ETC障害2025年04月07日

ETC障害
4月6日未明、中日本高速道路は東京、神奈川、愛知など8都県にまたがる料金所でETCシステムの障害が発生したと発表した。影響は106か所に及び、約38時間にわたってETCが利用できない状態が続いた。7日には応急的な復旧が完了し、すべての料金所が再開されたという。混雑を緩和するため、一時的に精算を後回しにして通行を許可する対応がとられたが、通行料金は後日精算となり、利用者には公式サイト上での支払い案内がなされた。だが、これを「スムーズな対応」と受け取れる人は多くないだろう。障害の原因とされるのは、5日に実施されたETC深夜割引の見直しに伴うシステム改修作業だという。単なる“割引時間帯の変更”という、20年以上も運用されてきた制度におけるルールの一部修正で、システム全体が約2日間も機能不全に陥ったことには驚かされる。そもそもこの夜間割引は、2001年に導入された制度で、深夜帯の交通分散を目的としたものだった。対象時間は当初0時~4時、そこを走れば通行料が30%割引になる仕組みだ。今回の見直しでは、その時間帯を22時~5時へと拡大。しかし、これで果たして実効性はあるのか。というのも、割引時間を狙ってインターチェンジ付近の路肩などで不法駐車をして待機する長距離トラックの姿は以前から問題となっており、時間の前倒しでこの習慣がなくなるとは思えない。また、夜間の割引を最大限に活かすため、休憩も取らずに高速道路を走り続ける運送業者も少なくない。今回の改定により、割引時間が都合3時間延びたことで、安全面の懸念はむしろ増したのではないか。

そもそもETCは、時間と距離のデータを正確に記録できるシステムである。であれば、割引の条件に「適度な休憩」や「安全運転」を組み込むことも技術的には可能なはずだ。例えば、平均的な到達時間を超えた車両に対してのみ、深夜割引を適用するといった工夫も考えられる。今回のETC障害は、単なる技術的な不具合では済まされない。障害の最中にもかかわらず、「後日支払いを」という通知がなされる。遅延やトラブルの原因を作った運営側が、利用者に“迷惑料”どころか“請求”をするという構図には違和感がある。同日、ゆうちょ銀行の通信システムでも午前中に障害が発生し、送金に支障が出た。ETCにせよ金融ネットワークにせよ、今や社会インフラそのものであり、ひとたび止まれば全国規模で影響が出る。こうした状況下で、なぜ確実なバックアップ体制が整えられていないのか。高速道路会社もゆうちょ銀行も、もともとは道路公団や郵政公社といったお役所組織の流れをくむ会社だ。前例主義が根強く、危機管理や改革のスピードが鈍いのではと疑いたくもなる。システムは「人間が作ったものである以上、絶対はない」。そうはいっても、繰り返される不具合に、国民はいつまで“慣れ”を強いられなければならないのだろうか。今こそ、制度とシステムの両面で「安心して使える仕組み」への見直しが求められている。

BDの生産終了2025年03月27日

BDの生産終了
ブルーレイディスク(BD)市場は急速に縮小し、録画文化の終焉が迫っている。今年1月、ソニーグループがBDの生産終了を発表し、業界に大きな影響を与えた。背景には、動画配信サービスやクラウド保存の普及があり、手間のかかる光ディスクへの保存は敬遠される傾向にある。台湾のバーベイタムジャパンは生産継続を表明したものの、需要の減少は深刻で、BDやレコーダーの未来は不透明だ。録画機器の需要も減少しており、BDレコーダーの出荷台数はピーク時の15%程度まで落ち込んでいる。業界内ではさらなる撤退が懸念され、新製品の開発も抑制されている。一方で、動画配信では見られないコンテンツを保存したい「推し活」需要が一定の市場を維持しており、録画機器を重宝するユーザーも多い。BDやレコーダーが完全に消えるかは不明だが、「推し活」市場が最後の希望となっている。メーカーは現行製品の販売を継続しつつ、長期的な動向を注視する必要がある。録画文化の未来は、進化する消費者ニーズにどれだけ対応できるかにかかっている。光ディスク技術は、1980年代にアナログ映像・音声を記録するレーザーディスク(LD)から始まり進化を遂げてきた。1982年にはコンパクトディスク(CD)が登場し、音楽市場に革新をもたらした。その後、1995年にはDVDが映像記録媒体として普及し、4.7GBの容量を提供。2003年には高解像度映像に対応したブルーレイディスク(BD)が登場し、さらに大容量化が進んだ。

