連日利上げリークの異常報道 ― 2026年06月13日
最近の日銀まわりの報道を見ていると、まだ献立も決まっていないのに「本日のおすすめは利上げ定食です」と店の前に大きな看板が出ているような妙な気分になる。厨房ではまだ玉ねぎを切っているかもしれないのに、店先だけがやたら張り切っている。政策決定会合はこれからだというのに、新聞もテレビも市場関係者も、まるで利上げが決まったかのような顔で話を進めている。「利上げ観測強まる」「追加利上げへ地ならし」。見出しだけ眺めていると、あとは日付を書き込めば完成、とでも言わんばかりだ。こちらはまだ箸も出していないのに「お味噌汁はぬるめでいいですか」と聞かれているような気分になる。
しかし、こちらは首をひねる。まだ料理は運ばれてきていないし、注文票だって見ていない。それなのに店中が「来週はカツ丼ですね」と決めつけているのである。そんな気分じゃない日だってあるのに。台所で味噌汁を温めていたら、背後から突然「利上げだ!」と叫びながら誰かが鍋のフタをバンッと開けるような落ち着かなさを感じる。こちらは弱火でコトコトやっている。インフレはようやくしぼみ始め、企業も「そろそろ設備投資でも増やすか」と腕まくりを始めたところだ。そこへ冷水をぶっかけるような話が飛んでくる。しかもその冷水、なぜか氷入りである。
そして決まって出てくるのが「複数の関係者によると」という例の枕詞だ。一度それが出ると、まだ決まってもいない話が既定路線の顔をして歩き始める。こちらは味噌汁を味見しながら「少し薄いかな」と考えているのに、横から誰かが勝手に塩をドバドバ入れていくようなものだ。後でしょっぱくなっても責任は取らない。そこへ追い打ちをかけるように、料理長にあたる植田総裁が会合を欠席するという話まで出てきた。病気らしいが詳しい事情は分からない。しかし総裁不在のまま「利上げが既定路線」という空気だけが先走るのは妙な話である。料理長が厨房にいないのに、見習いだけで勝手に本日のおすすめを書き換えているようなもので、客としては不安になる。
そもそも今回の利上げ観測、根拠を探そうとしてもなかなか見つからない。物価上昇率はピーク時より落ち着き、賃金の伸びも勢いを欠き、企業の設備投資も力強いとは言い難い。有効求人倍率もじわりと低下し、採用意欲にも陰りが見え始めている。景気がぐいぐい前へ進んでいるというより、ようやく重い腰を上げ始めた段階である。代わりによく持ち出される企業物価指数も、原油高など海外要因の影響が大きい。いわば外から飛んできたボールが窓ガラスに当たったような話で、家の中の温度調節とは別問題である。ガソリンには税金が重なり、電気やガスには補助金が入り、企業も簡単には価格転嫁できない。消費者物価まで波及する道筋は、正月太りの体で通る廊下のようにずいぶん狭い。
それなのに企業物価だけを掲げて「ほら利上げだ」と騒ぐのは、スーパーの特売チラシに「本日限り!」と大書きするのによく似ている。さらに「円安対策のため」という説明になると、ますます首が曲がる。為替は本来、財務省が主役の分野であって日銀の使命ではない。しかも〇・二五%ほど金利を動かしたところで世界中の資金が「それっ」と円へ雪崩れ込むとも思えない。円安は海外投資や貿易収支など、もっと大きな流れの中で起きている話である。利上げだけで解決できるなら、正月太りだって腹筋十回で片付いている。だからせめて鍋のフタくらい静かにしてほしい。料理長がいない間に勝手に味付けを変えるのは勘弁願いたい。今は大騒ぎするよりも、コトコト煮える音を聞きながら様子を見る。そのくらいの辛抱が、案外いちばん大事なのかもしれない。
しかし、こちらは首をひねる。まだ料理は運ばれてきていないし、注文票だって見ていない。それなのに店中が「来週はカツ丼ですね」と決めつけているのである。そんな気分じゃない日だってあるのに。台所で味噌汁を温めていたら、背後から突然「利上げだ!」と叫びながら誰かが鍋のフタをバンッと開けるような落ち着かなさを感じる。こちらは弱火でコトコトやっている。インフレはようやくしぼみ始め、企業も「そろそろ設備投資でも増やすか」と腕まくりを始めたところだ。そこへ冷水をぶっかけるような話が飛んでくる。しかもその冷水、なぜか氷入りである。
そして決まって出てくるのが「複数の関係者によると」という例の枕詞だ。一度それが出ると、まだ決まってもいない話が既定路線の顔をして歩き始める。こちらは味噌汁を味見しながら「少し薄いかな」と考えているのに、横から誰かが勝手に塩をドバドバ入れていくようなものだ。後でしょっぱくなっても責任は取らない。そこへ追い打ちをかけるように、料理長にあたる植田総裁が会合を欠席するという話まで出てきた。病気らしいが詳しい事情は分からない。しかし総裁不在のまま「利上げが既定路線」という空気だけが先走るのは妙な話である。料理長が厨房にいないのに、見習いだけで勝手に本日のおすすめを書き換えているようなもので、客としては不安になる。
そもそも今回の利上げ観測、根拠を探そうとしてもなかなか見つからない。物価上昇率はピーク時より落ち着き、賃金の伸びも勢いを欠き、企業の設備投資も力強いとは言い難い。有効求人倍率もじわりと低下し、採用意欲にも陰りが見え始めている。景気がぐいぐい前へ進んでいるというより、ようやく重い腰を上げ始めた段階である。代わりによく持ち出される企業物価指数も、原油高など海外要因の影響が大きい。いわば外から飛んできたボールが窓ガラスに当たったような話で、家の中の温度調節とは別問題である。ガソリンには税金が重なり、電気やガスには補助金が入り、企業も簡単には価格転嫁できない。消費者物価まで波及する道筋は、正月太りの体で通る廊下のようにずいぶん狭い。
それなのに企業物価だけを掲げて「ほら利上げだ」と騒ぐのは、スーパーの特売チラシに「本日限り!」と大書きするのによく似ている。さらに「円安対策のため」という説明になると、ますます首が曲がる。為替は本来、財務省が主役の分野であって日銀の使命ではない。しかも〇・二五%ほど金利を動かしたところで世界中の資金が「それっ」と円へ雪崩れ込むとも思えない。円安は海外投資や貿易収支など、もっと大きな流れの中で起きている話である。利上げだけで解決できるなら、正月太りだって腹筋十回で片付いている。だからせめて鍋のフタくらい静かにしてほしい。料理長がいない間に勝手に味付けを変えるのは勘弁願いたい。今は大騒ぎするよりも、コトコト煮える音を聞きながら様子を見る。そのくらいの辛抱が、案外いちばん大事なのかもしれない。