マッチポンプ立憲民主党2025年11月12日

中国の薛剣駐大阪総領事
立憲民主党の泉健太前代表が、中国の薛剣駐大阪総領事に対して「こんな総領事は日本に必要ない」「早期に中国に帰任させよ」と発言した件が波紋を広げている。薛氏は当時、高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁に反応し、「汚い首は斬ってやるしかない」とSNSに投稿した。外交官としての節度を逸脱した発言であり、泉氏の怒りはもっともである。しかし、この一件をめぐっては「立憲民主党の対応に整合性がない」「マッチポンプ的だ」との批判も少なくない。発端は、同党の岡田克也元代表が衆議院予算委員会で高市氏に行った質問にある。岡田氏は台湾有事の際の「存立危機事態」の具体的認定基準を問い、高市氏が「最悪の事態を想定したシナリオ」を答弁すると、政府の“戦争への前のめり”姿勢を非難した。

だが、防衛の細部――どこからが「危機」で、どの時点で「自衛権行使」となるのか――を明示すること自体、戦略上の愚策である。相手に「このラインまでは日本は動かない」と教えるようなもので、抑止力を自ら削ぐ結果になる。安全保障とは、一定の曖昧さの中にこそ成立するものであり、すべてを明文化して議論の俎上に載せるのは、平和を守るための政治ではなく、平和を前提とした“観念論”にすぎない。立憲民主党の議論には、しばしばこの観念的平和主義――いわゆる“平和ボケ”の影が差す。理想を語ることは容易だが、現実の安全保障環境は理屈より速く動く。中国や北朝鮮が軍事的圧力を強めるいま、防衛の「線引き」を明確に求める質問は、善意に見えて実は国防の足を引っ張る行為になりかねない。

岡田氏の追及をきっかけに薛総領事が威圧的な投稿を行い、泉氏がそれを強く非難した構図は、まさに党内の思考の乖離を示している。自ら高市氏の防衛答弁を批判しながら、その答弁に反発した中国側を批判する――この矛盾に有権者は戸惑いを覚える。もちろん、泉氏の主張には理がある。政府の安全保障政策を点検するのは国内政治の責務であり、外国の外交官が内政に干渉するのはまったく別問題である。泉氏の発言は、日本の主権と政治家の尊厳を守る立場から出たものだ。

しかし、有権者の目には、総理に発言の撤回を迫る立憲民主党の姿が、薛総領事の発言によって後押しされ、「外交官の暴言を利用して政府批判の構図を再構築している」と映った可能性も否定できない。さらに、泉氏が対応を外務省に一任したことについても、「他人任せ」「腰が引けている」といった印象を与えた。

結局、この一件は、野党が平和主義を掲げながら現実の安全保障にどう向き合うのか、その覚悟を問う鏡となった。理念に寄りすぎれば現実を見失い、現実を軽んじれば国を危うくする。立憲民主党が“平和ボケ”の殻を破らぬ限り、有権者はその安全保障観に信頼を寄せることはないだろう。