LDは昭和のカラオケスナックで使われ始め、当時はスナックのママが8トラックのカセットをガチャガチャと入れ替えていたが、ある日、大きな光ディスクを大事そうにプレーヤーに入れていたのを思い出す。映像が妙に艶めかしかったことが印象的だ。音楽CDの思い出といえば、MD(ミニディスク)に録音してお気に入りを作っていたが、再生汎用性の高いCD-Rに取って代わられ、MDはあっという間にお蔵入りした。平成に入るとMP3録音が主流となり、ディスクを持ち歩くこともなくなった。DVDは、レンタルビデオ店で映画を借りるのが流行した時代が最盛期だったが、これも10年ほどでネット配信に取って代わられた。パソコンはDVDやBDレコーダーが標準装備されているモデルを好んで購入していたが、最近はBDレコーダーを使う機会もなくなった。先日、隣人がBDを再生したいと言ってきたが、液晶テレビには留守録HDDしか接続されていなかった。しかし、プレイステーションがBD対応だったことを思い出し、試してみることに。作動音はするが映らない。原因はBDの裏表を逆に入れていたことだった。久しぶりに使うあまり、光ディスクの入れ方すら忘れていたのだ。光ディスクには、その変遷とともにたくさんの思い出が詰まっている。

万博チケットの購入手順2025年03月15日

万博チケットの購入手順
大阪・関西万博は混雑緩和を目的に予約制チケットを基本としていたが、前売り券の販売が目標の1,400万枚に届かず、3月12日時点で約820万枚と6割未満にとどまった。これを受け、開幕47日前に入場ゲート前で購入できる当日券の導入を決定。しかし、急な方針転換に「利用者目線の欠如」が指摘されている。当初の販売方式は、万博ID登録と入場日時予約を経てQRコードを取得する電子チケットが主流だったが、コンビニや旅行代理店での引き換えも可能だった。しかし、選択肢が多すぎて消費者の混乱を招き、前売り券購入のハードルが高くなった。また、前売り券のみの販売は、消費者に選択肢を与えない印象を与えた。さらに、混雑時に価格を上げ、閑散時に下げる「ダイナミックプライシング」の導入が有効だったとされる。券種も多すぎるため、3種類程度に絞る方が分かりやすかったと考えられる。また、万博の魅力が十分に伝わっておらず、事前予約の煩雑さが消費者の負担となった。実際、私も3カ月前にID登録をしたものの、いつどのパビリオンを選べばよいのか、混雑状況の見通しがつかず、未だにチケット購入に至っていない。ホームページの情報が少なく、広大な会場の回り方がイメージできない。AIを活用して調べても全容がつかめなかった。そのため、どの券種が自分に適しているのか判断できず、購入をためらっている。

先日、老人会の陶芸サークルの方々から「チケットをネットで購入できないので教えてほしい」と頼まれ付き合った。万博チケットの購入手順は公式サイトでまず万博IDを作成しなければならない。ネット予約に慣れている人には問題ないが、メールアドレスの入力経験すら少ない人には大仕事となる。仮登録後、本登録用のURLがメールで届くが、アドレスを打ち間違えると届かず、ここでつまずく人も多い。さらに、パスワード設定では「大文字・小文字・数字の組み合わせ」を求められるが、これがハードルとなり、正しいパスワードが作れず次の画面に進めない人もいる。ようやく登録しても、ログイン画面ではスマホの自動入力が使えず、パスワードの入力ミスが続くと一定時間ログインできなくなる。この登録段階で脱落する人も少なくない。やっとの思いで登録しチケットを購入しても次の手続きがある。来場日時を事前予約し、入場ゲートを選択。さらに、パビリオンやイベントは抽選制で、第1~5希望を選び、当選結果を確認する必要がある。抽選に外れた場合は、当日枠や予約不要エリアを利用する計画を立てなければならない。全ては混雑をできるだけ抑えようとする意図なのだが、利用者には伝わらない。登録に付き合って思ったのは、ネット予約に慣れていない人向けにはAI等の「リアルガイド」が必要だということだ。付き合った方にはお世話になったと恐縮され、お礼にビールまでいただいた。慣れたものには何でもないのだが、お礼をしなければと思うほど操作が困難に感じられたのだろう。万博の成功には、ホームページを含めた「利用者目線」の強化が欠かせないと痛感した。

