校内監視カメラ ― 2025年03月30日

熊本市教育行政審議会は、いじめや体罰の抑止策として、学校内にカメラを設置する提案をまとめ、市教育委員会に提出した。この提案では、監視カメラの導入が事実確認を容易にし、教職員の意識向上や保護者の不適切な要求の抑止にも寄与すると期待されている。また、被害児童から寄せられた「記録を残してほしい」という声も反映されている。一方で、カメラ設置には慎重な意見もあるため、まずはモデル校での先行実施が提案され、設置場所の検討や子どもの意見を尊重する方針が示された。さらに、相談窓口の設置やスクールカウンセラーの増員・常勤化も提案され、より包括的な教育環境の改善が目指されている。カメラ設置による透明性や抑止効果は一定の期待が持てるものの、教育現場の信頼関係を損なうリスクも指摘されている。生徒や教師に心理的ストレスや不信感を与えかねず、教育理念との相反も懸念される。監視強化が根本的な問題解決につながるかどうかは、慎重に検討しなければならない。いじめや体罰を抑止するためには、監視の強化よりも、対話や信頼関係の構築が重要である。例えば、副担任制の導入は、生徒へのケアを充実させるだけでなく、教師の負担を軽減し、問題行動を多角的に捉える上で有効な手段となる。教育現場で信頼を深めるためには、カメラの設置をあくまで補助的な手段にとどめ、カウンセリング体制の整備や教師と生徒の対話を重視することが求められる。最終的に、教育現場の文化を改善し、問題行動の根本的解決を図る努力が不可欠であり、技術的な監視に頼らず、多角的なアプローチを取ることが重要である。
近年、教員の不適切な行動が報じられることが増えており、学校や行政が問題を隠蔽する体制に対する批判も強まっている。そのため、監視カメラの設置を求める保護者の気持ちは理解できる。しかし、その一方で、子どもの気持ちが置き去りにされているのではないかという懸念もある。カメラの設置は、「先生も子どもも信用できない」という暗黙のメッセージを教育現場に送り続けることになりかねない。他国において学校への監視カメラ設置が進んでいる国として、中国やアメリカが挙げられる。アメリカでは地域ごとに学校の判断で設置され、プライバシー保護のためのアクセス権やセキュリティが確立されているケースもある。一方、中国では全体主義的な管理社会のもと、教育的な理念が入り込む余地はほとんどないと考えられる。懸念されるのは、監視カメラの設置が進んだ先に、倫理や道徳までが管理される社会が待ち受けている可能性である。管理社会は独裁国家だけで起こるものではない。市民の不安を煽ることで、結果として市民自身が管理を求め、最終的に独裁的な体制が成立した歴史もある。教育は、不安や不信のもとでは成立しない。子どもや教員の希望と信頼の中で育まれるものであり、本来、管理社会とは無縁であるべきだ。カメラの設置は一律に行わず、学校が子どもや教員、保護者が時間をかけて議論して、学校が主体的に選択すべきものである。
近年、教員の不適切な行動が報じられることが増えており、学校や行政が問題を隠蔽する体制に対する批判も強まっている。そのため、監視カメラの設置を求める保護者の気持ちは理解できる。しかし、その一方で、子どもの気持ちが置き去りにされているのではないかという懸念もある。カメラの設置は、「先生も子どもも信用できない」という暗黙のメッセージを教育現場に送り続けることになりかねない。他国において学校への監視カメラ設置が進んでいる国として、中国やアメリカが挙げられる。アメリカでは地域ごとに学校の判断で設置され、プライバシー保護のためのアクセス権やセキュリティが確立されているケースもある。一方、中国では全体主義的な管理社会のもと、教育的な理念が入り込む余地はほとんどないと考えられる。懸念されるのは、監視カメラの設置が進んだ先に、倫理や道徳までが管理される社会が待ち受けている可能性である。管理社会は独裁国家だけで起こるものではない。市民の不安を煽ることで、結果として市民自身が管理を求め、最終的に独裁的な体制が成立した歴史もある。教育は、不安や不信のもとでは成立しない。子どもや教員の希望と信頼の中で育まれるものであり、本来、管理社会とは無縁であるべきだ。カメラの設置は一律に行わず、学校が子どもや教員、保護者が時間をかけて議論して、学校が主体的に選択すべきものである。
BDの生産終了 ― 2025年03月27日

