消費税をガラガラポン2026年05月11日

赤字でも納税義務のある消費税
消費税をめぐって世間は今日もかしましい。だが税理士出身の安藤議員の指摘だけは、まるでツボ押しの名人みたいに急所をグイッと押してくる。税金というのは本来、「儲かったらちょっとお裾分けしてあげて」という“人情”があるはずなのに、消費税にはその情けが一切ない。売上さえあれば、たとえ経費で赤字のヒーヒー状態でも、お上は「はい、10%ね」と取り立てに来る。儲けではなく“存在そのもの”にのしかかる税金である。そしてこれが、世間では間接税と呼ばれているが、実態はどう見ても“直接税”の顔つきなのだ。こんなもの、小さな店から順番に干からびていくのは当たり前だ。

この税金、昔からどうも「とぼけた顔」をしている。レシートに堂々と「消費税」と印字されているのを三十年も見せられれば、国民はそりゃあ「どの店も国に納めているんだな」と思い込む。ところが実際は、売上1,000万円以下の免税業者は納めていなかった。それを「ネコババだ!」と怒るのは筋違いで、実態はもっと日本的である。「みんなが書いてるから、うちも書いておこう」という、あの“横並びの安心感”がレシートに税額を吐き出させ続けていただけなのだ。

お役所はこの歪みを知っていながら、説明責任や問い合わせ増加を嫌って、そっと「不作為の霧」の中に隠してきた。一方の免税業者は仕組みが分からず、ただお隣に合わせていただけ。この「言わなかった・分からなかった・気づかなかった」の三者三様が三十年かけて“誤解の温室”を育て上げた。その結果、インボイス導入で「今までネコババしておいて、今さら納税したくないとは何事だ」という、冷ややかで筋違いな空気が世間に充満してしまったのである。

さらに厄介なのは、日本の消費税が本場ヨーロッパの付加価値税(VAT)とは似て非なる“なんちゃってVAT”だという点だ。本場は合理的で、投資や不調で付加価値がマイナスになれば、税を還付してくれる。「今は大変でしょう、返しておきますよ」という、ちょっとした思いやりがある。しかもEUではインフレに対応して免税額は1350万円だ。ところが日本式は、計算式だけは真似たものの、この肝心な“救済”を国内事業者には採用しなかった。マイナスになっても返ってこない。免税額は30年間1000万円に固定されたまま。税金はただ売上めがけて飛んでくる。実態はほとんど“売上税”である。赤字でも容赦なくのしかかるのだから、小規模事業者が疲弊するのは当然だ。

そして決定的なのは、VATに寄せても小規模事業者の苦しみは変わらないという事実である。VATは合理的に見えて、電子インボイスやデジタル会計など事務負担が重く、日本のように小規模事業者が多く現金文化が根強い国では、むしろ負担が増える。つまり、インボイスを続けても、VATに作り替えても、弱い立場の事業者は救われない。

解決策はシンプルである。インボイスをやめ、これまで三十年間続けてきた“日本型の実務”を法律で明確に位置づけ直すしかない。 免税事業者の請求書に含まれる消費税相当額は「納税したものとみなす」と定め、企業はこれまで通り仕入税額控除を受けられるようにする。そのうえで免税事業者は消費者に「免税店」であることを明示する。これだけで、小規模事業者の排除は消え、企業の混乱も消え、国の税収も維持される。また、これまで「みなし税」で事実上得をしてきた企業の税処理も改めるべきだが、30年も政府が認めてきたものを変えても混乱が深まるだけで益は少ない。

しかし本来を言えば、消費税そのものをなくすのが一番良い。「安定的な税収」という名目で福祉を人質に取る理屈は、景気変動を前提とした財政運営の基本からして論理が破綻している。そもそも家計収入と同じように税収を説明するところで間違っている。景気が悪くなれば減税し、財政出動で需要を下支えするのが本来の筋であり、どんな不況でも容赦なく取り立てる消費税の姿は、まるで江戸時代の悪代官の年貢取り立てと大差がない。そろそろ日本は、“とぼけた顔”の消費税をやめ、誰もが納得できる制度に着替える時期なのだ。

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