ライバー刺殺事件2025年03月13日

ライバー刺殺事件
東京・高田馬場で動画配信中だった女性ライバーが刺殺された事件で、逮捕された高野健一容疑者は、ライブ配信を見て居場所を特定したと供述した。高野容疑者は4年前に動画配信を通じて被害者を知り、勤務先の飲食店に通うようになった。「生活費や携帯料金などで200万円以上を貸した」とも語っている。スマートフォンや専用アプリの普及により、誰でも手軽にライブ配信が可能になったが、今回の事件はその危険性を改めて浮き彫りにした。被害者は動画配信サービス「ふわっち」で「最上あい」として活動し、事件当日は「山手線徒歩1周」の企画を生配信していた。高野容疑者は前日に配信予告を確認し、事件当日の朝に栃木県から東京都へ移動していたという。ライブ配信はリアルタイムで視聴者とつながる特徴があり、YouTubeやTikTokなどでも利用され、投げ銭による収益化も進んでいる。専門家は、技術の進歩とマネタイズ(収益化)が普及を後押ししたと指摘し、配信者は自身の居場所が特定されないよう、背景の映り込みを防ぐなどリスク管理を徹底すべきだと警鐘を鳴らしている。

生配信中に殺害されるという衝撃的な事件だったが、同日夜に放送された波瑠主演のドラマ『アイシー~瞬間記憶捜査・柊班』(フジテレビ系)でも、同様のテーマが扱われていた。劇中では、ライブ配信者の女性が殺害され、「サッドハッター」と名乗る高額課金リスナーが捜査線上に浮上するというストーリーが展開され、今回の事件と酷似している。奇しくも、フジテレビは別の性被害疑惑によりスポンサーが離れていたため、ドラマを放送できたのではないかという見方もある。ドラマの中でも、ライブ配信サービスの危険性が指摘されていた。ライブ配信は「ライバーとの疑似恋愛を楽しむ場」として機能することがあり、高額課金リスナーの中には、配信者とのオフラインでの交流を求める者もいる。リスナーが恋愛感情を抱き、デートを条件に大金をつぎ込むケースもあるという。従来の接客業では、トラブルを防ぐために店側の管理体制が機能するが、ライブ配信にはそうした安全保障がない。人気ライバーには大勢のリスナーが群がり、多額の投げ銭を受け取ることで、これを生業とする者も増えている。その背景には、ライバーとリスナー双方の自己承認欲求を満たしたいという現代社会の孤独も関係しているのだろう。高野容疑者が貸した金については、裁判所が支払い命令を出していたとされるが、強制執行の申立ての有無や経緯は不明だ。愛情が憎しみに変わった末の犯行とも考えられるが、個人の責任の範疇に収めるには、あまりにも悲しい事件である。

ディープシークの「蒸留」2025年02月04日

ディープシークの「蒸留」
米オープンAIは30日、中国のAI開発企業「ディープシーク」が同社のAIモデルを不適切に利用した可能性があると発表し、米政府と連携して調査を進めている。ディープシークは「蒸留」という手法を用い、オープンAIのAIモデルの知識を転用して自社のAIを開発したとされる。蒸留は、大型AIモデルから小型モデルへ知識を移転する技術で、計算速度を向上させるが、正確性が低下する可能性がある。オープンAIは、利用規約で競合するAI開発への知識利用を禁止しており、アカウント停止などの措置を検討。米政府とも協力し、技術保護の対策を進める方針だ。欧米メディアによると、米AI政策担当者のデービッド・サックス氏は、数か月以内に蒸留防止策を進めると発表。次期商務長官のハワード・ラトニック氏も、米AI企業を保護する追加措置を示唆した。しかし、複数アカウントの利用などで対策を回避できる可能性があり、実効性は不透明。過度な規制はAI開発の停滞を招く恐れもあるという。なんだそういうことだったのかと合点がいった。

