「迷子/ベビーセンター」トイレ2025年04月16日

「迷子/ベビーセンター」子供用トイレ
国民生活を揺るがす物価高、止まらぬ景気後退——未曽有の国難に立ち向かうべきこのタイミングで、国会で飛び出したのはまさかの“トイレ論争”だった。問題提起をしたのは立憲民主党の石垣のり子参院議員。彼女が槍玉に挙げたのは、2025年関西万博会場に設置される「迷子/ベビーセンター」内の子供用トイレだ。関係者によると、このトイレには大便器が3つ、小便器が2つ設置されており、大便器の間には低めの仕切り。利用対象は0〜2歳の乳幼児で、保護者と共に使うことを前提とした設計。経済産業省も「スタッフが入口で監視することで無断利用を防ぎ、プライバシーは確保されている」という。だが、石垣氏は「一組ごとの利用が基本とはいえ、他の家族が同時に使える運用方針はおかしい」と異を唱え、設計ミスがあるなら速やかに見直すべきだと主張。ネット上では「そんなことに時間を使うな」「育児トイレを知らないのか」といった批判の声が相次いでいる。

というのも、このトイレ構造自体、日本中の保育施設で広く採用されている“お馴染み”のスタイル。保育園や商業施設で子供を育てた経験のある親なら、一度は目にしているはずだ。しかも、会場内には親子トイレも各所に設置済み。乳児トイレに親やスタッフが立ち入るのはむしろ常識で、それを問題視する感覚自体がズレているというのが大方の見方だ。さらに突っ込む声もある。「本当にトイレを問題視するなら、むしろ議論すべきは万博会場に設置されるジェンダーフリートイレでは?」。女性スペースへの男性の立ち入り可能性が指摘されているこの構造には、何故かノータッチの石垣議員。これには「批判のための批判」「野党の存在意義が“難癖”になっている」との指摘も。子供の安全とプライバシーの配慮は確かに重要。だが、野党議員としての貴重な質疑時間を“トイレの仕切り”に費やす姿に、国民が感じたのは“違和感”ではなかったか。

Nスペ「国債発行チーム」2025年04月14日

Nスペ「国債発行チーム」
『未完のバトン 第1回 密着 “国債発行チーム”』というNHKのドキュメンタリーは、財務省の「国債発行チーム」に密着し、国債発行の舞台裏を描いた作品である。日銀の金利引き上げや国債買入縮小をテーマに、国内外の投資家とのやり取りが描かれている。特に中東など海外市場へのアプローチが注目されるが、冒頭で政府が国民に借りた負債である国債残高を「国の借金」と表現した点に嫌な予感を抱いた。視聴を続けるうちに、その予感は怒りを超え、あきれ果てるに至った。

番組内では、日銀による国債購入縮小と連動して財務省が行う国債売りの「営業活動」が強調されている。これでは、視聴者が国債発行の実態を誤解する恐れがある。特に、日銀の保有率低下とそれに伴う海外投資家の登場が、まるで国債発行に対する不安を煽るかのように描かれており、印象操作にしか見えない。なお、特別会計による180兆円分の国債購入額を示して多額に見せているが、実際にはほとんどが借り換えであり、新規の資金調達を意味するものではない。確かに海外資本がある程度の国債を保有することはリスクヘッジとして一定の意味を持つが、多額になれば国債安定の信用低下のリスクも増す。日銀や民間銀行が積極的に国債を買い入れないという印象と、財務省の海外への「積極的な国債販売」との結び付けは、悪質な印象操作であると言わざるを得ない。