ブルーレイディスク(BD)市場は急速に縮小し、録画文化の終焉が迫っている。今年1月、ソニーグループがBDの生産終了を発表し、業界に大きな影響を与えた。背景には、動画配信サービスやクラウド保存の普及があり、手間のかかる光ディスクへの保存は敬遠される傾向にある。台湾のバーベイタムジャパンは生産継続を表明したものの、需要の減少は深刻で、BDやレコーダーの未来は不透明だ。録画機器の需要も減少しており、BDレコーダーの出荷台数はピーク時の15%程度まで落ち込んでいる。業界内ではさらなる撤退が懸念され、新製品の開発も抑制されている。一方で、動画配信では見られないコンテンツを保存したい「推し活」需要が一定の市場を維持しており、録画機器を重宝するユーザーも多い。BDやレコーダーが完全に消えるかは不明だが、「推し活」市場が最後の希望となっている。メーカーは現行製品の販売を継続しつつ、長期的な動向を注視する必要がある。録画文化の未来は、進化する消費者ニーズにどれだけ対応できるかにかかっている。光ディスク技術は、1980年代にアナログ映像・音声を記録するレーザーディスク(LD)から始まり進化を遂げてきた。1982年にはコンパクトディスク(CD)が登場し、音楽市場に革新をもたらした。その後、1995年にはDVDが映像記録媒体として普及し、4.7GBの容量を提供。2003年には高解像度映像に対応したブルーレイディスク(BD)が登場し、さらに大容量化が進んだ。
LDは昭和のカラオケスナックで使われ始め、当時はスナックのママが8トラックのカセットをガチャガチャと入れ替えていたが、ある日、大きな光ディスクを大事そうにプレーヤーに入れていたのを思い出す。映像が妙に艶めかしかったことが印象的だ。音楽CDの思い出といえば、MD(ミニディスク)に録音してお気に入りを作っていたが、再生汎用性の高いCD-Rに取って代わられ、MDはあっという間にお蔵入りした。平成に入るとMP3録音が主流となり、ディスクを持ち歩くこともなくなった。DVDは、レンタルビデオ店で映画を借りるのが流行した時代が最盛期だったが、これも10年ほどでネット配信に取って代わられた。パソコンはDVDやBDレコーダーが標準装備されているモデルを好んで購入していたが、最近はBDレコーダーを使う機会もなくなった。先日、隣人がBDを再生したいと言ってきたが、液晶テレビには留守録HDDしか接続されていなかった。しかし、プレイステーションがBD対応だったことを思い出し、試してみることに。作動音はするが映らない。原因はBDの裏表を逆に入れていたことだった。久しぶりに使うあまり、光ディスクの入れ方すら忘れていたのだ。光ディスクには、その変遷とともにたくさんの思い出が詰まっている。
LDは昭和のカラオケスナックで使われ始め、当時はスナックのママが8トラックのカセットをガチャガチャと入れ替えていたが、ある日、大きな光ディスクを大事そうにプレーヤーに入れていたのを思い出す。映像が妙に艶めかしかったことが印象的だ。音楽CDの思い出といえば、MD(ミニディスク)に録音してお気に入りを作っていたが、再生汎用性の高いCD-Rに取って代わられ、MDはあっという間にお蔵入りした。平成に入るとMP3録音が主流となり、ディスクを持ち歩くこともなくなった。DVDは、レンタルビデオ店で映画を借りるのが流行した時代が最盛期だったが、これも10年ほどでネット配信に取って代わられた。パソコンはDVDやBDレコーダーが標準装備されているモデルを好んで購入していたが、最近はBDレコーダーを使う機会もなくなった。先日、隣人がBDを再生したいと言ってきたが、液晶テレビには留守録HDDしか接続されていなかった。しかし、プレイステーションがBD対応だったことを思い出し、試してみることに。作動音はするが映らない。原因はBDの裏表を逆に入れていたことだった。久しぶりに使うあまり、光ディスクの入れ方すら忘れていたのだ。光ディスクには、その変遷とともにたくさんの思い出が詰まっている。
万博チケットの購入手順 ― 2025年03月15日

大阪・関西万博は混雑緩和を目的に予約制チケットを基本としていたが、前売り券の販売が目標の1,400万枚に届かず、3月12日時点で約820万枚と6割未満にとどまった。これを受け、開幕47日前に入場ゲート前で購入できる当日券の導入を決定。しかし、急な方針転換に「利用者目線の欠如」が指摘されている。当初の販売方式は、万博ID登録と入場日時予約を経てQRコードを取得する電子チケットが主流だったが、コンビニや旅行代理店での引き換えも可能だった。しかし、選択肢が多すぎて消費者の混乱を招き、前売り券購入のハードルが高くなった。また、前売り券のみの販売は、消費者に選択肢を与えない印象を与えた。さらに、混雑時に価格を上げ、閑散時に下げる「ダイナミックプライシング」の導入が有効だったとされる。券種も多すぎるため、3種類程度に絞る方が分かりやすかったと考えられる。また、万博の魅力が十分に伝わっておらず、事前予約の煩雑さが消費者の負担となった。実際、私も3カ月前にID登録をしたものの、いつどのパビリオンを選べばよいのか、混雑状況の見通しがつかず、未だにチケット購入に至っていない。ホームページの情報が少なく、広大な会場の回り方がイメージできない。AIを活用して調べても全容がつかめなかった。そのため、どの券種が自分に適しているのか判断できず、購入をためらっている。
