マスクが外せない理由2025年06月27日

マスクが外せない理由
新型コロナが5類に移行してから2年。街を歩けばマスクを外す人の姿も増えてきたとはいえ、若い世代、とくに中高生や20代の女性のあいだでは、マスクを外すことへのハードルが意外と高い。もはや“感染対策”の枠を超えて、“自分の一部”として定着している人も少なくないようだ。ある女子中学生の言葉が、その気持ちをよく表していた。「マスクを外して鏡を見ると、口元が左右非対称に見えてしまって。誰かに何か言われたわけじゃないけど、自分ではもう見せたくないと思ってしまうんです」。真夏の暑い日も、食事や水泳のときを除いて常にマスクを着けているという。メガネや帽子と同じように、マスクが“顔の一部”になってしまったのだ。この感覚、実は多くの若者に共通している。ある調査では、20代女性の6割以上が「普段からマスクを着けている」と回答。男性も半数近くがマスクを手放せないと答えている。理由として多いのは、「すっぴんを見られたくない」「顔に自信がない」「外すタイミングがわからない」など。

背景には、現代ならではの“見た目へのプレッシャー”がある。SNSには加工されたキラキラ写真があふれ、「リアルな素顔」はどんどん居場所をなくしている。人と比べて落ち込んだり、見た目への不安を抱えたり——そんな心の揺らぎが、マスクという“安心感”につながっているのかもしれない。実際、周囲でも、コロナ禍を経てマスクが手放せなくなった子どもたちを多く見かける。感染対策の一環として室内での着用は勧めていたものの、屋外でも外すことに強い抵抗を示す子も現れた。「外すことが怖い」。それは、ウイルスではなく、周囲の視線に対する恐れだった。こうした傾向に、精神科医の一部は「醜形恐怖症」や「社交不安」といった言葉をあてはめる。ただし、すべてが病的というわけではない。「素顔を見せるのが恥ずかしい」「人の目が気になる」——その気持ちは、思春期や若者ならではの繊細な感情でもある。問題は、マスクが単なる衛生アイテムではなく、「心の鎧」として機能してしまっている点だ。「オンライン会議中も外せない」「就活の面接に行けない」といった悩みを抱える若者も増えている。他人との距離感をコントロールできる“防御ツール”として、マスクが手放せなくなっているのだ。

とはいえ、マスクの効果や必要性は一律ではない。たとえば「感染が3%減少した」という北欧の研究があったとしても、地域性や着用率、マスクの種類など、条件によって結果は大きく左右される。要は、マスクは万能でも無意味でもなく、“文脈に応じたツール”であるということ。だからこそ、「外せよ」「まだ着けてるの?」といった言葉はナンセンス。大切なのは、誰もが自分のペースで選択できること。「今はまだ不安」「でも、少しずつ外してみたい」——そんな気持ちを、周囲がそっと受けとめるだけでも、人は変わっていける。「マスクを外すことが、自分らしさを取り戻すきっかけになるかもしれない」。そんなふうに思えたなら、それが第一歩。無理に外す必要はない。でも、ほんの少し勇気を出してみる。その積み重ねが、“顔”よりも“心”を解放することにつながっていけばと思う。