新幹線大爆破2025年04月28日

新幹線大爆破
1975年に東映が制作した『新幹線大爆破』が、現代版として『シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督によって、Netflixでリメイクされた。本作の物語は、新青森から東京へ向かう新幹線「はやぶさ60号」に仕掛けられた爆弾を巡る。爆弾は時速100キロを下回ると爆発する仕組みとなっており、車掌をはじめとする乗務員たちが乗客を守るために奮闘する。犯人は1000億円を要求し、鉄道会社、政府、警察をも巻き込んだ攻防戦が展開される。主人公・高市役を草彅剛が演じ、細田佳央太、のん、尾野真千子、斎藤工など、人気俳優たちが出演。撮影にはJR東日本の特別協力を得て、実際の新幹線車両や施設が使用された。1975年の東映版では、新幹線爆破という設定が国鉄(当時)のイメージダウンにつながる懸念から、国鉄の協力を一切得られなかったという。東映版は高倉健をはじめ有名俳優を多数起用し、5億円以上(現在の貨幣価値に換算して約10~20億円)を投じて制作されたが、日本国内ではヒットせず、むしろ海外で高い評価を受けた。今回のリメイクでは、製作費は20億円では足りなかっただろうと推測されている。犯人役が東映版では大御所・高倉健だったのに対し、今回は新人女優が起用された点には不満も残る。しかし、新幹線爆破とそれに対抗するギミックを、VFXを駆使してふんだんに描いた本作は、鉄道ファンにも満足できる内容となっていた。

東映版もNetflixで配信されていたため視聴した。この映画に限らず、昭和時代の邦画は俳優のセリフが一本調子に感じられ、耳についてしまう。当時の録音技術では小さな声を拾うのが難しかったため、セリフから細やかな感情を読み取ることが難しく、サスペンスものには不向きだったのかもしれない。新幹線の車両切り離しは、Netflix版の大きな見どころとなっている。東映版のほうでは車両の切り離しは設計上あり得ないと否定していたが、つい最近、新幹線の運転車両同士の切り離し事故が2度もあったわけだから車両の切り離しは技術的には不可能ではないのだろう。東映版では、車両下の爆弾起爆コードを切断することで危機を乗り越えるが、Netflix版では線路の切り替え操作によって爆弾車両を物理的に切り離す、ド派手なアクションシーンに仕上げられている。東映版は、孤高の存在となった高倉健演じる主人公が、クライマックスで撃たれるまでを丁寧に描き、人間ドラマを重視した印象だ。ただし、昭和映画では警官がやたらと発砲するシーンが多く、爆弾犯一味の山本圭も逃走中にかなり遠距離から足を撃たれる場面があるが、「そう簡単に当たるだろうか」とツッコミたくなる。東映版は何よりも高倉健の存在感を前面に押し出し、Netflix版は新幹線アクションを前面に押し出すという違いが際立っており、それぞれの時代背景を映す作品となっていて興味深かった。

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