先日、老人会の陶芸サークルの方々から「チケットをネットで購入できないので教えてほしい」と頼まれ付き合った。万博チケットの購入手順は公式サイトでまず万博IDを作成しなければならない。ネット予約に慣れている人には問題ないが、メールアドレスの入力経験すら少ない人には大仕事となる。仮登録後、本登録用のURLがメールで届くが、アドレスを打ち間違えると届かず、ここでつまずく人も多い。さらに、パスワード設定では「大文字・小文字・数字の組み合わせ」を求められるが、これがハードルとなり、正しいパスワードが作れず次の画面に進めない人もいる。ようやく登録しても、ログイン画面ではスマホの自動入力が使えず、パスワードの入力ミスが続くと一定時間ログインできなくなる。この登録段階で脱落する人も少なくない。やっとの思いで登録しチケットを購入しても次の手続きがある。来場日時を事前予約し、入場ゲートを選択。さらに、パビリオンやイベントは抽選制で、第1~5希望を選び、当選結果を確認する必要がある。抽選に外れた場合は、当日枠や予約不要エリアを利用する計画を立てなければならない。全ては混雑をできるだけ抑えようとする意図なのだが、利用者には伝わらない。登録に付き合って思ったのは、ネット予約に慣れていない人向けにはAI等の「リアルガイド」が必要だということだ。付き合った方にはお世話になったと恐縮され、お礼にビールまでいただいた。慣れたものには何でもないのだが、お礼をしなければと思うほど操作が困難に感じられたのだろう。万博の成功には、ホームページを含めた「利用者目線」の強化が欠かせないと痛感した。
先日、老人会の陶芸サークルの方々から「チケットをネットで購入できないので教えてほしい」と頼まれ付き合った。万博チケットの購入手順は公式サイトでまず万博IDを作成しなければならない。ネット予約に慣れている人には問題ないが、メールアドレスの入力経験すら少ない人には大仕事となる。仮登録後、本登録用のURLがメールで届くが、アドレスを打ち間違えると届かず、ここでつまずく人も多い。さらに、パスワード設定では「大文字・小文字・数字の組み合わせ」を求められるが、これがハードルとなり、正しいパスワードが作れず次の画面に進めない人もいる。ようやく登録しても、ログイン画面ではスマホの自動入力が使えず、パスワードの入力ミスが続くと一定時間ログインできなくなる。この登録段階で脱落する人も少なくない。やっとの思いで登録しチケットを購入しても次の手続きがある。来場日時を事前予約し、入場ゲートを選択。さらに、パビリオンやイベントは抽選制で、第1~5希望を選び、当選結果を確認する必要がある。抽選に外れた場合は、当日枠や予約不要エリアを利用する計画を立てなければならない。全ては混雑をできるだけ抑えようとする意図なのだが、利用者には伝わらない。登録に付き合って思ったのは、ネット予約に慣れていない人向けにはAI等の「リアルガイド」が必要だということだ。付き合った方にはお世話になったと恐縮され、お礼にビールまでいただいた。慣れたものには何でもないのだが、お礼をしなければと思うほど操作が困難に感じられたのだろう。万博の成功には、ホームページを含めた「利用者目線」の強化が欠かせないと痛感した。
三井住友NZBA離脱 ― 2025年03月06日

三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、脱炭素社会の実現に向けた国際的な金融機関の枠組み「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」からの離脱を決定した。NZBAは2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す取り組みで、現在44カ国134の金融機関が加盟している。邦銀では三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャル・グループなどが参加しており、SMFGの離脱は日本の金融機関として初の事例となる。