おなじみ中国の「パクリ」だったのだ。AIの蒸留技術は"Knowledge Distillation" と呼ばれこの技術自体は違法ではない。問題はどこから学習用のデータを入手するかだ。ディープシークが早かったのはChatGPTからこっそり学習データを入手しているとすれば話にならない。良い蒸留はAIの技術発展を促進するが、悪い蒸留は知的財産の侵害や倫理的に問題があり、正しい管理が求められる。とはいえ、国際条約も協定も都合が悪くなるとルールの方が悪いと盗人猛々しい姿を見せる権威国家にそんな信頼をする方が悪いということになる。騙されるものが悪いのだという彼らの口癖を思い出した。

ラーメン店の「パス」制度2025年02月02日

テーブルチェック
ラーメン店などで「パス」制度を導入する動きが広がっている。行列解消を目的とし、料金は400円前後が一般的だ。東京・銀座の人気店「銀座八五」では、整理券の配布や名前記入制を試みたものの、最大6時間待ちになることもあった。そこで、2023年11月より、午前11時から正午までは並び順で入店可能とし、正午以降は30分ごとに500円の「パス」購入者限定で入店できる方式を導入した。これにより、リピーター管理や仕込みの効率化にもつながるという。この「パス」は、飲食店予約サービス「テーブルチェック」が提供し、アプリやウェブサイトで購入可能。18言語に対応しており、海外からも利用できる。試験提供開始から約1年で80店舗が導入し、累計20万人が利用した。パスの料金は390円以上で自由に設定可能だが、飲食代以外の負担を懸念し、導入に慎重な店もある。担当者は「商品の価格だけでなく、1席の価値にも注目してほしい」と話している。福島の朝ラーメンが人気だと宿泊先のオーナーに聞き、朝早く訪れたことがある。人気店はいくつかあるが、最も駐車場の広い店を選んだ。しかし、朝10時頃の到着にもかかわらず、1時間以上の待ち時間が発生していた。整理券もなく、ひたすら待ち続けた結果、入店できたのは正午前。朝ラーを目当てに行ったはずが、結局昼ラーになってしまった。人気店に行く際は行列を覚悟しているものの、「そこまでして食べたいか」と考えたり、「並ぶのも楽しみの一つかもしれない」と待っている間に自問自答したことを思い出した。

「パス」制度導入店に対して不満はない。例えば、夜に大勢で食事に行く際には、スマホで予約を入れれば、客は並ぶ必要がなく、店側も準備ができるため、不都合はない。しかし、パス制度には追加料金がかかるため、実質的な値上げではないかという意見もある。おそらく、客だけでなく店側にも登録料金が発生し、従来の予約制度と大きな違いはない。飲食店予約システムにも利用料がかかるため、その分が価格に上乗せされているだけだろう。今回のパス制度の特徴は、低価格帯のファストフード店で導入された点にある。しかし、旅行者にとっては、時間を指定できるなら料金を支払ってでも名物店を利用したいと考えるケースも多いはずだ。そこに目をつけたテーブルチェック社は、2011年創業の日本のベンチャー企業であり、このシステムは1年前に考案された。ぐるなびやホットペッパーなどのグルメサイトの間隙をついた新しいサービスの形となるのだろう。

生成AIディープシーク2025年01月28日

DeepSeek
中国企業ディープシーク(DeepSeek)のAIチャットボットがリリースされ、アップルのアプリストアで最もダウンロードされた無料アプリとなった。このアプリは、低コストながら高性能なAIを提供し、アメリカの競合企業を圧倒する優位性を示している。開発費はわずか600万ドルで、アメリカのAI企業が費やす数十億ドルと比較して極めて低コストだ。この結果、AI業界における中国企業の台頭が大きな注目を集めている。ディープシークは2023年に中国杭州で設立された企業で、エヌヴィディア製の旧型チップを備蓄し、安価なチップを組み合わせることで効率的な開発を実現した。アプリはチャットGPTと同等の性能を持ち、効率的な生活支援を提供する一方、政治的に敏感な質問には回答しない設計が施されている。このリリースを受けて、ナスダック総合指数が3%以上下落。特にエヌヴィディアは株価が急落し、時価総額が約6000億ドル減少した。専門家は、ディープシークの成功が中国のソフトウェアの独創性を示すものであり、アメリカ企業が高性能ハードウェアへの依存を見直す契機になると評価している。トランプ大統領はこの動きをアメリカへの警鐘としながらも、競争の中で技術コストの低下がもたらす利点を強調したという。実際に試してみると、時事問題以外の分野では、チャットGPTと遜色ない結果を出しており、回答もコパイロットのように端折らず、丁寧な印象を受けた。

