なんちゃってトヨタがホンダを抜く2026年05月02日

なんちゃってトヨタがホンダを抜く
アメリカの新車市場というのは、巨大な暖房器具売り場みたいなもので、客がこの冬を何でしのぐか、毎日ざわついている。あの売り場特有の、金属と段ボールの匂い。どこか遠くで誰かが灯油をこぼしたような気配。冬の匂いである。近ごろはガソリンが高い。電気代も高い。となれば客の考えることは一つだ。「理屈はいいから、ちゃんと暖まるやつをくれ」。人間、寒いと現実的になる。

そこで急に頼られ始めたのがハイブリッド車である。これはもう石油ファンヒーターだ。スイッチを入れれば「ピッ」「ボッ」と点火し、部屋全体がじんわり暖かくなる。あの安心感である。トヨタはHV比率が50%を超え、「うちは昔からこれです」と言わんばかりの落ち着きぶり。売り場なら、一番いい棚に鎮座する定番商品である。

その横で、急に売り場の真ん中へ押し出されてきたのが韓国の現代自動車である。販売は前年同月比54%増。昨日まで棚の端で静かにしていた暖房器具が、今日は中央通路に移され、「売れてます!」の札まで下がっている。現代のHVというのは、いわば“なんちゃってトヨタ”である。本家ほど重厚ではない。だが、値札を見ると急に魅力的に見えてくる。暖房でいえば、有名メーカーそっくりの形をして、しかも少し安い。客は案外そこに弱い。革命児として現れたのではない。トヨタの背中に似せた服を着て、価格札だけ控えめに下げ、気づけば横をスッと抜いていったのである。こうして現代はホンダを追い抜いた。

ホンダも黙っているわけではない。「うちの暖房も悪くないんですがね」と言いたげである。だが次世代HVの本格投入は2027年以降。暖房売り場の客はそんなに悠長に待ってくれない。現代は18機種以上の省エネ暖房を並べると言い、ホンダは電気ストーブの補助金に気を取られて開発費も職人もそちらへ回し、肝心の新型暖房はいまだ開発室の中である。店の奥から試作品のぬるい風だけが、ときおり流れてくる。売り場は、その完成を待ってはくれぬ。

一方、EV市場はどうも電気ストーブに似ている。理屈は立派だ。赤く光って、足元はすぐ暖かい。だが部屋全体はなかなか暖まらない。スネだけ熱く、背中は寒い。寒波が来ると、急に心細い。補助金が切れた途端に客足が遠のくのは、「これ一台で冬を越せると思ったら、結局こたつを出した」あの感じに近い。

では日産のE-POWERは何か。これは電気ファンヒーターである。スイッチを入れれば「ウィーン」と風が出て、足元はすぐ春になる。静かで扱いやすく、街なかでは実に快適だ。だが広い部屋や強い寒波には少し頼りない。部屋の一角だけ春で、背中は冬。市街地は得意だが、高速巡航はやや苦手。性格がそのまま出ている。

そしてホンダのi-MMDである。これはもう、世界最強級の石油ファンヒーターだ。スイッチを入れた瞬間に「ブォォッ」と風が出て、部屋全体が一気に春になる。寒波? 来るなら来い、である。高速巡航の効率も高い。強モードにした瞬間、窓ガラスの結露まで吹き飛ばしそうな火力だ。ただし本体は大きい。重い。値段も張る。ワンルームに置けば、「いや、そこまでしなくても……」と部屋のほうが恐縮する。性能は最強級だが、置き場所を選ぶ。

もしこの二つが組めばどうなるか。日産の素早い足元暖房と、ホンダの部屋全体を制圧する火力が合体する。立ち上がりは速く、巡航は強く、燃費もいい。理屈の上では、トヨタの牙城を脅かすほどの“最強暖房”になりうる。しかも両社とも単独では届かない領域である。だが現実には、ホンダは電気ストーブに夢中になって開発費を使い込み、日産は電気ファンヒーターの改良に熱中し、それぞれ単独では決め手を欠いた。その隙を、現代がきっちり突いたのである。

だからこそ、ホンダが少しへこんでいる今こそ、日産との連携は最後の好機かもしれない。暖房は、意地で選ぶものではない。冬を越せるかどうかで選ばれる。そしてアメリカ市場の冬は、まだ終わっていない。
凍えるのは、暖房を選び間違えたメーカーからである。

コメント

トラックバック