高関税発動を延期 ― 2025年04月11日

トランプ政権がわずか半日で一部関税の発動を延期した背景には、表向きには「消費者への影響を避けるため」と説明されたが、実際には米国債市場の動揺、いわゆる“国債暴落”への懸念が大きく影を落としていた可能性が高い。これまで「リスクフリー資産」とされてきた米国債は、関税政策や中国との対立激化を受け、株・債券・ドルが同時に売られるという異常な状況に見舞われた。これは、米国経済や財政に対する投資家の信頼が揺らぎ始めている兆候に他ならず、米国債がもはや安全な避難先として機能しなくなりつつあることを示していた。加えて、米国債の主要保有国である中国や日本の動きも見逃せない。もし外国人投資家が米国債を本格的に売却すれば、長期金利が急騰し、ドルも下落する。その結果、政府の借入コストが上昇し、財政運営は一層厳しさを増すことになる。株価を政権の成果と位置付けてきたトランプ政権にとって、こうした市場の混乱は単なる経済問題ではなく、政治的な打撃ともなりうる。したがって今回の関税延期は、単なる政策の微調整ではなく、国債市場や金融システム全体の安定を守るための“退却”だったとも言える。
株価の乱高下に一喜一憂する向きもあるが、株式市場は経済活動が続く限り、いずれ回復する可能性がある。しかし、国債価格の下落は国の信用そのものを揺るがし、民間の借入コストや企業の経営、ひいては雇用や実体経済に深刻な影響を与える。とりわけ、株式市場から距離のある下層労働者層の生活が直撃されれば、トランプ支持層の離反にもつながりかねない。この間、日本が米国債を売ったという噂もあるが、より現実味があるのは、中国が戦略的に売り浴びせを行ったという見方だ。米国債を売れば中国自身の資産も減るが、それでも100%超の関税を科された状況下では「背に腹は代えられない」との判断だったのだろう。だが、こうなると高関税と米国債売却の応酬となり、基軸通貨ドルの信用が損なわれれば、その影響は世界全体に波及する。日本としては静観を保ちつつ、中国産太陽光パネルに依存しない電力資源の開発に投資し、国内の産業と農業を早急に立て直すことが肝要だ。だが、それを迅速に実行できる政府が今の日本にあるかというと、残念ながら心もとない。
株価の乱高下に一喜一憂する向きもあるが、株式市場は経済活動が続く限り、いずれ回復する可能性がある。しかし、国債価格の下落は国の信用そのものを揺るがし、民間の借入コストや企業の経営、ひいては雇用や実体経済に深刻な影響を与える。とりわけ、株式市場から距離のある下層労働者層の生活が直撃されれば、トランプ支持層の離反にもつながりかねない。この間、日本が米国債を売ったという噂もあるが、より現実味があるのは、中国が戦略的に売り浴びせを行ったという見方だ。米国債を売れば中国自身の資産も減るが、それでも100%超の関税を科された状況下では「背に腹は代えられない」との判断だったのだろう。だが、こうなると高関税と米国債売却の応酬となり、基軸通貨ドルの信用が損なわれれば、その影響は世界全体に波及する。日本としては静観を保ちつつ、中国産太陽光パネルに依存しない電力資源の開発に投資し、国内の産業と農業を早急に立て直すことが肝要だ。だが、それを迅速に実行できる政府が今の日本にあるかというと、残念ながら心もとない。