なお、このブログも生成AIを活用して情報を要約し、最終稿をAIで校正して発信している。これまで使用したAIには、グーグルのジェミニ、マイクロソフトのコパイロット、オープンAIのChatGPTだが、正確な情報と細かな対応ではChatGPTが優れている感触がある。一方、ディープシークは、アメリカ製AIの開発費の数パーセントで同等の性能を実現しており、その点は画期的だ。確かにこのブログの校正にも役立ち、原文に沿った滑らかでまとまりのある文章を生成する。しかし、時事問題に関しては的外れな情報を提示したり、婉曲な回答になることが多い。これはシステムの問題というより、情報の入出力に何らかのフィルターがかけられている印象を受ける。中国発のAIであるため、こうした制限はやむを得ない部分があるかもしれないが、現状では時事問題において十分な使い物にならない点が残念だ。

FBファクトチェックを廃止2025年01月08日

FBファクトチェックを廃止
米メタ社は、SNSのフェイスブックやインスタグラムにおいて行われていた第三者による投稿内容のファクトチェックを廃止すると発表した。ザッカーバーグCEOは、検閲が行き過ぎたことを理由に表現の自由の回復に注力すると説明し、利用者同士で投稿内容を指摘する仕組みである「コミュニティーノート」を導入する方針を示した。この新たな措置は、まずアメリカ国内で実施される予定だ。メタは2016年から偽情報対策としてファクトチェックを導入してきたが、2021年の連邦議会襲撃事件を受けてトランプ氏のアカウントを停止するなど対立があった。一方で、大統領選挙後にはトランプ氏の大統領就任式関連基金に寄付を行い、関係改善を図ってきた。アメリカのメディアは、今回の決定がトランプ氏の就任を見据えた動きであると報じた。4年前の米国大統領選を契機に大手SNSが勝手にユーザーアカウントを閉鎖する事態が相次いだ。その後、閉鎖や警告は選挙関連だけではなく人種問題やパンデミック関連にまで及び、いわゆる保守系のインフルエンサーやその支持者の発言がSNSから追い出される事態が相次いだ。

巨大化したフェイスブック、ツイッター(現X)、ユーチューブは万人に影響を与えるが、一民間会社に万人の表現の自由を制限する権限はないと批判する意見と、一民間会社である以上、適度な規制はユーザーをつなぎとめるための経営戦略の一環だとする意見が対立してきた。しびれを切らしたIT長者イーロン・マスクがツイッター社を買収し、役員を解雇して行き過ぎた規制に歯止めをかけたのは記憶に新しい。今回のメタ社の対応は「長いものに巻かれろ」式であるかもしれないが、Xで導入されている「コミュニティーノート」に切り替えるという判断は妥当だ。言論には言論で対抗するのが筋だからだ。確かに、嘘が喧伝され、大衆が誘導されることで不要な対立が生じるのは由々しき事態である。しかし、大手メディアもこれまで嘘や「報道しない自由」、さらには「切り取り」を駆使して大衆を誘導してきた経緯がある。SNSは嘘を流す場となり得る一方で、メディアや権力者の嘘を暴く手段ともなる。これは、いわば情報流通の民主主義革命と言えるだろう。ただし、情報流通が大衆の手に渡ったとしても、それが公平で安全な社会を保障するかどうかは別問題である。SNSが生み出した「アラブの春」や「雨傘運動」が暴力の前に沈んでいった事例が示す通りだ。それでも、表現の自由が民主主義の砦であることは変わらない。自社規制で最後に残ったのはグーグル社のユーチューブである。「コロナ」「ワクチン」への批判発言等がAIで検索されると警告や閉鎖されるのでユーチューバの中では禁句だと言われる。また、通告制度を用いて気に入らない番組を閉鎖に持ち込む仕組みも公平なものとは言えず閉鎖の経過や理由すら示されない。中国共産党の反党分子探しや公安のスパイ探しのようで気味が悪い。