SMFGは、これまで気候変動への取り組みとして社内体制の整備や高度化を進めてきたと説明し、NZBAに加盟せずとも独自の方法でネットゼロの目標達成が可能と判断したことを理由に挙げている。米国では、トランプ前大統領の就任前後からゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの大手金融機関がNZBAから離脱する動きが相次いでいる。背景には、共和党の一部政治家がNZBAの方針が化石燃料企業への融資削減につながる場合、反トラスト法(独占禁止法)に抵触する可能性を指摘していることがある。今後、SMFGの決定が他の邦銀に影響を与え、NZBAからの離脱が広がる可能性があるとみられている。NZBAの方針により、日本の化石燃料新技術の分野は資金調達の制約を受けてきた。特に効率的な化石燃料利用技術や炭素回収・貯留(CCS)の研究開発において、融資制限が商業化の遅れを招き、日本の化石燃料新技術の国際的競争力が低下するとも言われてきた。
効率的な化石燃料利用技術とは、化石燃料のエネルギー効率を向上させつつ、環境負荷を低減することを目的とする。具体例としては、高効率火力発電、クリーンコール技術、低品位炭や廃棄物を活用する技術がある。これらの技術は、化石燃料をより持続可能に利用するための重要な手段であり、温室効果ガス削減やエネルギー効率向上に寄与する。しかし、脱炭素運動の流れの中で、石炭火力などの開発や海外展開を促進するための融資はNZBAの方針により抑制されてきた。建設や運用に高額な資金投入が必要な再生可能エネルギーよりも安価に発電できる火力発電技術は、発展途上国にとって不可欠である。また、放射性廃棄物の最終処理手段を持たない日本にとっても、この技術は重要な役割を果たす。日本の火力発電所は、NZBAの融資制限の影響で新規設備投資が困難となり、古い設備のまま稼働を続けている。これは、燃費の悪いかつてのアメリカ製自動車のような状況である。電気自動車(EV)志向が早すぎるとの声がある中で、日本のハイブリッド車が再評価されていることからもわかるように、発電もベストミックスを選択すべきである。何もかもを一つに絞り込む動きには必ずリスクが伴う。バランスをとりながら一歩ずつ積み重ねていくことこそが、技術革新を支える金融と行政の役割だと思う。
効率的な化石燃料利用技術とは、化石燃料のエネルギー効率を向上させつつ、環境負荷を低減することを目的とする。具体例としては、高効率火力発電、クリーンコール技術、低品位炭や廃棄物を活用する技術がある。これらの技術は、化石燃料をより持続可能に利用するための重要な手段であり、温室効果ガス削減やエネルギー効率向上に寄与する。しかし、脱炭素運動の流れの中で、石炭火力などの開発や海外展開を促進するための融資はNZBAの方針により抑制されてきた。建設や運用に高額な資金投入が必要な再生可能エネルギーよりも安価に発電できる火力発電技術は、発展途上国にとって不可欠である。また、放射性廃棄物の最終処理手段を持たない日本にとっても、この技術は重要な役割を果たす。日本の火力発電所は、NZBAの融資制限の影響で新規設備投資が困難となり、古い設備のまま稼働を続けている。これは、燃費の悪いかつてのアメリカ製自動車のような状況である。電気自動車(EV)志向が早すぎるとの声がある中で、日本のハイブリッド車が再評価されていることからもわかるように、発電もベストミックスを選択すべきである。何もかもを一つに絞り込む動きには必ずリスクが伴う。バランスをとりながら一歩ずつ積み重ねていくことこそが、技術革新を支える金融と行政の役割だと思う。
こども家庭庁虐待AI見送り ― 2025年03月05日

こども家庭庁は、虐待が疑われる子どもの一時保護の必要性をAIで判定するシステムの導入を見送ることを決定した。このシステムは全国の児童相談所(児相)の人手不足解消を目的に2021年度から約10億円をかけて開発が進められ、最終判断を職員が行う際の補助ツールとして期待されていた。しかし、試験運用で約100件中62件が判定ミスとなり、AIによる虐待判断は困難と判断された。システムは5000件の虐待記録を学習し、傷の有無や保護者の態度など91項目の情報を基に0〜100の可能性スコアを表示する仕組みだった。だが、入力項目が不十分で、ケガの程度や子どもの体重減少といった重要な情報が反映されていなかったことが精度の低さの原因とされた。専門家は、虐待の態様が多様であることや記録件数の不足がAI判定の難しさにつながったと指摘。また、AI活用には実現可能性の吟味や制度設計が不可欠であり、今回の失敗を今後の開発に生かすべきだと提言している。こども家庭庁が虐待判定AIの導入を進めた理由は、虐待の通告件数が増加するなか、職員の数が十分ではないにもかかわらず、迅速かつ正確な対応が求められていたためである。AIは膨大なデータを分析し、客観的なリスク判定の補助ツールとして職員の判断を支援することが期待されていた。また、虐待事例の蓄積データを活用することで、経験や知識の差を補い、対応の均質化を図る狙いがあった。
