還付通知書 ― 2026年08月01日

マイナポータル自動口座振り込み申請
ある日、役所から封筒が届いた。税金の通知といえば、たいてい「払ってください」である。ところが今回は違った。開けると「還付通知書」。返してくれるらしい。おや、ずいぶん気前がいいではないかと思って金額を見ると、400円。思わず桁を見直したが、やはり400円である。コンビニのコーヒーなら2杯ほど。その400円を返すために、役場は通知書を印刷し、封筒に入れ、郵送する。さらに返送された申請書を職員が確認し、振込処理を行う。自治体によって差はあるが、還付1件あたりの事務費は数百円規模になる例もあるという。400円を返すために数百円を使う。何とも不思議な仕事である。

住民の側も決して楽ではない。高齢者なら、まず通帳を探すところから始まる。「あれはどこへしまったかな」と家中を歩き回り、ようやく見つけたら、今度は老眼鏡を探す。口座番号を確認し、必要なら返信の手続きをする。真夏なら炎天下を郵便ポストまで歩くことにもなる。400円を受け取るために汗と時間を使う。金額は軽いのに、そこへたどり着くまでの手間は妙に重い。還付というより、小さな障害物競走のようである。

今回、町では税額更正に伴い、住民税課税者に少額の還付が発生する。総額はいくらになるのだろうか。一方で、その還付事務にも1件あたり数百円規模の経費が発生し、還付人数分だけ積み重なる。役場の職員が悪いわけではない。法令どおり通知を作成し、審査し、支払い手続きを進めているだけである。しかし、同じ作業を何度も繰り返せば、人件費も郵送費も積み重なる。紙は静かに増え続け、人の時間だけが少しずつ削られていく。しかも全国ほとんどの自治体でこの無駄が積み上げられている。

大阪市などが進めるマイナポータル連携の公金受取口座を使えば、還付額の計算や法定確認こそ残るものの、口座確認や入力作業といった事務負担は大きく減らせる。紙ベースの給付事務を電子化することで、定型的な作業がごっそり削れることは、すでに多くの自治体が実証している。公金受取口座を利用すれば、口座情報の記入や通帳の写しの添付といった“昭和の手続き”も省略できる。

そもそも給付DXを実現している自治体であれば、還付DXができない理由はない。給付と還付は小規模自治体では同じ職員が同じ机で同じシステムを使って処理しているのだから、還付だけが特別に複雑という説明は成り立たない。希望しない住民には紙ベースの作業が残るなど制度上の制約はあるにせよ、「前からこうしている」だけで紙中心の運用を続けるのは、住民にも職員にも優しい仕組みとは言い難い。

400円という金額は小さい。しかし、この400円騒動は、日本の行政が抱える問題をよく映している。1件では取るに足らない非効率も、何万件、何百万件と積み重なれば、失われる税金も時間も決して小さくない。行政改革とは、大きな制度を作り替えることだけではない。400円を返すために数百円規模の事務費をかける。その当たり前を一度立ち止まって見直すことも、立派な改革だと思う。そして今日、役所からご丁寧に支払通知書「振込400円」が郵送で届いていた。

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