平均の錯誤2024年04月23日

知能検査のレポートを書いていていつも思うのは、平均値をどう理解するかということだ。確かに集団の中の個人の位置を確認するには集団の平均が意味を成す。いわゆる個人外差といわれるものだ。テストの偏差値をはじめ健康度を知るために身体のあらゆる数値は平均と比較されるし、賃金やGDPなど経済指標なども平均と比較される。知能指数も同じく全体の中でどの位置にあるか知るための指標だ。しかし、知能検査には個人内差という指標もある。知能は短期記憶、長期記憶といくつもの認知力によって形成されている。認知心理学のCHC理論では一般知能は8つの広範的能力とその下位に約70の領域に関する能力があるとされる。知能検査はたいていこの8つの広範能力以下を表示する。これらは下位の測定値の平均値だ。そして一般的に知能指数はこの8つ以下の平均値の平均値だ。人はこれを見て知能が高い低いと評価するわけだが、知能指数は個人の総合得点の全体の中の位置が分かっただけで、個別のことは表現していない。

日本の平均標高は370メートル程度だがこれで日本を表現したことにはならない。世界の陸地の平均標高は840mなので島国故に標高の低い国だという程度の情報しかない。ところが日本の中で平均標高が300mを超えるところは長野県だけだ。多くの人は東京30m大阪15m程度の低いところに棲んでいる。平均というのは対象個体を表現したことにはならないという視点が当たり前だが大事だ。大事なのはその下位の凸凹をどう見るかだ。検査をして総合指標やフルIQを見て分かったようなことを言ってはならない。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://so2.asablo.jp/blog/2024/04/23/9678315/tb

Google
www Blog