大学で割り算を教える是非?2025年05月02日

大学で割り算を教える是非?
先月の財政制度等審議会分科会では、大学への助成金と教育の質について議論が行われた。定員割れが続く私立大学で、四則演算や基礎英語を教える授業が実際に行われている事例が示され、助成金の見直しが提案された。SNSでは、大学で義務教育レベルの内容を教えることについて賛否が分かれている。現場の大学教員からは、基礎学力の不足する学生に対して基礎から指導し、最終的には専門的な水準に育てているとの声があり、大学の役割や大卒資格の重要性、大学が「教育の最終機会」として機能していることが語られた。一方で、日本の大学教育が記憶重視であり、自立した意見を持つ人材の育成に課題があるとの指摘もある。また、財務省の報告書には、補助金削減が教育の質向上につながらないとの批判もあり、18歳人口の減少による大学経営の厳しさも背景にある。今後は、単なる淘汰ではなく、大学全体の底上げと人材育成につながる改革が求められている。

「名前さえ書けたら合格する大学」は以前から存在しており、少子化が進む中でも新設大学や新設学部は増加を続けてきた。そうした大学の卒業生がどのような就労状況にあるかは定かでないが、就職すれば学歴によって給与が決まりやすく、給与表にも反映される。推計では、大卒と高卒の生涯平均年収には約4,000万〜5,000万円の差があり、年金額においても大卒は高卒より年間約18万円多く受給するとされる。もちろん、個人の能力によって給与を決める企業もあるが、それは多数派とは言えない。生涯で5,000万円以上の差があるとなれば、多少学費が高くても大学に通う「投資効果」は大きく、いわゆるFランク大学にも存在意義があると考えられる。

この状況を是正するには、公務員や企業の学歴による給与制度を廃止するか、日本の教育体系を抜本的に見直す必要がある。本来、給与は企業側の需要と労働者側の供給の関係によって個別に決定されるべきだが、横並び志向が強い日本では能力給に対する抵抗が根強い。企業側にとっては、学歴による区分の方が労働者を分断しやすく、人件費も抑えやすいため都合が良く、学歴給制度の廃止は進みにくい。一方、この制度は高卒労働者の意欲を損ない、労働生産性の向上を妨げる要因にもなっている。

また、日本の教育体系は単線型で、上記の学歴給与制度の存在により、職業教育を選択するインセンティブが弱い。仮に、早期に専門技術を身につけて働いたとしても、大卒に比べて不利な給与体系が残る限り、低学力のままでも大学進学を選ぶ理由が消えない。税金である私学助成金を理由に大学で割り算や分数を教える是非を議論する前に、給与体系や教育体系そのものについて議論する方が、生産的で本質的な改革につながるのではないか。

コメント

トラックバック

Bingサイト内検索