議会行政の懇親会廃止2025年03月24日

同調圧力を用いた懇親会
長野県山ノ内町は、町議会3月定例会後に毎年開催してきた町幹部と町議の懇親会を本年度から廃止した。懇親会は町側が新年度予算案を可決した議会側に感謝し、議会側が退職する町幹部職員を慰労する目的で長年続いてきた。しかし、町職員にとっては勤務時間外に自費で参加する半ば公務のような負担が生じており、「時代に合わない慣例」として見直しが求められていた。懇親会は3月の定例会に加え、議会の決算認定後の9月定例会後にも町内の温泉旅館で開催されていた。町長や課長級職員、町議が参加し、1人あたり5千円から6千円を自己負担していた。参加は任意とはいえ、事実上「全員出席が原則」とされ、負担に感じる職員も少なくなかった。町長はこうした背景から「懇親会を否定するわけではないが、働き方改革が進む中、慣例だからといって続けるのはいかがなものか」と述べ、議会側に中止を提案した。町議会議長は「町主催のため開催の判断は町に委ねるしかないが、町議の中には率直に話せる場がなくなることを惜しむ声もある」とコメントした。廃止の趣旨は働き方改革だが、石破首相の新人議員懇親会での商品券渡しの問題に便乗した廃止かもしれない。行政と議会には適度な緊張関係が必要だ。たとえ自腹であっても、公務外に仕事の関係性を持ち込む必要はない。また、その関係性は「センセイ」や「与党」が優越的なので対等ではない。その優越的な関係性で半ば強制となる懇親会を廃止した町長の判断は適切だったと思う。

飲み会は本来の懇親の意味では嫌いではないが、公務の上下関係が丸出しになるような懇親会は好まない。昔は何度か抵抗してきたが、同調圧力に負けて諦めた苦い記憶がある。こうした懇親会は支配と服従の下心が透けて見えてしまう。もちろん、参加して話してみれば人それぞれの人となりが見えて、その後の公務がスムーズになるという意見は理解できなくもない。しかし、結局は自分の仕事のために有益なのだから気にするなという発想には馴染めない。一堂に会する懇親会をなくすと、個別の誘い合いが横行したり、招待が不公平だと言われたりしてかえって面倒だというのは強者の理屈だ。私的な時間に自ら懇親会を開催し、気に入った人を呼ぶのは一向に問題がない。その際の経費が主催者持ちだろうが割り勘だろうが構わない。誘われた人の判断で参加すればよいだけだ。プライベートな関わりにも上下関係はあるが、それは双方が個人的に了解した契約だ。公私を混同するなと言うが、社会生活においてはなかなか難しい問題だ。しかし、同調圧力を用いた懇親会が公務に良い成果を生み出すというのは昭和の幻想でしかない。
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