これらの着眼点は正当であるが、10億円程度の予算で虐待判定に特化した人工知能を開発しようという発想は非現実的である。汎用人工知能であるChatGPTのGPT-4モデルのトレーニングには約150億円以上の費用がかかったと報じられている。また、ChatGPTの運用には1日あたり約1億円以上の運用費がかかると推定される。さらに、OpenAIは2024年10月に約1兆6000億円の巨額資金を確保し、開発や運用に充てている。虐待判定に特化すれば多少は安価に開発できるかもしれないが、年間3億円程度では予算規模が桁違いに不足している可能性がある。虐待判定は時間との勝負であり、担当官の主観や環境バイアスを排除して判定することはAIの得意分野だと考えられる。また、積み上げた事例を人工知能に学習させることで、経験の浅い担当官のリスクを排除する効果も期待できる。これは医療AIにも同様のことが言える。対人サービスに携わる人間の質には「親切」か「不親切」か、能力が「高い」か「低い」かの組み合わせがある。民間の場合、不親切な人には寄り付きにくいが、公的サービスでは「不親切で能力の低い」担当者に巡り合うことがある。AIはこのリスクを低減する可能性がある。今回の虐待AIの問題は資金不足が大きな要因だが、平均的な対人サービスの質を向上させるには不可欠な技術である。ぜひ今後の再挑戦を期待したい。
これらの着眼点は正当であるが、10億円程度の予算で虐待判定に特化した人工知能を開発しようという発想は非現実的である。汎用人工知能であるChatGPTのGPT-4モデルのトレーニングには約150億円以上の費用がかかったと報じられている。また、ChatGPTの運用には1日あたり約1億円以上の運用費がかかると推定される。さらに、OpenAIは2024年10月に約1兆6000億円の巨額資金を確保し、開発や運用に充てている。虐待判定に特化すれば多少は安価に開発できるかもしれないが、年間3億円程度では予算規模が桁違いに不足している可能性がある。虐待判定は時間との勝負であり、担当官の主観や環境バイアスを排除して判定することはAIの得意分野だと考えられる。また、積み上げた事例を人工知能に学習させることで、経験の浅い担当官のリスクを排除する効果も期待できる。これは医療AIにも同様のことが言える。対人サービスに携わる人間の質には「親切」か「不親切」か、能力が「高い」か「低い」かの組み合わせがある。民間の場合、不親切な人には寄り付きにくいが、公的サービスでは「不親切で能力の低い」担当者に巡り合うことがある。AIはこのリスクを低減する可能性がある。今回の虐待AIの問題は資金不足が大きな要因だが、平均的な対人サービスの質を向上させるには不可欠な技術である。ぜひ今後の再挑戦を期待したい。
小惑星「2024 YR4」 ― 2025年02月26日

小惑星「2024 YR4」は、2032年に地球に衝突する可能性が指摘されていたが、NASAは最新の観測に基づき、衝突確率が0.004%まで低下し「重大な脅威ではなくなった」と発表した。ただし、月に衝突する確率は1.7%残っている。この小惑星は2023年12月にチリの望遠鏡で発見され、直径40~90メートルで、地球に落下すれば約50キロ圏内に被害が及ぶ可能性があった。観測が進むにつれ、地球衝突の確率は一時3.1%まで上昇したが、その後の精密計算により衝突はほぼ否定された。NASAは2032年以降も地球への衝突リスクは極めて低いとみている。過去に地球に衝突した有名な隕石の例として、約6600万年前にメキシコ・ユカタン半島に落下したチクシュルーブ隕石がある。これは恐竜を含む多くの生物の絶滅を引き起こしたとされる。また、1908年にはロシア・シベリア地方にツングースカ隕石が落下し、広島原爆の約1000倍のエネルギーを放出して広範囲の森林を破壊した。さらに、約5万年前にはアメリカ・アリゾナ州にバリンジャー隕石が衝突し、直径約1.2キロメートル、深さ約170メートルのクレーターを形成した。これらの隕石衝突は地球の歴史に大きな影響を与えた。今回の「2024 YR4」のような直径40~90メートルの小惑星が落下した場合、落下地点によっては局地的な大災害を引き起こす可能性があるが、地球規模の影響は限定的と考えられている。
