宙わたる教室2024年11月13日

宙わたる教室
小説『宙わたる教室』が、ドラマで放送されている。年齢や事情が異なる生徒たちが集う大阪の定時制高校の科学部が、2017年に「日本地球惑星科学連合大会」で優秀賞を受賞し、偶然「はやぶさ2」の基礎実験に関わるまでに発展した実話に基づいている。ドラマは、東京・新宿の定時制高校が舞台。年齢も背景も異なる生徒たちが科学部を作る。21歳でディスレクシアに気づかず運転免許取得のために漢字を覚えたくて通う不良の岳人、外国人ハーフで飲食店の営業を家族で支えながら学ぶ43歳のアンジェラ、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける16歳の佳純、貧困で高校に通えなかった過去を持つ76歳の省造。彼らのもとに謎めいた理科教師・藤竹叶が赴任し、指導のもと「火星のクレーター」再現実験を通して学会発表を目指すことになる。しかし、彼らはそれぞれが抱える障害や家庭問題、断ち切れない人間関係など、多くの困難に直面する。藤竹の導きにより、生徒たちは支え合い、自分の壁を越えていく。

藤竹叶は34才独身。27才で博士号を取得。発表した科学の研究論文は世界的な学術誌に掲載され、研究者としての将来を有望視されていた。しかし突如として定時制高校の教師になることを決意。仲間からは"終わった研究者"と囁かれる。赴任の目的は謎のままドラマは展開するが、優れた洞察力と実験を駆使し、生徒や同僚教師を変えていく。この不思議な教師役の窪田正孝はハマり役だ。ドラマは、学園ドラマの定番である「型破りな教師が問題児の集まるクラスを変えていく」という定型のようだが視点が違う。主人公の藤竹(窪田正孝)が、生徒たちが抱える問題に学びの光を灯して昇華させていくところだ。『宙わたる教室』は「学ぶこと」からぶれない。学園ドラマは生徒間の関係性に焦点が当てられ、生徒が何を学んでいたかは二の次となることが多い。本作では学ぶ喜びが学べない悲しみをコントラストにして描かれている。学校は学びの場であり、それを通じて生徒同士や教師との交流が深まることに美しさがある。学ぶことを大切にしようとする姿勢が我々に静かな感動を与えてくれるのだと思う。
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