セクハラ福井県政2026年01月09日

セクハラ福井県政
福井県が公表した特別調査委員会の報告書は、県政の深部に長年埋め込まれていた「静かな爆弾」を白日の下にさらした。前知事による複数の女性職員への不適切行為が、約20年という異様な長期間にわたり続いていたことを、行政自らが公式に認定したのである。しかも、この爆弾が露出したタイミングは偶然ではない。知事失職を受け、県政はこれから知事選に入ろうとしている。有権者が「次」を選ぼうとする直前、過去の闇が一気に照射された。

注目すべきは調査のスピードと踏み込みだ。調査期間はわずか1か月。それでも被害者4名の詳細な証言が集められ、前知事が送信した約1000件に及ぶメッセージが精査された。そこには、「キスしちゃう」「エッチなことは好き?」といった、業務とは無縁の露骨な性的表現が並ぶ。さらに、身体的接触行為も事実として明確に認定された。

調査委員会は一線を越えた。これらの行為を単なるセクハラにとどめず、ストーカー規制法や不同意わいせつ罪に抵触する可能性にまで言及。前知事が一部を否定した点については「信用できない」と断じ、事実上、反論の余地を封じた。地方行政の内部調査としては、異例の厳しさである。

会見で副知事は、「圧倒的に優位な地位にある知事からの行為で、被害者は長期間にわたり精神的苦痛を受けた。許されるものではない」と述べ、県として謝罪した。だが、この言葉はこれから始まる知事選で、重い問いとして跳ね返る。被害者が耐え続けたのは、前知事個人の言動だけではない。声を上げた瞬間に何を失うか分からない――その組織の空気そのものだ。

なぜ20年以上も問題は表に出なかったのか。短期間の調査で事実が一気に噴出したことは、「証拠がなかった」のではなく、「語らせない環境」が維持されていたことを物語る。幹部がトップの異常な言動をまったく把握していなかったと考える方が不自然だ。人事権が首長に集中する自治体では、幹部は不祥事に触れにくく、「見て見ぬふり」が慣行となる。これは管理能力の問題ではない。県政を包んできた組織文化そのものの問題である。

さらに深刻なのは、県議会の沈黙だ。行政が調査したからといって、議会が沈黙してよい理由にはならない。「行政が調べたのだから、議会は動かない」という構造が成立しているとすれば、それは県政の自律的統治がすでに崩壊していることを意味する。議会は行政の後追い機関ではなく、独立した監視装置のはずだからだ。

議会の沈黙は二つの可能性を示す。何も把握していなかったのか、把握しながら沈黙していたのか。どちらであっても、県政のガバナンスは深刻に損なわれていた。そしてもし今回も議会が動かないなら、次の知事は「何が起きても止められない県政」を引き継ぐことになる。

これから始まる知事選は、単なる後任選びではない。問われるのは、この沈黙の構造と決別できるのかという一点だ。その健全性を測る最大の試金石は、候補者の言葉ではない。県議会が自ら動くかどうかである。今回の問題は、前知事個人の資質に矮小化できない。行政と議会、その双方に横たわる沈黙の構造を可視化した事件である。これを「過去の不祥事」として処理すれば、同じ構造は必ず再生産される。選ばれるべきなのは、次の知事ではない。沈黙を断ち切る県政そのものだ。

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