高校授業料無償化(1)2024年04月29日

東京都は、高校の授業料を2024年度から所得制限を撤廃して実質無償化した。これについて「九都県市首脳会議」のなかで議論が行われた。「教育は国による統一的な制度設計が基本」「一部の自治体が単独で行い不均衡が生じている」「住んでいる地域によって差がつくべきではない」と近隣自治体の首長は不公平だと批判した。都知事はこれについて「人口1人当たりの一般財源で見ると、都は全国平均と同水準にある」から財源の差ではないと不公平論を退け、他の居住地より出費も多い東京の授業料無償化は緊急焦眉の課題だと一蹴した。すでに国の支援では公立高校授業には年収910万円未満に年間11万8800円が支給され無償だ。私立高校授業料にも年収590万円未満の世帯に最大39万6000円が加算支給されている。ただ、私学の年間授業料は平均70万程度なので全額無償にまでは至っていない。つまり、私学授業費の差額にも東京や大阪などは全額無償化する施策を打ち出したわけだ。

都市圏の私立高校の生徒数は10年程前から公立高校の生徒数を超えようとしている。少子化と無償化施策が公立校生徒数を減らす結果に拍車を掛けているのは間違いない。私学の教育内容が公立より高く支持されているとも言える。今や都市圏の公立高校の多くは有名私学の滑り止めになっているともいえる。学校選択に学費の格差が無くなり努力すれば高い教育内容が手に入るとなれば私学を選ぶ子弟が増えることは自明の理だ。もともと公立学校は低所得家庭の子弟でも後期中等教育が受けられることが目的だ。私学の高い学費は払えぬが、学力の高い子弟に開かれたのが名門公立学校だった。しかし、少子化の中、他校と鎬を削って経営努力を重ねる私学に、競争と無縁の公務員教員が勝てるわけがない。高校教育の無償化はこうした経営格差を浮き彫りにして私立高校の士気の高さが顕在化したともいえる。次回は、行き過ぎた教育の無償化は公教育破壊につながる可能性を述べていきたい。
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