さらに、日銀が国債を買わないかのように見える描写も目立つ。中央銀行は市場の安定を図るために国債売買で市場の通貨量を調整することが金融政策の原則である。それにもかかわらず、日銀の国債買い入れと政府国債発行との連携が欠如しているかのように描くのは、制作者の悪意を感じざるを得ない。また、金融緩和政策がデフレ脱却に寄与した面に触れず、異次元の緩和が市場を歪めたという一面的な見解のみを取り上げるのも偏った印象を与える。これでは日銀の調整は不要で金利は市場に任せておけば良いという理屈になる。視聴者の中央銀行への知識不足を良いことに言いたい放題である。もっとも、デフレが長く続いたのはバブル崩壊以降の日銀の引き締めが長期化したことが一因であるため、必ずしも日銀政策が正しいわけではないが、金融緩和だけを切り取って批判するのはフェアではない。

結局のところ、NHKという公共放送機関が特定の視点に偏った報道を行っている現状は、ガバナンスの不備を露呈している。多角的な視点と正確な統計に基づく報道が求められる中、今回のドキュメンタリーはその点で多くの疑問を残すものであった。果たして、この放送は一体誰のために制作されたのか。国債残高は国民の富とも言えるのに、何も知らない一般視聴者にとっては、国債発行がただの「悪」として映ってしまう。責任は国民にはなく、30年もの間、国民負担を増やし可処分所得を減らした結果、消費も投資も増えずGDPを伸ばせなかった政府にある。

人気パビリオン予約落選2025年04月13日

入れない万博パビリオン
大阪・関西万博がついに開幕した。会場は大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、世界158か国・地域が参加。10月13日までの半年間にわたり、未来社会を体験できる一大イベントである。開幕初日、東ゲート前の広場ではテープカットセレモニーが行われ、日本国際博覧会協会(万博協会)の十倉雅和会長が「大阪・関西万博、ただいま開幕します」と高らかに宣言。博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長、伊東信久万博担当相、大阪府の吉村洋文知事、大阪市の横山英幸市長らも参加し、華やかに開幕を祝った。東ゲートには朝から多くの来場者が列をなし、「世界旅行気分で楽しみたい」「一生の思い出を作りに来た」などの声が飛び交った。午前9時の開門と同時に続々と人々が会場に足を踏み入れ、その様子は予想を超える盛り上がりであった。会場内は家族連れや観光客でにぎわい、晴れやかなスタートを切った。

しかし、開幕前には否定的な報道が目立っていたことも事実である。「チケットが売れていない」「パビリオンが間に合わない」「見るところがない」「メタンガスの危険性」「学校行事では使えない」「食事が高すぎる」「赤字は確実」など、あたかも万博が失敗するかのような論調が多かった。世論調査でも「行く予定がない」が半数を超えていた。だが、実際に始まってみると、会場は大混雑で入場すら困難で、人気パビリオンはほとんど予約が取れない状況が続いている。パビリオンは第5希望まで抽選予約が可能であるが、全て落選したという声は少なくない。筆者も5件すべて外れたひとりであり、現在は入場日を変更して7日前抽選に再チャレンジしているが、当選の気配はない。

「並ばない万博」と謳われていたが、現実は人気パビリオンには「入れない万博」である。当日抽選も存在するが、ディズニーやUSJを体験している者であれば、人気アトラクションは「ほとんど当選できない」という厳しさを知っている。あえて夜間や梅雨時、酷暑のタイミングを狙う方が、まだマシかもしれない。本日は雨天であるにもかかわらず、会場は大混雑しているという。まもなく、ブルーインパルスが会場上空を飛行する時間である。曇り空の中でも、この万博の熱気は確実に空まで届いているようだ。ジェット音は自宅まで届くだろうか。

特別支援の「調整額」2025年04月12日

特別支援の「調整額」
文部科学省は、障害のある児童・生徒を担当する教員に支給されている特別支援の「調整額」を、2027年から段階的に引き下げる方針を明らかにした。現在は月給の3%相当が支給されているが、2027年と2028年の2年にわたりそれぞれ0.75%ずつ削減し、最終的に1.5%とする予定だ。背景には、「通常学級で学ぶ障害児が増え、特別支援教員の“特殊性”が薄れた」との認識と、教員全体の給与引き上げに向けた財源の確保がある。一方、特別支援調整額とは別に、教員全体を対象とした「教職調整額」の引き上げも国会で審議中だ。これは2026年から段階的に10%まで引き上げる法案が検討されており、この分で特別支援教員の減額分は相殺される。とはいえ、他の教員に比べて増額幅は相対的に小さくなる。文科省は「結果的に手取りは増える」と説明する。

