長期金利急上昇 ― 2026年04月14日
東京の国債市場で長期金利が急に上がり、新しい10年国債の利回りが約27年ぶりの高さになった。ニュースではその理由として、中東の緊張が高まり原油の値段が上がったこと、そして物価がさらに上がるのではないかという心配が広がったことを挙げている。物価が上がると国債の価値は下がるので、投資家が国債を売り、金利が上がる――という説明だ。一見すると分かりやすいが、実はこの説明は最初の前提からずれている。
今回の物価上昇は、景気が良すぎて物が売れすぎているわけではない。原油や輸入品の値段が上がり、企業の仕入れコストが増えたことで起きている「コストプッシュ型」の物価上昇だ。もし景気が過熱して物価が上がっているなら、金利を上げて景気を冷ませば物価は落ち着く。しかし、コストが原因の場合、金利を上げても原因は消えない。むしろ企業の借金の負担が増えて景気が悪くなり、物価は高いままという最悪の状態、つまりスタグフレーションに近づいてしまう。
もちろん、利上げを支持する意見もある。円安が進むと輸入品の値段が上がり、物価上昇をさらに押し上げるため、円高に誘導するための利上げが必要だという考え方だ。これは一定の筋が通っているし、ニュースに出てくるエコノミストの多くはこの立場を取っている。しかし、ここに大きな問題がある。ニュースに登場する専門家の意見は、ほとんどが「利上げ・円高誘導」に偏っており、減税や供給力を強化する政策を重視する意見はほとんど紹介されない。存在しないのではなく、単にメディアが取り上げていないだけだ。
その結果、視聴者が触れる「専門家の意見」は実際より偏ったものになる。利上げは必要だと言いながら、金利上昇は危機だと語る――本来なら矛盾しているはずの二つの主張が、同時に「正しいこと」のように扱われてしまう。なぜこうした偏りが生まれるのか。理由は意外と単純だ。利上げや円高誘導は、金融政策という一つの操作で説明でき、ニュースとしてまとめやすい。すぐに動きが出るので「今起きていることに反応している」ように見える。一方、減税や供給力を高める政策は政治の判断が必要で、効果が出るまで時間がかかり、説明も複雑だ。ニュースの短い枠では扱いにくい。だから、分かりやすくて短く説明できる意見だけが選ばれ、他の選択肢は見えなくなる。
しかし、この「分かりやすさ」が問題をゆがめてしまう。利上げをすれば長期金利が上がるのは当然なのに、それを同時に「危機」として報じるのは因果関係が整理されていない証拠だ。また、「金利上昇=財政危機」という決まり文句もよく聞くが、これも単純化しすぎている。日本政府は多くの金融資産を持っており、金利が上がるとその資産から得られる利子も増える。国債の利払いが増えるのはもっと後の話で、短期と長期をごちゃまぜにして危機を語るのは正確ではない。
生活が苦しくなるのは、物価に対して給料や手取りが追いつかず、実際に使えるお金が減るからだ。ならば、まずは可処分所得を増やすことが重要になる。消費税や社会保険料の負担を軽くすれば、家計の手取りはすぐに増える。また、エネルギーや物流、半導体、インフラなどに政府が投資して供給力を高めれば、物の値段を押し上げている原因そのものを弱めることができる。供給が増えれば価格は安定する。これは経済の基本だ。問題は、こうした選択肢がニュースの中でほとんど語られないことだ。報道されなければ、存在しないのと同じになる。その結果、「利上げしかない」という空気だけが残る。いま起きていることは、それほど複雑ではない。複雑に見せているのは説明の側である。限られた言説だけで作られた現実は、もはや現実ではない。それは“編集された物語”にすぎない。
今回の物価上昇は、景気が良すぎて物が売れすぎているわけではない。原油や輸入品の値段が上がり、企業の仕入れコストが増えたことで起きている「コストプッシュ型」の物価上昇だ。もし景気が過熱して物価が上がっているなら、金利を上げて景気を冷ませば物価は落ち着く。しかし、コストが原因の場合、金利を上げても原因は消えない。むしろ企業の借金の負担が増えて景気が悪くなり、物価は高いままという最悪の状態、つまりスタグフレーションに近づいてしまう。
もちろん、利上げを支持する意見もある。円安が進むと輸入品の値段が上がり、物価上昇をさらに押し上げるため、円高に誘導するための利上げが必要だという考え方だ。これは一定の筋が通っているし、ニュースに出てくるエコノミストの多くはこの立場を取っている。しかし、ここに大きな問題がある。ニュースに登場する専門家の意見は、ほとんどが「利上げ・円高誘導」に偏っており、減税や供給力を強化する政策を重視する意見はほとんど紹介されない。存在しないのではなく、単にメディアが取り上げていないだけだ。
その結果、視聴者が触れる「専門家の意見」は実際より偏ったものになる。利上げは必要だと言いながら、金利上昇は危機だと語る――本来なら矛盾しているはずの二つの主張が、同時に「正しいこと」のように扱われてしまう。なぜこうした偏りが生まれるのか。理由は意外と単純だ。利上げや円高誘導は、金融政策という一つの操作で説明でき、ニュースとしてまとめやすい。すぐに動きが出るので「今起きていることに反応している」ように見える。一方、減税や供給力を高める政策は政治の判断が必要で、効果が出るまで時間がかかり、説明も複雑だ。ニュースの短い枠では扱いにくい。だから、分かりやすくて短く説明できる意見だけが選ばれ、他の選択肢は見えなくなる。
しかし、この「分かりやすさ」が問題をゆがめてしまう。利上げをすれば長期金利が上がるのは当然なのに、それを同時に「危機」として報じるのは因果関係が整理されていない証拠だ。また、「金利上昇=財政危機」という決まり文句もよく聞くが、これも単純化しすぎている。日本政府は多くの金融資産を持っており、金利が上がるとその資産から得られる利子も増える。国債の利払いが増えるのはもっと後の話で、短期と長期をごちゃまぜにして危機を語るのは正確ではない。
生活が苦しくなるのは、物価に対して給料や手取りが追いつかず、実際に使えるお金が減るからだ。ならば、まずは可処分所得を増やすことが重要になる。消費税や社会保険料の負担を軽くすれば、家計の手取りはすぐに増える。また、エネルギーや物流、半導体、インフラなどに政府が投資して供給力を高めれば、物の値段を押し上げている原因そのものを弱めることができる。供給が増えれば価格は安定する。これは経済の基本だ。問題は、こうした選択肢がニュースの中でほとんど語られないことだ。報道されなければ、存在しないのと同じになる。その結果、「利上げしかない」という空気だけが残る。いま起きていることは、それほど複雑ではない。複雑に見せているのは説明の側である。限られた言説だけで作られた現実は、もはや現実ではない。それは“編集された物語”にすぎない。