経団連会長年頭会見 ― 2026年01月04日
年頭会見で経団連会長が口にしたのは、もはや聞き慣れたフレーズだった。「地方の中小企業は深刻な人手不足に直面している。外国人材の受け入れ拡大が不可欠だ」。政府にはデータに基づく制度整備を求め、企業には賃上げの継続を促す——一見、バランスの取れた提言に映る。だが、この発言を要約という“解剖台”に載せると、いくつかの矛盾が鮮明に浮かび上がる。
第一に、「人手不足→外国人材」という因果があまりに短絡的だ。なぜ賃金を引き上げて国内労働力を引き寄せないのか。なぜ省人化投資や業務改革によって人手依存を減らさないのか。その説明は意図的に省かれている。要約すれば、「不足しているから入れる」という単線論法だけが残り、前提の妥当性は検証されないままだ。
第二に、賃上げの継続と外国人材受け入れ拡大を同時に唱える点である。労働供給を増やせば、賃金上昇圧力は弱まる。これは経済学の初歩だ。インフレギャップ期とは、本来、賃金上昇をきっかけに企業が自動化や設備投資に踏み切り、非効率な企業が退出し、労働がより生産性の高い分野へ移動する局面である。外国人材で“穴埋め”すれば、この新陳代謝は鈍る。要約すればするほど、「賃上げ」と「労働供給拡大」を同時に求める構造矛盾が際立つ。
第三に、「地方中小企業の存続」を大義名分にした外国人材政策の危うさだ。突き詰めれば、それは低生産性企業の延命策に近い。市場から退出すべき企業が、安価な労働力によって生き残れば、経済全体の生産性は上がらない。名目GDPが物価上昇で膨らんでも、国民所得の実質的な増加には結びつかない。
結局、経団連会長の発言は「短期の人手不足対策を優先し、長期の生産性向上との整合性を欠く」という一点に収れんされる。外国人材受け入れ拡大を強調すればするほど、日本経済が長年陥ってきた“低生産性均衡の固定化”という構造的問題が、むしろ鮮明に浮かび上がる。対症療法としての外国人材依存が繰り返されるたび、賃上げも生産性改革も先送りされ、停滞の責任は曖昧化され、失われた時間だけが積み上がってきた。
今後の政策は、労働供給の量的補填を前提とする発想から脱却し、生産性向上を中心に据えた制度設計へと軸足を移す必要がある。具体的には、賃金上昇を通じた労働移動の促進、低生産性企業の退出を阻害しない市場環境の整備、自動化・設備投資を後押しする税制・規制改革など、構造的改善を促す政策が不可欠である。外国人材の受け入れは、そのような改革の代替ではなく、あくまで補完的手段として位置づけられるべきだ。
日本経済が持続的成長を取り戻すためには、短期的な人手不足への対処にとどまらず、どのような産業構造と生産性水準を将来像として描くのかという根本的な政策ビジョンを明確にする必要がある。求められているのは、安易な延命策を政府に求め続けることではなく、長期的な成長基盤を再構築するために、全企業の9割を占める中小企業の生産性を抜本的に引き上げる政策である。
第一に、「人手不足→外国人材」という因果があまりに短絡的だ。なぜ賃金を引き上げて国内労働力を引き寄せないのか。なぜ省人化投資や業務改革によって人手依存を減らさないのか。その説明は意図的に省かれている。要約すれば、「不足しているから入れる」という単線論法だけが残り、前提の妥当性は検証されないままだ。
第二に、賃上げの継続と外国人材受け入れ拡大を同時に唱える点である。労働供給を増やせば、賃金上昇圧力は弱まる。これは経済学の初歩だ。インフレギャップ期とは、本来、賃金上昇をきっかけに企業が自動化や設備投資に踏み切り、非効率な企業が退出し、労働がより生産性の高い分野へ移動する局面である。外国人材で“穴埋め”すれば、この新陳代謝は鈍る。要約すればするほど、「賃上げ」と「労働供給拡大」を同時に求める構造矛盾が際立つ。
第三に、「地方中小企業の存続」を大義名分にした外国人材政策の危うさだ。突き詰めれば、それは低生産性企業の延命策に近い。市場から退出すべき企業が、安価な労働力によって生き残れば、経済全体の生産性は上がらない。名目GDPが物価上昇で膨らんでも、国民所得の実質的な増加には結びつかない。
結局、経団連会長の発言は「短期の人手不足対策を優先し、長期の生産性向上との整合性を欠く」という一点に収れんされる。外国人材受け入れ拡大を強調すればするほど、日本経済が長年陥ってきた“低生産性均衡の固定化”という構造的問題が、むしろ鮮明に浮かび上がる。対症療法としての外国人材依存が繰り返されるたび、賃上げも生産性改革も先送りされ、停滞の責任は曖昧化され、失われた時間だけが積み上がってきた。
今後の政策は、労働供給の量的補填を前提とする発想から脱却し、生産性向上を中心に据えた制度設計へと軸足を移す必要がある。具体的には、賃金上昇を通じた労働移動の促進、低生産性企業の退出を阻害しない市場環境の整備、自動化・設備投資を後押しする税制・規制改革など、構造的改善を促す政策が不可欠である。外国人材の受け入れは、そのような改革の代替ではなく、あくまで補完的手段として位置づけられるべきだ。
日本経済が持続的成長を取り戻すためには、短期的な人手不足への対処にとどまらず、どのような産業構造と生産性水準を将来像として描くのかという根本的な政策ビジョンを明確にする必要がある。求められているのは、安易な延命策を政府に求め続けることではなく、長期的な成長基盤を再構築するために、全企業の9割を占める中小企業の生産性を抜本的に引き上げる政策である。