隕石衝突を題材にした映画として、1998年公開の『アルマゲドン (Armageddon)』と『ディープ・インパクト (Deep Impact)』がある。『アルマゲドン』では、巨大隕石の衝突を防ぐため、石油掘削の専門家たちが宇宙に送り込まれる。一方、『ディープ・インパクト』では、巨大彗星の衝突を阻止しようとするものの、最終的に小さな破片が地球に落下し、世界規模の災害が発生する。映画では隕石を破壊することで危機を回避しようとするが、破片が地球に降り注ぐ可能性があり、現実的な解決策としては課題が多い。実際、NASAは「DARTミッション」により、小惑星の軌道を変える技術の実験を行っているが、宇宙規模の自然現象に対して人類がどこまで対抗できるかは不透明だ。なお、小惑星「2024 YR4」は7年後に地球へ最接近するが、肉眼での観測は難しいとされる。幸い、その姿を目にする機会はなさそうだ。
隕石衝突を題材にした映画として、1998年公開の『アルマゲドン (Armageddon)』と『ディープ・インパクト (Deep Impact)』がある。『アルマゲドン』では、巨大隕石の衝突を防ぐため、石油掘削の専門家たちが宇宙に送り込まれる。一方、『ディープ・インパクト』では、巨大彗星の衝突を阻止しようとするものの、最終的に小さな破片が地球に落下し、世界規模の災害が発生する。映画では隕石を破壊することで危機を回避しようとするが、破片が地球に降り注ぐ可能性があり、現実的な解決策としては課題が多い。実際、NASAは「DARTミッション」により、小惑星の軌道を変える技術の実験を行っているが、宇宙規模の自然現象に対して人類がどこまで対抗できるかは不透明だ。なお、小惑星「2024 YR4」は7年後に地球へ最接近するが、肉眼での観測は難しいとされる。幸い、その姿を目にする機会はなさそうだ。
関西万博の意向調査 ― 2025年02月05日

大阪府と大阪市が昨年12月に実施した大阪・関西万博の意向調査で、「行きたい」と答えた人は34.9%にとどまり、万博協会の目標である50%には遠く及ばなかった。調査は全国6000人を対象に行われ、大阪府内でも39.6%にとどまるなど、地域別でも低迷が目立つ。来場意向は22年の41.2%から23年に33.8%へ低下し、今回は微増にとどまった。万博協会は24年秋に50%、開幕時には55%を目標としていたが、達成は厳しい状況。前売り入場券の販売も目標1400万枚に対し約767万枚(1月29日時点)と低迷している。大阪府の吉村知事らは石破首相と面会し、販売促進への協力を要請するという。万博については、工期遅れやらメタンガス爆発やら学校招待拒否やら良い報道が何一つないのだから行く気も失せるのだろう。ただ、前回の大阪万博でも当初は人気がないとされていたもののふたを開けると毎日が満員御礼状態だったそうだ。自分も小学6年生の時に学校から遠足で行ったり家族で行ったが、並んでばかりで満足に見学ができなかった。それでも1970年の最新の知見を得た子供は胸を躍らせたものだ。
空飛ぶ車は50年たっても飛んでいないし人類は月への到達を止めた。けれどもあの時胸躍らせた子供が自前の人工衛星を打ち上げ、多機能細胞を難病に生かす研究を積み上げ、量子計算器の開発に挑んでいる。できない理由を上げるのは容易いが、成功を勝ち取るには苦難の連続だ。私たち大人が子どもに伝えるべきことは、できない理由ではなく、あきらめないで前を向けば夢はつかめるという証拠を見せ、未来に挑む心を育てることだろう。確かに夏休みを挟んだ開催は子供を連れていくには熱中症などの心配も多い。だが、50年ぶりに自国で開催する万博を親子で楽しむ意義は大きい。メディアはケチばかり付けずに、どんな展示や催しがあるのか楽しく伝えるニュースがもっとあって良いはずだ。
空飛ぶ車は50年たっても飛んでいないし人類は月への到達を止めた。けれどもあの時胸躍らせた子供が自前の人工衛星を打ち上げ、多機能細胞を難病に生かす研究を積み上げ、量子計算器の開発に挑んでいる。できない理由を上げるのは容易いが、成功を勝ち取るには苦難の連続だ。私たち大人が子どもに伝えるべきことは、できない理由ではなく、あきらめないで前を向けば夢はつかめるという証拠を見せ、未来に挑む心を育てることだろう。確かに夏休みを挟んだ開催は子供を連れていくには熱中症などの心配も多い。だが、50年ぶりに自国で開催する万博を親子で楽しむ意義は大きい。メディアはケチばかり付けずに、どんな展示や催しがあるのか楽しく伝えるニュースがもっとあって良いはずだ。
道路陥没事故 ― 2025年02月03日

埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、地中インフラ設備の老朽化対策が注目されている。クボタなどが開発する、道路を掘り返さずに老朽化した下水道管を更新できる「管更生」技術は、通行止めを避けながら低コストでの改修を可能にする。また、AIを活用した水道管の老朽度診断と災害時の被害予測システムも開発されている。これにより、断水リスクが高いエリアを特定し、優先的な耐震化工事が可能になる。八潮市の道路陥没では、ガス管や光通信ケーブルも被害を受けた。大規模な陥没は想定されていないものの、地震などの災害対策は進められている。大阪ガスは阪神大震災後、柔軟性がありガス漏れしにくい「ポリエチレン管」の導入を推進。小規模な陥没には耐えられる可能性が高く、破損時にも供給停止範囲を最小限に抑えるため、導管網の細分化を進めている。通信インフラでは、NTT西日本が通信ケーブルを集積した「とう道」を震度7の地震にも耐えられる設計にし、通信障害の防止を図っている。今回の事故を機に、インフラ各社は老朽化や災害リスクへの対策をより強化する方針という。これまで、道路の陥没はアスファルトの問題だと思っていたため、今回の事故には驚いた。実際には、下水管の亀裂から上部の土砂が流れ込み、地中に空洞ができた結果、道路が陥没したり亀裂が生じたりすることがある。車道は強固なものだという思い込みは危険で、実際、日本各地で下水道破損による道路陥没が発生している。今回の事故は、大交差点での大規模な陥没であり、信じられないと思った人も多いだろう。
高度経済成長期に急速に整備された下水管の寿命は50年とされる。小規模な下水管の破損では今回のような事故は起こらないが、幹線道路下にある大規模な下水管の破損は、大事故につながる恐れがある。地盤の緩い埋め立て地や浸水被害の多い地域では特に注意が必要だとされるが、運転時にそれを意識する人は少ないだろう。重要なのは、事前のリスク発見と確実な修復技術の普及だ。下水管内に「管更生」ロボットが潜り込んで修復する技術には大いに期待できる。地方再生のために予算をばらまくくらいなら、こうした技術の開発と急速な普及に税金を投入してほしいものだ。
高度経済成長期に急速に整備された下水管の寿命は50年とされる。小規模な下水管の破損では今回のような事故は起こらないが、幹線道路下にある大規模な下水管の破損は、大事故につながる恐れがある。地盤の緩い埋め立て地や浸水被害の多い地域では特に注意が必要だとされるが、運転時にそれを意識する人は少ないだろう。重要なのは、事前のリスク発見と確実な修復技術の普及だ。下水管内に「管更生」ロボットが潜り込んで修復する技術には大いに期待できる。地方再生のために予算をばらまくくらいなら、こうした技術の開発と急速な普及に税金を投入してほしいものだ。
生成AIディープシーク ― 2025年01月28日

中国企業ディープシーク(DeepSeek)のAIチャットボットがリリースされ、アップルのアプリストアで最もダウンロードされた無料アプリとなった。このアプリは、低コストながら高性能なAIを提供し、アメリカの競合企業を圧倒する優位性を示している。開発費はわずか600万ドルで、アメリカのAI企業が費やす数十億ドルと比較して極めて低コストだ。この結果、AI業界における中国企業の台頭が大きな注目を集めている。ディープシークは2023年に中国杭州で設立された企業で、エヌヴィディア製の旧型チップを備蓄し、安価なチップを組み合わせることで効率的な開発を実現した。アプリはチャットGPTと同等の性能を持ち、効率的な生活支援を提供する一方、政治的に敏感な質問には回答しない設計が施されている。このリリースを受けて、ナスダック総合指数が3%以上下落。特にエヌヴィディアは株価が急落し、時価総額が約6000億ドル減少した。専門家は、ディープシークの成功が中国のソフトウェアの独創性を示すものであり、アメリカ企業が高性能ハードウェアへの依存を見直す契機になると評価している。トランプ大統領はこの動きをアメリカへの警鐘としながらも、競争の中で技術コストの低下がもたらす利点を強調したという。実際に試してみると、時事問題以外の分野では、チャットGPTと遜色ない結果を出しており、回答もコパイロットのように端折らず、丁寧な印象を受けた。
