食料品消費税0政策の比較2026年01月25日

食料品消費税0政策の比較
読売新聞のインタビューで、高市首相は食料品の消費税率ゼロについて「2年間の時限措置であれば、特例公債に頼らず実施可能」との認識を示した。給付付き税額控除の導入までの経過措置と位置づけ、減税を恒久政策ではなく制度移行の一段階として設計する考えを明らかにした。永田町で繰り広げられる減税論争は、理念の対立というより、政策の成熟度を測る試金石である。高市政権の構想と中道改革連合の政策を並べれば、その差は思想ではなく、準備の深さにあることが見えてくる。

高市構想の特徴は、減税の出口を最初から設計に組み込んでいる点にある。食料品の消費税ゼロは、給付付き税額控除という恒久制度への橋渡しにすぎない。減税は目的ではなく手段であり、制度移行のプロセスとして位置づけられている。この発想は、日本の政治ではむしろ例外的だ。財源論は、より具体的である。食料品にかかる消費税収は年間約5兆円とされる。ゼロ税率を2年間実施すれば、必要財源は単純計算で約10兆円に達する。高市氏が挙げる財源は、税外収入、租税特別措置の見直し、補助金の整理などだが、現実的に積み上げられる規模は年間2〜3兆円程度にとどまると見られる。残る不足分をどう埋めるかが最大の焦点となる。

ここで、高市構想の現実主義が浮かび上がる。租税特別措置や補助金は、これまで「削れない制度」として温存されてきた。しかし、高市案は減税を契機にこれらを見直す方向へと動かすしたたかな意図も含んでいると考えられる。さらに、不足分を税収の自然増で補うという見立ても、単なる願望ではない。来年度のGDP成長率については複数の機関が予測を示しており、名目成長の継続は既に既定路線に近い。景気拡大に伴う税収増を前提に置く発想は、政治的な楽観論というより、マクロ経済の延長線上にある合理的な計算に近い。

これに対し、中道改革連合が掲げる政府系ファンド構想は、設計の甘さを象徴している。外為特別会計は為替安定を目的とする制度であり、株式市場を操作する仕組みではない。しかし、その運用益が国庫に納付され、国債償還に使われているのは事実だ。外為特会は米国債運用を中心に、年3〜5%程度の比較的安定した利回りを確保してきた。これに対し、政府系ファンドが期待できる超過収益は0.5〜1%程度にすぎず、しかも価格変動リスクを伴う。確実に得られる収益を手放し、不確実なリスクを取る政策が、本当に必要なのかという問いは避けられない。

このファンド構想に限らず、中道改革連合の政策全体は、理念は立派でも制度設計が粗い。減税の期限、代替制度への移行条件、財源の優先順位――いずれも明確ではなく、「生活支援」という言葉だけが先行する。数字の裏付けを欠いた政策は、どうしてもスローガンに近づく。

減税は一度始めればやめられない、という批判もある。しかし、その論理を突き詰めれば、あらゆる政策は実行不能になる。給付付き税額控除の完成を終了条件とするなら、減税は制度として終わらせることができる。問題は政治的意思ではなく、設計の精度である。

結局のところ、今回の論争の本質は減税の是非ではない。政策をどこまで技術として構築できているか、その差である。高市構想は、減税をスローガンではなく制度として扱おうとする姿勢を示した。一方、中道改革連合の政策は、理念の正しさに比して、設計の緻密さが決定的に不足している。政治に必要なのは正しさだけではない。用意周到な政策設計である。減税論争が露わにしたのは、その冷酷な現実だった。

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