加えて、義務教育教員特別手当も2026年から、従来の1.5%から1.0%に引き下げられる予定だ。教員の給与を上げなければ人材確保が難しいという議論が進んでいたが、財務省の意向もあり、文科省は“痛み分け”のように少数派である特別支援教員の手当てを削ることで帳尻を合わせようとしている。すでに小中学校と特別支援学校の教員手当も、しれっと0.5%減らされようとしている。つまり、これまで特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室の教員には、基本給に最大14%近い手当がついていたが、3年後には12%に下がる。一方で教職調整額が6%引き上げられて18%になるから、「差し引き4%増えてるでしょ、文句は言えないよね」という論理だ。そして、一般教員との差額、つまり「ご苦労さん料」は最終的に1.5%で我慢しろ、という話である。

だがその根拠とされた「通常学級で学ぶ障害児が増え、特別支援の特殊性が薄れた」という説明には大きな疑問が残る。およそ20年前まで、特別支援学級の対象は主に身体・知的障害のある子どもだった。だが次第に、知的な遅れのない発達障害のある子どもたち、特に行動面・対人関係・学習面で困難を抱える子どもたちが支援学級に受け入れられてきた。文科省は本来、こうした子どもへの対応は通常学級で行うべきだとしていたが、現実には都市部を中心に支援学級は増加の一途をたどっている。つまり支援学級の教員には、発達障害への対応スキルが新たに求められるようになってきたのだ。通常学級の担任や管理職が、学級運営が難しい子どもの保護者に「支援学級」を勧めてきた経緯もある。背景には、働き方改革の中でこれ以上担任の業務を増やせないという事情もあるだろう。文科省が「インクルーシブ教育」を唱えても、実際の現場ではむしろ逆行する「エクスクルーシブ化」が進んでいるのが実情だ。

数字を見ても明らかだ。過去10年で都市部の通常学級は少子化の影響で約1万4千学級(約18%)減少したが、特別支援学級は1000学級増え、約10%の増加となっている。このデータのどこを見て、「通常学級で学ぶ障害児が増えた」と言えるのか。通常学級にすでに在籍していた発達障害の子どもを、今になって「増えた」とカウントするのであれば、それは“統計マジック”によるごまかしでしかない。もちろん、担任する子どもの人数だけで見れば、通常学級の教員の方が4倍近い子どもを受け持っている分、業務負担が大きいのは確かだ。中には、通常学級でうまく対応できなかった教員が、特別支援に異動してきたケースもある。だが、大多数の特別支援教育担当者は、多様な学力・学習スタイルに対応し、子ども一人ひとりに合わせた教材と指導を提供している。子どもだけでなく保護者への対応も多く、精神的な負荷は計り知れない。これが1.5%、約5000円の「ご苦労さん料」で済む話だろうか。「通常学級で学ぶ障害児が増えた」なら全教職員に3%の手当てをするのが筋ではないか。