なお、このブログも生成AIを活用して情報を要約し、最終稿をAIで校正して発信している。これまで使用したAIには、グーグルのジェミニ、マイクロソフトのコパイロット、オープンAIのChatGPTだが、正確な情報と細かな対応ではChatGPTが優れている感触がある。一方、ディープシークは、アメリカ製AIの開発費の数パーセントで同等の性能を実現しており、その点は画期的だ。確かにこのブログの校正にも役立ち、原文に沿った滑らかでまとまりのある文章を生成する。しかし、時事問題に関しては的外れな情報を提示したり、婉曲な回答になることが多い。これはシステムの問題というより、情報の入出力に何らかのフィルターがかけられている印象を受ける。中国発のAIであるため、こうした制限はやむを得ない部分があるかもしれないが、現状では時事問題において十分な使い物にならない点が残念だ。
なお、このブログも生成AIを活用して情報を要約し、最終稿をAIで校正して発信している。これまで使用したAIには、グーグルのジェミニ、マイクロソフトのコパイロット、オープンAIのChatGPTだが、正確な情報と細かな対応ではChatGPTが優れている感触がある。一方、ディープシークは、アメリカ製AIの開発費の数パーセントで同等の性能を実現しており、その点は画期的だ。確かにこのブログの校正にも役立ち、原文に沿った滑らかでまとまりのある文章を生成する。しかし、時事問題に関しては的外れな情報を提示したり、婉曲な回答になることが多い。これはシステムの問題というより、情報の入出力に何らかのフィルターがかけられている印象を受ける。中国発のAIであるため、こうした制限はやむを得ない部分があるかもしれないが、現状では時事問題において十分な使い物にならない点が残念だ。
量子コンピューター ― 2025年01月21日

NTTコミュニケーションズは、量子コンピューターでも解読できない暗号通信技術の実証実験に成功したと発表した。2030年頃に実用化が予測される量子コンピューターは、従来の暗号技術を解読するリスクをもたらすとされており、世界各国で次世代暗号技術への移行が課題となっている。日本国内でも2024年より金融庁が次世代暗号への移行検討を開始している。 今回の実証成果を基に、同社は量子耐性を備えた暗号技術やIOWN技術を組み合わせた次世代暗号通信の商用化を目指し、量子コンピューターによる新たなサイバー攻撃から通信の機密性を保護する取り組みを進めているという。耐量子セキュアトランスポートとは、「ポスト量子暗号」と呼ばれる暗号方式を使用し、量子コンピューターでも解読が困難な鍵交換プロトコル、と説明されても、せいぜい「新しいコンピューターでも解読されない暗号化方式がNTTで開発された」までしか理解できない。そもそも量子計算の意味が分からないのだ。量子が「粒子と波の両方の性質」を持つという二重スリット実験は知ってはいるが、「量子力学」が江崎ダイオードやMRI画像診断、核融合に応用されているとか聞くともうちんぷんかんぷんである。
量子計算は、従来のコンピュータが0または1の状態を用いて計算するのに対し、量子ビットの重ね合わせや量子もつれを活用して並列計算を行い、特定のアルゴリズムで確率的に正しい解を求める仕組みとのことだが、これもさっぱり分からない。量子もつれの現象を検出するには超低温下での電子や、真空中のプラズマや、光電子の振る舞いを利用するというのはなんとなくわかるが、そもそもの量子的振る舞いというのがイメージできない。さすがのアインシュタインも量子力学については否定したが、これは物理学の世界では実験で決着がついているのだという。こういうイメージとして仕組みが理解できないものがこれからの世界を支配すると聞くと空恐ろしい気持ちになる。丁度、電気や電波の存在を理解できなかった昔の人の気持ちはこんなものだったのだろう。しかし、悔しいことはこれを理解して新しいテクノロジー開発をしている人もいることだ。何とか理解したいと思うが、さび付いたこのアタマではどうも無理っぽいようだ。
量子計算は、従来のコンピュータが0または1の状態を用いて計算するのに対し、量子ビットの重ね合わせや量子もつれを活用して並列計算を行い、特定のアルゴリズムで確率的に正しい解を求める仕組みとのことだが、これもさっぱり分からない。量子もつれの現象を検出するには超低温下での電子や、真空中のプラズマや、光電子の振る舞いを利用するというのはなんとなくわかるが、そもそもの量子的振る舞いというのがイメージできない。さすがのアインシュタインも量子力学については否定したが、これは物理学の世界では実験で決着がついているのだという。こういうイメージとして仕組みが理解できないものがこれからの世界を支配すると聞くと空恐ろしい気持ちになる。丁度、電気や電波の存在を理解できなかった昔の人の気持ちはこんなものだったのだろう。しかし、悔しいことはこれを理解して新しいテクノロジー開発をしている人もいることだ。何とか理解したいと思うが、さび付いたこのアタマではどうも無理っぽいようだ。