コメもナフサも気分報道 ― 2026年07月08日
米穀安定供給確保支援機構が6日に公表した向こう3カ月の需給動向DIは19であった。節目の50を9カ月も下回り続けているというので、新聞は「値下がり傾向」「在庫高水準で落ち着く見通し」と、夕立が去った縁側で麦茶でもすするような、のどかな顔つきで書いている。だが、このDIなるもの、要するに市場関係者の胸の内を聞き書きした景況感指数にすぎず、実際の需給を測る統計ではない。気分は風向きのように変わるが、田んぼのぬかるみまでは教えてくれない。それなのに新聞は、店頭の特売やこの気分指数だけを見て「市場は落ち着いた」と言い切る。スーパーの値札だけ眺めて、米蔵の奥行きまで分かった気になるのは、いささか早とちりではないか。
いまのコメ市場を理解する鍵は「先食い」にある。本来なら秋から流通する当年産米が、前年産の不足を埋めるため夏の端境期から市場へ流れ込んでいる。帳簿の上では辻褄が合っていても、実際には翌年の在庫を前倒しで使いながら市場を回している。来年の薪まで今年の冬に燃やしているようなものだ。火は消えない。しかし薪小屋だけは、誰にも気付かれぬまま痩せていく。この構造を見ずに「値札が下がったから需給が緩んだ」と言うのは軽率である。
農林水産省の「基本指針」や備蓄米放出の資料を時系列で読むと、市場にはなお20万トン前後の需給ギャップが残る。政府は失策を認めたがらず会見ではまず言わない。報道も深掘りはせず発表分しか流さない。しかし数字を積み上げれば不足は明らかだ。市場を見るとは一次資料を丹念に読み、数字の縫い目を確かめる作業である。気分指数よりも、前年産から当年産への流れを読む方が地に足がついている。少なくとも報道は川上と川下の矛盾を取材すべきだろう。
この見方は堂島コメ平均の先物価格とも整合する。8月までは不足を映して3万円を超えるが、10月限では2万2千円前後まで下がる。その後は2万2千円前後で半年近く高止まりする。もし需給が緩むなら平年並みの2万円前後まで下がってよいはずだが、市場はそう読んでいない。新米で一息ついても引き締まりは残ると見ているのである。気味が悪いのは、10月以降、需給のギャップを織り込んでいるはずなのに緩やかに下降線が続くことだ。これまでの高値では売れないと踏んでいるのだろう。だがそれで生産意欲が削られ来年の供給が痩せれば、また店頭からコメが消える悪夢がよぎる。
店頭価格が下がっても需給が緩んだとは限らない。卸や小売が高値期の在庫を放出しているだけかもしれない。店頭価格は流通の結果であって需給そのものではない。ナフサ騒動でも川下だけを見てナフサが6月で供給不足に陥ると騒ぎ、原油先物市場の動きを見なかった。日本の報道はどうも生産や輸入の実態より店頭のPOPを信じる癖がある。市場は気分では動かない。動かすのは現実の需給である。見るべきはDIでも特売でもなく、「先食い」で痩せた在庫と、それを静かに織り込む先物市場なのである。
いまのコメ市場を理解する鍵は「先食い」にある。本来なら秋から流通する当年産米が、前年産の不足を埋めるため夏の端境期から市場へ流れ込んでいる。帳簿の上では辻褄が合っていても、実際には翌年の在庫を前倒しで使いながら市場を回している。来年の薪まで今年の冬に燃やしているようなものだ。火は消えない。しかし薪小屋だけは、誰にも気付かれぬまま痩せていく。この構造を見ずに「値札が下がったから需給が緩んだ」と言うのは軽率である。
農林水産省の「基本指針」や備蓄米放出の資料を時系列で読むと、市場にはなお20万トン前後の需給ギャップが残る。政府は失策を認めたがらず会見ではまず言わない。報道も深掘りはせず発表分しか流さない。しかし数字を積み上げれば不足は明らかだ。市場を見るとは一次資料を丹念に読み、数字の縫い目を確かめる作業である。気分指数よりも、前年産から当年産への流れを読む方が地に足がついている。少なくとも報道は川上と川下の矛盾を取材すべきだろう。
この見方は堂島コメ平均の先物価格とも整合する。8月までは不足を映して3万円を超えるが、10月限では2万2千円前後まで下がる。その後は2万2千円前後で半年近く高止まりする。もし需給が緩むなら平年並みの2万円前後まで下がってよいはずだが、市場はそう読んでいない。新米で一息ついても引き締まりは残ると見ているのである。気味が悪いのは、10月以降、需給のギャップを織り込んでいるはずなのに緩やかに下降線が続くことだ。これまでの高値では売れないと踏んでいるのだろう。だがそれで生産意欲が削られ来年の供給が痩せれば、また店頭からコメが消える悪夢がよぎる。
店頭価格が下がっても需給が緩んだとは限らない。卸や小売が高値期の在庫を放出しているだけかもしれない。店頭価格は流通の結果であって需給そのものではない。ナフサ騒動でも川下だけを見てナフサが6月で供給不足に陥ると騒ぎ、原油先物市場の動きを見なかった。日本の報道はどうも生産や輸入の実態より店頭のPOPを信じる癖がある。市場は気分では動かない。動かすのは現実の需給である。見るべきはDIでも特売でもなく、「先食い」で痩せた在庫と、それを静かに織り込む先物市場なのである。