額になれば国債安定の信用低下のリスクも増す。日銀や民間銀行が積極的に国債を買い入れないという印象と、財務省の海外への「積極的な国債販売」との結び付けは、悪質な印象操作であると言わざるを得ない。

さらに、日銀が国債を買わないかのように見える描写も目立つ。中央銀行は市場の安定を図るために国債売買で市場の通貨量を調整することが金融政策の原則である。それにもかかわらず、日銀の国債買い入れと政府国債発行との連携が欠如しているかのように描くのは、制作者の悪意を感じざるを得ない。また、金融緩和政策がデフレ脱却に寄与した面に触れず、異次元の緩和が市場を歪めたという一面的な見解のみを取り上げるのも偏った印象を与える。これでは日銀の調整は不要で金利は市場に任せておけば良いという理屈になる。視聴者の中央銀行への知識不足を良いことに言いたい放題である。もっとも、デフレが長く続いたのはバブル崩壊以降の日銀の引き締めが長期化したことが一因であるため、必ずしも日銀政策が正しいわけではないが、金融緩和だけを切り取って批判するのはフェアではない。

結局のところ、NHKという公共放送機関が特定の視点に偏った報道を行っている現状は、ガバナンスの不備を露呈している。多角的な視点と正確な統計に基づく報道が求められる中、今回のドキュメンタリーはその点で多くの疑問を残すものであった。果たして、この放送は一体誰のために制作されたのか。国債残高は国民の富とも言えるのに、何も知らない一般視聴者にとっては、国債発行がただの「悪」として映ってしまう。責任は国民にはなく、30年もの間、国民負担を増やし可処分所得を減らした結果、消費も投資も増えずGDPを伸ばせなかった政府にある。

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