対外純資産で3位転落? ― 2026年05月28日
財務省が発表した対外純資産の数字を見て、またぞろ「日本の順位が下がった!」と大騒ぎする報道が出てきた。ドイツと中国に抜かれて3位ですって? まるで、運動会で抜かれた子どもを見て「うちの子はもうダメだ」と嘆く親みたいな反応である。しかし実態はどうか。日本の純資産はむしろ増えている。順位が下がったのは、為替と貿易構造の違いがつくった“順位のいたずら”にすぎない。にもかかわらず、順位だけを見て国力の未来を語ろうとするのは、順位表だけ見て健康を判断するようなものだ。
ドイツは輸出黒字で食べてきたが、エネルギー高とEVシフトで足元がぐらついている。中国は外貨準備こそ巨大だが、政治リスクと資本規制で、財布の中身があっても自由に使えない状態だ。その点、日本はというと、企業も個人も年金基金も、海外でコツコツ利子と配当を稼いでくる。いわば“働き者の財布”である。年間30兆円規模の第一次所得収支がある国など、そうそうない。順位ではなく「どう稼ぐか」で見れば、日本はむしろ一番手堅い。
さらに、円安と巨額の対外資産。これがまた、国内産業を立て直すには絶好の材料なのだが、「外貨を円に替えたら円高になる」といった単純な話がまかり通っている。為替市場は1日数百兆円が飛び交う大海原である。そこにバケツ一杯の水を戻したところで、波の高さは変わらない。円安の主因は金利差であって、資金移動そのものではない。つまり、外貨を国内に戻して産業に投資する余地は、ちゃんとある。
人手不足もサプライチェーンの揺らぎも、悲観するよりむしろ「そろそろ体質改善しなさいよ」という天の声のようなものだ。自動化投資が進み、低生産性企業が退出し、労働が高付加価値部門へ移る。海外生産の“安くて安全”という神話も崩れ、国内回帰は合理的な選択になった。ところが、この流れを後押しするはずの政策が、なぜか逆方向を向いている。
とりわけ脱炭素を成長戦略の中心に据える発想は、現実の産業構造とズレている。再エネ比率を増やせば電力コストが上がるのは欧州が証明済みで、日本も同じ道をたどりかねない。高コスト電力で産業を再建しようというのは、順位を上げたいと言いながら足に重りをつけて走るような矛盾である。必要なのは、高効率火力と原子力による安定した電力供給で、その上に自動車、石油精製、半導体といった基盤産業を再編することだ。
円安、外貨資産、人手不足、供給網の再編――これらはすべて「今こそ国内投資だよ」と同じ方向を指している。ところが報道は、順位というわかりやすい指標に固執し、日本の進むべき道を見失わせる。問題は順位ではない。順位に振り回されて、肝心の“どこへ向かうか”を忘れてしまうことである。
ドイツは輸出黒字で食べてきたが、エネルギー高とEVシフトで足元がぐらついている。中国は外貨準備こそ巨大だが、政治リスクと資本規制で、財布の中身があっても自由に使えない状態だ。その点、日本はというと、企業も個人も年金基金も、海外でコツコツ利子と配当を稼いでくる。いわば“働き者の財布”である。年間30兆円規模の第一次所得収支がある国など、そうそうない。順位ではなく「どう稼ぐか」で見れば、日本はむしろ一番手堅い。
さらに、円安と巨額の対外資産。これがまた、国内産業を立て直すには絶好の材料なのだが、「外貨を円に替えたら円高になる」といった単純な話がまかり通っている。為替市場は1日数百兆円が飛び交う大海原である。そこにバケツ一杯の水を戻したところで、波の高さは変わらない。円安の主因は金利差であって、資金移動そのものではない。つまり、外貨を国内に戻して産業に投資する余地は、ちゃんとある。
人手不足もサプライチェーンの揺らぎも、悲観するよりむしろ「そろそろ体質改善しなさいよ」という天の声のようなものだ。自動化投資が進み、低生産性企業が退出し、労働が高付加価値部門へ移る。海外生産の“安くて安全”という神話も崩れ、国内回帰は合理的な選択になった。ところが、この流れを後押しするはずの政策が、なぜか逆方向を向いている。
とりわけ脱炭素を成長戦略の中心に据える発想は、現実の産業構造とズレている。再エネ比率を増やせば電力コストが上がるのは欧州が証明済みで、日本も同じ道をたどりかねない。高コスト電力で産業を再建しようというのは、順位を上げたいと言いながら足に重りをつけて走るような矛盾である。必要なのは、高効率火力と原子力による安定した電力供給で、その上に自動車、石油精製、半導体といった基盤産業を再編することだ。
円安、外貨資産、人手不足、供給網の再編――これらはすべて「今こそ国内投資だよ」と同じ方向を指している。ところが報道は、順位というわかりやすい指標に固執し、日本の進むべき道を見失わせる。問題は順位ではない。順位に振り回されて、肝心の“どこへ向かうか”を忘れてしまうことである。