高関税発動を延期2025年04月11日

高関税発動を延期
トランプ政権がわずか半日で一部関税の発動を延期した背景には、表向きには「消費者への影響を避けるため」と説明されたが、実際には米国債市場の動揺、いわゆる“国債暴落”への懸念が大きく影を落としていた可能性が高い。これまで「リスクフリー資産」とされてきた米国債は、関税政策や中国との対立激化を受け、株・債券・ドルが同時に売られるという異常な状況に見舞われた。これは、米国経済や財政に対する投資家の信頼が揺らぎ始めている兆候に他ならず、米国債がもはや安全な避難先として機能しなくなりつつあることを示していた。加えて、米国債の主要保有国である中国や日本の動きも見逃せない。もし外国人投資家が米国債を本格的に売却すれば、長期金利が急騰し、ドルも下落する。その結果、政府の借入コストが上昇し、財政運営は一層厳しさを増すことになる。株価を政権の成果と位置付けてきたトランプ政権にとって、こうした市場の混乱は単なる経済問題ではなく、政治的な打撃ともなりうる。したがって今回の関税延期は、単なる政策の微調整ではなく、国債市場や金融システム全体の安定を守るための“退却”だったとも言える。

株価の乱高下に一喜一憂する向きもあるが、株式市場は経済活動が続く限り、いずれ回復する可能性がある。しかし、国債価格の下落は国の信用そのものを揺るがし、民間の借入コストや企業の経営、ひいては雇用や実体経済に深刻な影響を与える。とりわけ、株式市場から距離のある下層労働者層の生活が直撃されれば、トランプ支持層の離反にもつながりかねない。この間、日本が米国債を売ったという噂もあるが、より現実味があるのは、中国が戦略的に売り浴びせを行ったという見方だ。米国債を売れば中国自身の資産も減るが、それでも100%超の関税を科された状況下では「背に腹は代えられない」との判断だったのだろう。だが、こうなると高関税と米国債売却の応酬となり、基軸通貨ドルの信用が損なわれれば、その影響は世界全体に波及する。日本としては静観を保ちつつ、中国産太陽光パネルに依存しない電力資源の開発に投資し、国内の産業と農業を早急に立て直すことが肝要だ。だが、それを迅速に実行できる政府が今の日本にあるかというと、残念ながら心もとない。

ブルーインパルス2025年04月10日

ブルーインパルス
大阪・関西万博の開幕を前に、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が予行飛行を行った。大阪の空に彼らの姿が舞うのは、平成2年の国際花と緑の博覧会以来、実に35年ぶりのことらしい。午前11時40分ごろ、関西国際空港を飛び立ち、府南部を経由して大阪城や万博公園の太陽の塔といった、街の象徴をなぞるように飛行していった。展示飛行は正午から15分間。今回の万博会場である夢洲(ゆめしま)の上空に、白いスモークが描く軌跡が広がった。すべては、万博の開幕を華やかに彩る一幕として企画されたものだ。ちょうど私は太陽の塔の近くのショッピングモールに立ち寄った。いつもは閑散としている立体駐車場が満車で、「何かあるのかな?」と不思議に思いながら屋上階へ上がると、たくさんの人が空を見上げていた。その視線の先に、思い出した。ああ、今日はブルーインパルスが飛ぶ日だった。爆音とともに、6機の編隊がスモークを吐きながら空を駆け抜けていく。わずか5秒ほどの出来事だったけれど、その一瞬に目を奪われた。飛行機雲の向こうに、万博のはじまりの気配が見えたような気がした。

思えば数年前、コロナ禍のさなかに、ブルーインパルスが医療従事者への感謝と励ましを込めて飛んだことがあった。あの時は涙が出た。空に浮かぶその姿が、人と人とが支え合う象徴のように感じられて。今回もまた、「大阪万博、がんばれよ」とエールを送るような飛行だったのだろう。きっとあの空を見上げた多くの人が、その想いに応え、会場へと足を運ぶのだと思う。それにしても、ひととおり空を眺め終えた人たちが、誰も彼もぞろぞろと帰っていくのがちょっと可笑しかった。「あれ、買い物はしないの?」と、心の中でツッコミを入れる。スーパーの棚には、5キロ4300円の米がずらりと並んでいた。備蓄米を放出しても全然安くならないなあ、と思いつつ、ふと思い浮かんだ。いっそ「米をもっと作ろう!」というメッセージで、ブルーインパルスがまた空を飛んでくれたら面白いのに。そんな突拍子もないことを考えながら空を見上げた。