年賀状2025年01月02日

年賀状
新宿郵便局で年賀状配達の出発式が行われた。明治時代の郵便制度開始当時の制服を身に着けた局員が和太鼓の音とともに登場し、「出発!」の掛け声で街へ繰り出した。料金の値上げや配達数減少が見込まれる中でも、新春の挨拶を手にした人々には笑顔が見られた。年賀はがきの料金は、郵便料金の引き上げに伴い、従来の63円から85円に値上げされた。日本郵便によると、メールやSNSの普及により年賀状の利用が減少しており、今年元日に全国で配達される年賀状の速報値は約4億9100万通と、前年より34%ほど減少する見込みという。多い時には200通を超える年賀状をやり取りしていたが、退職を機に断捨離の一環で年賀状じまいをお知らせして5年が経過した。今年元旦に届いた年賀状は十数通だった。届いた年賀状には返信をしていたが、やっとここまで減ったという感がある。

社会全体が年賀状の値上げで減少した向きもあるが、SNSの浸透で付き合いの浅い方にはグループLINEで付き合いの深い方には個別LINEのやり取りで十分だということだろう。大晦日に「良いお年を」スタンプを送るか元旦に「あけおめ」スタンプを送るのが定着した。付き合いの古い人とは久しぶりにメッセージのやり取りも再開する。確かにはがきは現物を手にするので親密度も高いが、20年程前からは「年賀状ソフト」でプリントアウトしたものに短いメッセージを手書きするだけのもがほとんどになっていた。お互いにデジタルで作成したものをわざわざアナログに変換して時間をかけて送りあうことに意味を見出せなくなったということもある。それでも届いた手紙に返事を書くのは楽しみでもある。

デジタル脳クライシス2024年12月20日

デジタル脳クライシス
教育のデジタル化が進む一方、手書きや紙媒体の重要性を指摘する声が上がっている。東京大学の酒井邦嘉教授は、AIやデジタル機器に過度に依存することで思考力や創造力が低下する危険性を警告。教育現場では、便利さを追求する価値観が学びの本質を損なうと述べている。デジタル機器への依存は、大学生にも広がり、本を読まず、自分で考える機会を放棄する傾向があるという。家庭教育では、知識の詰め込みよりも子供の好奇心や創造力を育む環境作りが大切とされる。スマートフォンやAIの使用制限を提案し、紙とペンを使った学びを推奨。特に手書きの習慣は情報整理や記憶定着に役立ち、小学生期の脳の成長に不可欠だとする。また、デジタル表示よりも紙の文章のほうが理解や記憶に優れることを強調。キーボードより手書きが思考力を高めると指摘する。教育における本質的な学びを重視し、人間らしい能力の維持には、継続的な鍛錬が必要と述べる。東大ではかたや中邑教授らがデジタル教育推進で読み書き障害をサポートするグループが存在し、もう一方ではこのようにアナログ教育回帰を言う教授もいる。言語脳科学がこの方の専門とあるがそれならもう少し高次脳機能障害やディスレクシアのことも配慮してほしいと思う。

一般論としては、発達期にデジタルデバイスが子どもに悪影響を与える場合があるのは素人でも想像できる。しかし、素人でも想像できそうなことには落とし穴がある。だからこそ専門家は注意して例外があることに触れる必要がある。読むことや書くことが困難な子どもがいるのに、板書をノートに写すことが学校教育では発達上必然だと信じて疑わない教師や親がどれだけ多いか彼は知りもしないのだろう。デバイスが文章を読み上げ、音声を文字に変えてくれることで、子ども本来の創造性を引き出すテクノロジーが、子どもの発達にデジタルは良くないという理由で教室に持ち込めない悲劇が起こる。紙の方が読みやすいというのは文字が読める人の感想であり、読めない人でデバイス読み上げを利用する人は逆の感想を持つ。多様性社会ではデジタルデバイスが「違い」をつなぐ懸け橋にもなる。この書物が「違い」を知らぬ教育者に誤解されぬよう願うばかりだ。
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