統計局長官の即時更迭 ― 2025年08月02日
米国労働統計局(BLS)が発表した失業率は、前月の4.3%から5.7%へと急上昇した。1か月で1.4ポイントの変動は異例である。これを受け、トランプ大統領はマッケンターファー長官を即時更迭した。「政権に不利な数字を出したからの解任」と批判されたが、一方で失業率の急変には統計手法や整合性に疑問があり、トランプの指摘もあながち正当性を欠くものではない。通常、失業率がこれほど動けば、就業者数や求人・離職率など他の指標も連動して変化する。しかし今回は、家計調査での就業者数減少は1万人台の微減、企業の事業所調査では非農業部門の雇用者数は5万人超増加と、採用鈍化の兆候はない。求人数も微増し、新規失業保険申請件数も安定している。つまり、他指標は堅調なのに失業率だけが突出して悪化しており、前月の4.3%という好数値からの急変と合わせても不自然だ。こうした状況は、統計の設計や集計方法の見直しによる「見かけ上の悪化」が起きている可能性を示唆する。実際、BLSは近年「不完全雇用層」や「働きたいが職探しをしていない人」の扱いを見直す議論を続けており、今回の数値に影響した恐れがある。しかし当局からの説明はなく、「説明責任の欠如」が信頼を損なっている。
同様の問題は日本の統計にも見られる。農水省のコメ需給見通しは実際の消費より30万トン以上過少に推計されていた。制度上は「専門モデルによる推計」とされるが、需要過小評価の結果、市場での供給逼迫感が強まり、ブランド米の価格高騰を招いた。政府の備蓄放出も後手に回り、需給調整を難しくした。背景には政治的圧力よりも、組織の「現状維持バイアス」や政策目標との整合性への配慮など、制度で捕えきれない内部の力学が作用した。
このように、統計は制度的に独立し公正な手続きで作られても、設問設計や分類方針、組織文化といった「見えざる要素」が数値をゆるやかに歪めることがある。だからこそ、トランプ政権による長官解任を単なる「政治介入」と決めつけるのは安易だ。数字の急変に合理的説明や裏付けがないまま、「政権批判の道具」としてのみ使う報道の姿勢にも問題がある。数字を「信仰」し制度運用の限界を見落とせば、民主主義の根幹が揺らぐ恐れがある。制度を守るとは形式を守ることだけでなく、数字が現実を正しく映し、運用が信頼に足るかを見極める視点を持つことだ。表層的な独立性にのみ依拠して「正しさ」を語ることのほうが、むしろ危うい。
同様の問題は日本の統計にも見られる。農水省のコメ需給見通しは実際の消費より30万トン以上過少に推計されていた。制度上は「専門モデルによる推計」とされるが、需要過小評価の結果、市場での供給逼迫感が強まり、ブランド米の価格高騰を招いた。政府の備蓄放出も後手に回り、需給調整を難しくした。背景には政治的圧力よりも、組織の「現状維持バイアス」や政策目標との整合性への配慮など、制度で捕えきれない内部の力学が作用した。
このように、統計は制度的に独立し公正な手続きで作られても、設問設計や分類方針、組織文化といった「見えざる要素」が数値をゆるやかに歪めることがある。だからこそ、トランプ政権による長官解任を単なる「政治介入」と決めつけるのは安易だ。数字の急変に合理的説明や裏付けがないまま、「政権批判の道具」としてのみ使う報道の姿勢にも問題がある。数字を「信仰」し制度運用の限界を見落とせば、民主主義の根幹が揺らぐ恐れがある。制度を守るとは形式を守ることだけでなく、数字が現実を正しく映し、運用が信頼に足るかを見極める視点を持つことだ。表層的な独立性にのみ依拠して「正しさ」を語ることのほうが、むしろ危うい。