通信制高校約29万人2025年04月09日

通信制高校約29万人
令和6年度の通信制高校の生徒数は約29万人に達し、この10年間で約1.6倍に増加した。現在では高校生のおよそ10人に1人が通信制に在籍している。この背景には、コロナ禍を契機とした不登校の増加がある。近年では、角川ドワンゴ学園の「N高」など、多様なコースを提供する通信制高校が増加し、オンライン学習や個別指導といった新たな教育スタイルが広がっている。これにより、難関大学への進学実績やスポーツ分野での成果も注目されるようになった。文部科学省の統計によれば、令和5年度の不登校高校生は過去最多の6万8,770人に達しており、不登校の拡大とともに通信制高校の認知度も上昇している。一方、全日制高校の生徒数は減少傾向にあり、通信制高校の存在感はますます高まっている。通信制高校では、オンライン学習の活用により、生徒が自分のペースで学習を進められる柔軟性が評価されている。これにより、受験勉強やアルバイトなどとの両立も可能となり、多様なニーズに応える教育形態として注目を集めている。大学進学率については、通信制高校では21.2%と全日制に比べて依然として低いものの、近年は上昇傾向にある。なお、通信制高校は必ずしも不登校生の受け皿に限られたものではなく、多様な背景を持つ生徒が在籍している。ここで、中学校卒業生の進路全体を見てみると、年間約105万人の中学卒業生に対して、単純計算で生徒数は約315万人(3学年分)とされる。しかし、高校在籍者数は約290万人であり、約25万人が高校教育からこぼれ落ちている計算になる。

この25万人のうち、専門学校や特別支援学校などに進学した生徒も一部含まれると推定されるが、それでも進学しなかった生徒は約18万人、全体の6%程度に上る。この6%の子どもたちの進路実態はほとんど把握されておらず、今後の大きな課題である。また、中学校で不登校だった生徒のうち、高校進学後も安定した就労に至らないケースが多い。統計的推計によれば、高校進学から漏れた約6万人のうち5割、つまり3万人が就労に至らない可能性がある。これが毎年続けば、40年間で約120万人が就労できないまま過ごすことになる。これは、日本の40年後の就労人口約5300万人に対して約2%が恒常的に非就労者となる計算であり、3880万人に達する高齢者人口と合わせると、就労世代と非就労・高齢世代がほぼ近づいていくことを意味する。したがって、不登校の子どもたちに適切な後期中等教育(高校教育や職業教育)を保障することは、単なる教育福祉の問題にとどまらず、国全体の総生産額・総消費額、ひいては「国力」の維持に直結する重要課題である。授業料一律無償化は通信高校生も恩恵は被るが、教育機会からこぼれ落ちた子供には届かない。私学や通信制高校の増加は逆に言えば、公教育への失望が増えているとも言える。義務制の小中学校の段階や公立高校に向け、柔軟な教育機会の保障と進路保障ができるように、重点的に投資をすることが、今後の教育政策の要となるべきである。

1リットル10円補助2025年04月08日

1リットル10円補助
政府・与党は、6月からガソリン価格を抑えるため、1リットルあたり10円の定額補助を導入する方向で検討している。現在の価格水準から見れば、確かに一定の値下がり効果は見込まれる。しかし、1リットルあたり25円10銭の「暫定税率」の廃止を求める野党の反発は必至だ。政府はガソリンの全国平均価格を185円程度に抑える方針を掲げ、夏の参院選を見据えた「国民負担の軽減」をアピールする構えだ。財源は既存の基金を活用し、追加の予算措置は講じないとしている。昨年12月には、自民・公明・国民民主の3党が「暫定税率の廃止」で合意した。しかし、あれから半年、具体的な廃止時期は棚ざらしのまま。6月から来年3月末まで、価格を引き下げることだけは決めたようだ。だが、現実を見れば、その「効果」には疑問符がつく。市中のガソリンスタンドでは185円程度の価格が一般的。そこから10円引いたとしても、満タン給油でせいぜい500円程度の差だ。原油価格も同時株安でやや下がってはいるものの、1バレル5ドルの下落では2円分程度しか値下がりしない。しかも、その上に「暫定」の名を借りた税金がどっしりとかかる。結局、庶民の負担は「雀の涙」ほども軽くならない。そもそもこの暫定税率、1974年の石油危機を受けて「一時的措置」として導入されたものだ。それが50年経っても存続している。

