私立大学助成金 ― 2025年06月08日

財務省が、定員割れする私立大学の授業内容を問題視している。文部科学省に対しては、私学助成の見直しを求める姿勢だ。報告によれば、一部の私大では、小中学生レベルの四則演算や英語文法を授業で扱っており、「大学教育」と呼ぶには疑問符がつく内容もあるという。さらに、定員割れを起こしている大学は全体の6割にものぼり、皮肉にも、こうした大学ほど国からの補助金が多いという現実もある。このため財務省は、私学助成の評価基準に「教育の質」を加えるべきだと提言している。もっともな主張のようにも聞こえるが、その一方で、文部科学省は反論する。「初歩的な授業」は、AIやデータサイエンスの基礎に過ぎず、専門分野への橋渡しを担っていると説明。さらに、地元企業への就職率の高さを根拠に、地方に不可欠な人材育成の場であることを強調している。
実際、大学進学者数は2026年度(令和8年)の約63万人をピークに減少し、2041年度(令和23年)には42万人程度になる見通しだ。その一方で、私立大学の入学定員はなお増え続けている。供給過剰、需要減──市場原理だけで見れば、「淘汰」が避けられない状況だ。両省は、大学の「規模適正化」の必要性では一致している。文科省の諮問機関も、「認証評価制度」に教育の質を盛り込む提案を行い、今後は評価結果が予算配分に反映される可能性もあるという。
しかし、教育は単なるコストパフォーマンスで語られるべきものだろうか。財務省が「教育の質の問題」としているが、その本音は「優秀な人材を生み出せない大学に税金を投じるのは無駄だ」という立場にも見える。だが一方で、高卒と大卒の生涯年収差が5,000万円とも言われるなか、たとえ“Fラン”と揶揄される大学でも、学費以上の「投資効果」があるという見方も成り立つ。とはいえ、もし高卒でまじめに働けば、大卒並みの収入が得られる社会が実現できるならば、Fラン大学の「存在意義」は薄れていくだろう。むしろ今こそ、社会全体で「学歴給」を見直す時期ではないか。まずは公務員の学歴給制度を廃止し、能力や成果で報いる給与体系に改める──そんな改革を先導してはどうか。
大学に進学することだけが人生の正解ではない。早くから社会に出て働くことで得られる経験もある。職場には年齢も境遇も異なる多様な人々が集まっており、そこには教室では得られない人間関係や学びがある。逆に、大学は同世代の、似たような環境の学生が集まりやすく、視野が広がらないという側面もある。若いうちから社会に出て、自立し、家庭を持つこと。それが促されれば、晩婚化や少子化にも歯止めがかかるかもしれない。高卒の初任給を大卒水準に引き上げれば、早期就労のインセンティブは高まるはずだ。就職を志す若者が増えれば、職業高校や専門学校のニーズも復活するだろう。今や風前の灯となった職業高校の再興も夢ではない。義務教育で実施される「キャリア教育」は、模擬体験で終わってしまうことが多い。だが、身近に実際に働いている先輩たちの姿があれば、子どもの就労意識は変わるだろう。大学助成の是非を論じるだけでは不十分である。若者が自立できるだけの収入を得て、働くことに誇りを持てる──そんな教育と就労制度の設計が、いま本当に求められているのではないか。
実際、大学進学者数は2026年度(令和8年)の約63万人をピークに減少し、2041年度(令和23年)には42万人程度になる見通しだ。その一方で、私立大学の入学定員はなお増え続けている。供給過剰、需要減──市場原理だけで見れば、「淘汰」が避けられない状況だ。両省は、大学の「規模適正化」の必要性では一致している。文科省の諮問機関も、「認証評価制度」に教育の質を盛り込む提案を行い、今後は評価結果が予算配分に反映される可能性もあるという。
しかし、教育は単なるコストパフォーマンスで語られるべきものだろうか。財務省が「教育の質の問題」としているが、その本音は「優秀な人材を生み出せない大学に税金を投じるのは無駄だ」という立場にも見える。だが一方で、高卒と大卒の生涯年収差が5,000万円とも言われるなか、たとえ“Fラン”と揶揄される大学でも、学費以上の「投資効果」があるという見方も成り立つ。とはいえ、もし高卒でまじめに働けば、大卒並みの収入が得られる社会が実現できるならば、Fラン大学の「存在意義」は薄れていくだろう。むしろ今こそ、社会全体で「学歴給」を見直す時期ではないか。まずは公務員の学歴給制度を廃止し、能力や成果で報いる給与体系に改める──そんな改革を先導してはどうか。
大学に進学することだけが人生の正解ではない。早くから社会に出て働くことで得られる経験もある。職場には年齢も境遇も異なる多様な人々が集まっており、そこには教室では得られない人間関係や学びがある。逆に、大学は同世代の、似たような環境の学生が集まりやすく、視野が広がらないという側面もある。若いうちから社会に出て、自立し、家庭を持つこと。それが促されれば、晩婚化や少子化にも歯止めがかかるかもしれない。高卒の初任給を大卒水準に引き上げれば、早期就労のインセンティブは高まるはずだ。就職を志す若者が増えれば、職業高校や専門学校のニーズも復活するだろう。今や風前の灯となった職業高校の再興も夢ではない。義務教育で実施される「キャリア教育」は、模擬体験で終わってしまうことが多い。だが、身近に実際に働いている先輩たちの姿があれば、子どもの就労意識は変わるだろう。大学助成の是非を論じるだけでは不十分である。若者が自立できるだけの収入を得て、働くことに誇りを持てる──そんな教育と就労制度の設計が、いま本当に求められているのではないか。