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イランとイスラエルの対立が、再び深刻な段階に入っている。これまで両国は、テロ組織や代理勢力を通じた間接的な衝突を繰り返してきたが、近年ではそれが直接的な軍事行動へと発展している。きっかけの一つは、イランとアメリカの核問題に関する交渉が進まないことにある。核兵器の開発が疑われるイランに対して、イスラエルは自国の安全保障上、強い警戒心を抱いている。その結果、イスラエルはイランの核関係者への攻撃に踏み切り、イランも報復を宣言するなど、緊張は一層高まっている。この対立の背景には長い歴史がある。もともとイランとイスラエルは、1979年のイラン・イスラム革命以前には、比較的良好な関係を築いていた。しかし、革命によってイスラム体制が成立すると、イスラエルを「違法な国家」と断じ、パレスチナ問題をめぐって強硬な反イスラエル政策をとるようになった。イランは、ヒズボラやハマスといったイスラエルに敵対する組織を支援し、対立は次第に深まっていったのである。さらにさかのぼれば、1948年のイスラエル建国と、それに続く第一次中東戦争にまで起源を見いだすことができる。この戦争は、イスラム諸国がイスラエル建国に反発して起こしたものであり、イスラエルが勝利して領土を拡大したことが、パレスチナ人の不満やその後の対立の火種となった。

2000年代に入ると、イランの核開発が問題視されるようになった。イスラエルは、これを国家の存亡に関わる脅威とみなし、サイバー攻撃や核科学者の暗殺など、現代的な手段での攻撃を仕掛けてきた。そして現在、イスラエルはイラン国内の核関連施設を含む100カ所以上を攻撃し、イランも反撃を表明している。これを受け、国連安全保障理事会は緊急会合を開き、各国が懸念を示している。アメリカはイスラエルの行動を一定程度理解しつつも、外交による解決を求めており、イギリスや中国も即時停戦と対話を呼びかけている。一方、ロシアはイスラエルを非難し、国際的な立場も分裂している。

この危機は、中東だけの問題ではない。日本にとっても重大な意味を持つ。第一に、エネルギーの大半を中東に依存している日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖は死活問題である。この海峡が不安定になれば、原油価格は高騰し、国内の物価や経済にも大きな影響を与える。実際、イスラエルの空爆が報じられた直後、東京市場では原油価格が急上昇し、経済界にも不安が広がった。第二に、東アジアの安全保障にも影響が及ぶ可能性がある。アメリカが中東への対応に軍事力を集中せざるを得なくなれば、その隙を突いて中国が台湾や東シナ海で強硬な行動に出る可能性がある。尖閣諸島周辺では中国の海警船が頻繁に活動しており、台湾海峡では中国軍の圧力が続いている。また、北朝鮮の核・ミサイル開発も依然として日本の安全にとって深刻な脅威である。

こうした状況において、日本政府は「中東の平和と安定は日本にとって極めて重要である」と強調し、両国に対して最大限の自制を求めている。日本はこれまで、中東和平に向けて中立的かつ平和的な外交を展開してきた。今こそ、その姿勢をさらに強化し、国際社会との連携を通じて対話による解決を主導すべき時である。この危機を単なる「中東の問題」と見なすのではなく、日本のエネルギー安全保障や東アジアの安定にも直結する問題として捉えなければならない。中東の安定なくして、日本の安定もない。外交・安全保障・経済のすべてがつながる今の時代において、日本が果たすべき役割は決して小さくない。冷静な判断と現実的な対応が求められているのである。