昨年の与党合意ですら実行されないまま先送り。もはや「暫定」とは、政治が怒りの火消しに使う“魔法の言葉”と化している。政府は「地方財政への影響がある」と繰り返すが、インフレの影響で地方税収も軒並み増加している今、果たしてどれだけの自治体が「あと1年、暫定税率を維持してほしい」と訴えているのか。どう見ても、理由をこじつけて、少しでも多く徴収したいという国の思惑が透けて見える。そして忘れてはならないのが、ガソリンだけではないということだ。日本の電力の約7割を火力発電が占める中、電気代の高騰も深刻な問題となっている。この夏、光熱費がどれだけ跳ね上がるのか、考えるだけで寒気がする。世界経済も安定にはほど遠い。トランプ関税への報復として中国が同率の関税を発表し、世界は同時株安に突入。日経平均は3月の3万9千円から、既に8千円も下落した。賃上げが進んだとはいえ、物価高に追いつけず、実質賃金は先月もマイナス。インフレと景気後退が同時に襲う「スタグフレーション」の足音がひたひたと迫っている。それでもなお、「10円の補助」でしのげるとでも思っているのだろうか。減税には背を向け、実効性の乏しい支援策でやり過ごそうとする石破内閣に、果たして危機を乗り越える力はあるのか。いま、国民が求めているのは、言葉のごまかしではなく、現実に即した政策だ。即刻、退場を願いたい。

ETC障害2025年04月07日

ETC障害
4月6日未明、中日本高速道路は東京、神奈川、愛知など8都県にまたがる料金所でETCシステムの障害が発生したと発表した。影響は106か所に及び、約38時間にわたってETCが利用できない状態が続いた。7日には応急的な復旧が完了し、すべての料金所が再開されたという。混雑を緩和するため、一時的に精算を後回しにして通行を許可する対応がとられたが、通行料金は後日精算となり、利用者には公式サイト上での支払い案内がなされた。だが、これを「スムーズな対応」と受け取れる人は多くないだろう。障害の原因とされるのは、5日に実施されたETC深夜割引の見直しに伴うシステム改修作業だという。単なる“割引時間帯の変更”という、20年以上も運用されてきた制度におけるルールの一部修正で、システム全体が約2日間も機能不全に陥ったことには驚かされる。そもそもこの夜間割引は、2001年に導入された制度で、深夜帯の交通分散を目的としたものだった。対象時間は当初0時~4時、そこを走れば通行料が30%割引になる仕組みだ。今回の見直しでは、その時間帯を22時~5時へと拡大。しかし、これで果たして実効性はあるのか。というのも、割引時間を狙ってインターチェンジ付近の路肩などで不法駐車をして待機する長距離トラックの姿は以前から問題となっており、時間の前倒しでこの習慣がなくなるとは思えない。また、夜間の割引を最大限に活かすため、休憩も取らずに高速道路を走り続ける運送業者も少なくない。今回の改定により、割引時間が都合3時間延びたことで、安全面の懸念はむしろ増したのではないか。

