ディープフェイクの時代2025年05月26日

創られた“真実” ディープフェイクの時代
NHKスペシャル「創られた“真実” ディープフェイクの時代」を再放送で観た。正直、背筋が凍った。生成AIが生み出すディープフェイク技術をテーマにしたドラマ兼ドキュメンタリーで、どこまで日本の現実に近いのかは分からないが、少なくとも中国や欧米では現実の脅威として深刻な問題になっているという。番組は実際に世界各地で起きた事件をもとに構成されており、ストーリー仕立てで倫理観を揺さぶる。主演は青木崇高、妻役を入山法子が演じ、ギャラクシー賞2025年3月度月間賞を受賞した。物語は、ある保険会社で起きた大規模な顧客情報漏洩事件をきっかけに始まる。同時期、社員の佐藤真奈美が自殺。夫の晃と妹の洋子が真相を追ううち、ディープフェイク技術を開発するベンチャー企業の関与が明らかになる。晃はその企業に入社し、精巧な技術に驚きつつ、亡き妻のアバターを再現する。しかし次第に、現実と虚構の境界で深い葛藤を抱えていく。

筆者も、AI映像といえば映画業界でのストライキ問題くらいしか知らなかった。しかし、ドキュメンタリーのようにAIが実在の映像や音声を再構成し、あたかも亡くなった人がリモート会議で語りかけてくるという技術が、既に一部で実用化されていることには驚きを禁じ得なかった。中でも衝撃的だったのは、商談の場にいる相手が、実はすべてSNSやホームページを元に生成されたアバターだったという展開だ。本物は自分だけ。そんな未来が「あり得る話」として描かれ、それが荒唐無稽に思えない時代に私たちは生きている。ディープフェイクの問題は、単に技術の高度化だけではない。発信源の特定が極めて困難で、詐欺摘発を困難にしている点にもある。オレオレ詐欺のような“匿流(匿名・流動型)”犯罪どころの話ではない。もしディープフェイクが悪意ある手に渡れば、情報弱者はひとたまりもない。リモートは便利だ、と喜んでばかりもいられない。今や「映っているから信じられる」時代は終わったのかもしれない。