ラジオ第2放送が停波 ― 2026年02月27日
ラジオ第2で思い出すのは気象通報だ。中学時代天体気象クラブで毎日気象通報を記録して天気図を作るのが日課だった。その放送がなくなるという。今は気象画像を見れば瞬時に気圧の動きと天気は予測可能だが、子どもの手で学ぶ気象学が一つ減ることになるのは寂しい限りだ。日本放送協会(NHK)がラジオ第2放送の停波を決めた。これは単なる番組整理ではない。日本の放送インフラが、いよいよ“終章”に入ったことを告げる静かな号砲である。
語学番組も教育コンテンツも、主戦場はすでにネットへ移った。若い世代にとって、ダイヤルを回して周波数を合わせるという行為は、ほとんど文化財に近い。受信機は減り、送信所は老朽化し、維持費は膨らむ。かつて複数波が必要だった時代の前提は崩れた。利用実態とコストの乖離は明白であり、第2放送の役割は実質的にネットへ吸収されている。停波は遅すぎたほどの合理化である。
だが合理化の先で、私たちは不都合な問いに直面する。災害時の情報伝達を、誰がどう担うのか。ラジオは「災害に強い」と言われ続けてきた。確かに送信設備が生きていれば広域に届く。しかし家庭用ラジオの所有率は下がり、実際に頼れるのは車載ラジオが中心だ。一方でネットは生活に深く浸透したが、停電や通信輻輳に脆い。この「強いが使われないラジオ」と「使われているが弱いネット」というねじれを放置したまま、制度だけが昭和の成功体験を守っている。
ここに割って入るのが低軌道(LEO)衛星通信である。SpaceXのStarlinkはスマートフォン直結を現実のものにしつつあり、地上インフラに依存しない通信網を拡張している。日本でもKDDIや楽天モバイルが海外勢と連携を進めるが、そこには地政学的リスクがつきまとう。有事に通信の生殺与奪を握られる構造を容認するのか、それとも自前の基盤を築くのか。これは技術論ではなく、主権の問題である。
そう考えると、NHKの役割は根底から問い直される。放送波の維持は高コスト化し、視聴はネットへ流れ、BS4Kもサブスクリプションの波に埋もれつつある。地上波の減波や帯域再編は時間の問題だ。BS帯域を放送より通信へ振り向けるほうが国家的合理性にかなうという議論は、いずれ本格化するだろう。
ラジオ第2の停波は、縮小ではない。モデル転換の前触れである。NHKが守るべきは周波数ではなく、「非常時でも全国に届く回線」だ。放送局の延長としてではなく、災害時の最後の砦となる公共通信インフラの中核へ――そこまで踏み込めるかどうかが問われている。ラジオの時代は静かに終わりつつある。次の公共インフラは、アンテナ塔ではなく、空を巡る衛星にある。ラジオ第2の沈黙は、その未来を先取りする音である。
語学番組も教育コンテンツも、主戦場はすでにネットへ移った。若い世代にとって、ダイヤルを回して周波数を合わせるという行為は、ほとんど文化財に近い。受信機は減り、送信所は老朽化し、維持費は膨らむ。かつて複数波が必要だった時代の前提は崩れた。利用実態とコストの乖離は明白であり、第2放送の役割は実質的にネットへ吸収されている。停波は遅すぎたほどの合理化である。
だが合理化の先で、私たちは不都合な問いに直面する。災害時の情報伝達を、誰がどう担うのか。ラジオは「災害に強い」と言われ続けてきた。確かに送信設備が生きていれば広域に届く。しかし家庭用ラジオの所有率は下がり、実際に頼れるのは車載ラジオが中心だ。一方でネットは生活に深く浸透したが、停電や通信輻輳に脆い。この「強いが使われないラジオ」と「使われているが弱いネット」というねじれを放置したまま、制度だけが昭和の成功体験を守っている。
ここに割って入るのが低軌道(LEO)衛星通信である。SpaceXのStarlinkはスマートフォン直結を現実のものにしつつあり、地上インフラに依存しない通信網を拡張している。日本でもKDDIや楽天モバイルが海外勢と連携を進めるが、そこには地政学的リスクがつきまとう。有事に通信の生殺与奪を握られる構造を容認するのか、それとも自前の基盤を築くのか。これは技術論ではなく、主権の問題である。
そう考えると、NHKの役割は根底から問い直される。放送波の維持は高コスト化し、視聴はネットへ流れ、BS4Kもサブスクリプションの波に埋もれつつある。地上波の減波や帯域再編は時間の問題だ。BS帯域を放送より通信へ振り向けるほうが国家的合理性にかなうという議論は、いずれ本格化するだろう。
ラジオ第2の停波は、縮小ではない。モデル転換の前触れである。NHKが守るべきは周波数ではなく、「非常時でも全国に届く回線」だ。放送局の延長としてではなく、災害時の最後の砦となる公共通信インフラの中核へ――そこまで踏み込めるかどうかが問われている。ラジオの時代は静かに終わりつつある。次の公共インフラは、アンテナ塔ではなく、空を巡る衛星にある。ラジオ第2の沈黙は、その未来を先取りする音である。