生きる LIVING2024年05月07日

生きる LIVINGをAmazonで観た。黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクした映画だ。2023年度のアカデミーにノミネートされた作品なので、またぞろアカデミーに釣られて観た。良い。この年のアカデミー賞は「エブエブ」でがっかりさせられたが、こちらの方がはるかに良い。脚本が良ければ和製だろうが洋物だろうが感動する。1952年作の黒澤作品は見たことがなかったので、先入観なく堪能することができた。回想シーンが多い映画は脚本の腕がないと失敗すると「オッペンハイマー」で酷評したが、全く違和感なく楽しむことができた。リメイクの石黒脚本ではあるが黒澤らの脚本の完成度が高いことに納得させられた。原作は140分と長いのだがリメイクは90分と短いのも脚本の良さを引き出している。石黒の脚本はハッピーエンドをほのめかして締めくくられる。役場をやめた若い女性官吏がキュートに描かれたのも良い。役人が縦割り支配で厄介なことには手を出さず、市民をたらいまわしする今も変わらぬ役場の現状を見事に描いていた。

原作も翌日に観た。原作は回想シーンがお通夜に集まった職員の酒盛り場面に挟み込むのでややくたびれる。リメイクの方はイギリスの田園地帯を走る汽車の中で職員たちが回想している。こちらの方がしっとりしていて美しい。主人公を最後に見たという警察官の回想場面もリメイクの方がはるかに感動的に描かれている。東宝名画座14日間の無料体験を登録したので、しばらく黒澤作品を観ようと思う。

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