そもそもETCは、時間と距離のデータを正確に記録できるシステムである。であれば、割引の条件に「適度な休憩」や「安全運転」を組み込むことも技術的には可能なはずだ。例えば、平均的な到達時間を超えた車両に対してのみ、深夜割引を適用するといった工夫も考えられる。今回のETC障害は、単なる技術的な不具合では済まされない。障害の最中にもかかわらず、「後日支払いを」という通知がなされる。遅延やトラブルの原因を作った運営側が、利用者に“迷惑料”どころか“請求”をするという構図には違和感がある。同日、ゆうちょ銀行の通信システムでも午前中に障害が発生し、送金に支障が出た。ETCにせよ金融ネットワークにせよ、今や社会インフラそのものであり、ひとたび止まれば全国規模で影響が出る。こうした状況下で、なぜ確実なバックアップ体制が整えられていないのか。高速道路会社もゆうちょ銀行も、もともとは道路公団や郵政公社といったお役所組織の流れをくむ会社だ。前例主義が根強く、危機管理や改革のスピードが鈍いのではと疑いたくもなる。システムは「人間が作ったものである以上、絶対はない」。そうはいっても、繰り返される不具合に、国民はいつまで“慣れ”を強いられなければならないのだろうか。今こそ、制度とシステムの両面で「安心して使える仕組み」への見直しが求められている。

赤ちゃんポスト2025年04月06日

赤ちゃんポスト
東京・賛育会病院が、「赤ちゃんポスト」と「内密出産」の受け入れを始めると発表した。これは都内初の試みになる。赤ちゃんポストは、生まれたばかりの赤ちゃん(生後4週間以内)を、名前も名乗らずに預けられる仕組み。内密出産は、出産する女性が身元を完全には明かさず、一部の医療スタッフだけに知らせて出産できる制度だ。どちらも、予期せぬ妊娠や孤立出産、そして最悪のケースである嬰児遺棄を防ぐことを目的としている。病院は東京都や墨田区と連携して運営にあたる。この分野で先行してきたのが、熊本市の慈恵病院だ。同院の蓮田健理事長は、今回の賛育会病院の方針に対し、「内密出産の費用を本人に請求するのは残念だ」と率直に批判。理念を大切にすべきだとして、慈恵病院では経済的に厳しい人の出産費用は病院側が負担しているという。ただし、この「理想の姿」にも異論はある。赤ちゃんポストにしても内密出産にしても、母親の身元が不明だったり、経済状況がつかめなかったりするケースが多い。当然、医療費の負担は病院が背負うことになる。それだけでも大変だが、もっと難しいのは「健保未加入」や「生活保護が受けられない」などの在留資格を持たない違法滞在者による出産についてだ。こうなると「医療費は病院持ちで当然」と言い切ることには、社会的にも疑問の声が出てくるのは自然なことだ。ここでは、未成年の予期せぬ妊娠といった別の問題は脇に置いておきたい。

健保料が未払いの人や、生活に困っている人たちには救済策がある。申請すれば健保組合や自治体の補助が出ることもあり、出産費用がゼロになるケースもある。これは病院側が丸損しないための制度でもある。でも、その仕組みにも当てはまらない違法滞在者の出産まで、「赤ちゃんに罪はないから」と無償対応を求めるのは、果たして“正義”なのかどうか。出産する女性を守るべきだという思いに異論はないが、「人権」や「平等」といった言葉が独り歩きして、制度が無限に広がっていけば、今度は「ただ乗り」を許す仕組みになってしまう。その結果、制度を支えている多くの国民の気持ちが離れていくかもしれない。たしかに、こうしたケースにかかる医療費は、全体から見ればごくわずかかもしれない。それでも、「なんだか納得できない」と感じる人が多いのも現実だ。そもそも、この問題の根っこには、入国管理や外国人政策の不備があり、病院や自治体に全部対応を押しつけるのは違う。国がルールを整え、現場を支える仕組みをつくる必要がある。政府も今、法整備に向けて動き始め、海外の事例も調べているという。「困っている人を助けたい」――その気持ちは間違っていない。でも制度がきちんと回ってこそ、本当の意味で“優しさのある社会”は実現できるのではないか。いま必要なのは、感情だけに流されず、理念と現実のバランスをとった冷静な議論だ。
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