映画「教皇選挙」2025年05月15日

映画「教皇選挙」
映画『教皇選挙(コンクラーベ)』をようやく観てきた。実際の教皇選挙の後だったこともあり、興味深く鑑賞できた。ただ、対話シーンが延々と続き、英語の中に時折イタリア語・スペイン語・ラテン語が混じるため、字幕を追う頻度が高くなり、集中しづらかった。爆破テロによって礼拝堂の窓が吹き飛ぶシーンがなければ、疲れて寝てしまっていたかもしれない。映画は、ローマ教皇の死去を受けて、世界中の枢機卿たちがバチカンのシスティーナ礼拝堂に集い、新教皇を選出する極秘選挙「コンクラーベ」の内幕を描いたミステリードラマである。外部から完全に遮断された環境下で、投票が進むたびに情勢が激変し、聖職者たちが政治家のように権力闘争を繰り広げる。スキャンダルや陰謀が渦巻く中、信仰と組織、伝統と変革のはざまで葛藤する枢機卿たちの姿を通じて、現代社会の分断や人間の本質を浮き彫りにしていく。「密室のベールに包まれた選挙戦の行方と予測不能なサプライズが見どころ」との触れ込みだったが、要するに宗教の世界も政治と同じく、人間の営みである以上、権力闘争は避けられないということを描いている。

教皇選挙は、80歳未満の枢機卿(各地区代表)がシスティーナ礼拝堂に集まり、秘密投票を行う。3分の2以上の票を得た候補が現れるまで、1日に4回の選挙が繰り返される。結果は礼拝堂の煙突から出る煙の色で市民に伝えられ、黒煙は未決定、白煙は決定を意味する。選ばれた枢機卿が教皇の座を受諾すると、「Habemus Papam(ラテン語で“新教皇が誕生した”)」と発表される。映画の展開では、当初は黒人教皇の誕生が有力視されていたが、彼の不倫歴と隠し子の存在が発覚し支持を失う。次の候補である中間派の枢機卿も票の買収を行っていたことが明るみに出て失脚。爆破テロ騒動の混乱の中、保守派の枢機卿は「世界的リベラル運動は神をも恐れぬ」と煽り立てて支持を集めようとする。しかし、聖職者でありながら政治家のような熾烈な駆け引きが展開される中、戦場地域を巡回してきた無名のアフガニスタン出身の枢機卿が「我々は神の子だ」と正論を述べ、圧倒的な支持を得て新教皇に選出される。だが、最後にその新教皇がインターセックスの男性であったことが明かされ、幕が下りる。

どこか、今回のレオ14世誕生の教皇選挙とも似た展開だったので驚いた。脚本はピーター・ストローハンが手がけ、ロバート・ハリスの小説『Conclave』(2016年発表)を原作に脚色されたという。今回の実際の教皇選挙でも、当初は地元バチカンの枢機卿が優位と見られていたが、フランシスコ前教皇と同様にリベラル路線で、中国政府との距離が近すぎるとの批判が高まり、失速したとされる。中国ではカトリック司教の選出に政府の影響が強く、2018年にバチカンと中国政府の間で暫定合意が結ばれ、中国側が候補を選び、バチカンが承認するという枠組みができた。中国政府は国内のカトリック教会の統制を強化し、地下教会への弾圧も続けている。司教の選出には共産党支持者が選ばれる傾向があるという。この状況を容認してきたのが、フランシスコ前教皇および今回のバチカンの枢機卿とされる。一方、レオ14世教皇はシカゴ出身で、南米の貧困層を支えてきた実績が評価され、白羽の矢が立ったという。もちろん映画の脚本は昨年以前に完成していたわけだが、ストローハンの先見の明には驚嘆せざるを得ない。

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