日銀の金利2025年06月13日

日銀の金利
これまで国債発行や消費税について述べてきた。今回は日本銀行の政策について考察する。日本銀行の政策金利は、2025年1月に約17年ぶりにゼロ%台から0.50%に引き上げられた。これは長期間続いた超低金利政策の出口として注目されている。一方、アメリカの政策金利は現在4.50%であり、日本との金利差は依然として約4.00%と大きい。このため、投資資金はドルに流れやすく、円安が続いている。実際、2022年から2024年にかけて円はドルに対して30%以上も価値を下げ、2024年末には1ドル=150円台に達した。この円安は輸入品の価格上昇を招き、2025年4月時点の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で約3.5%上昇し、インフレが続いている。

こうした状況に対し、日銀は為替の変動を強く意識し、金利政策を動かすことにより円安抑制を試みている。しかし、為替を過度に意識した金利引き上げは、国内経済に不必要な混乱をもたらす恐れがある。日本の企業や家計は長年の低金利環境に慣れており、急激な金利上昇は企業の投資意欲をそぎ、消費も冷やしてしまう。特に住宅ローンの多くは変動金利型であるため、金利上昇は家計の負担増加につながり、個人消費を縮小させかねない。さらに、実質賃金は2025年4月時点で前年同月比約1.8%低下しており、家計の生活は依然として厳しい状況にある。こうしたなかでの金利引き上げは、むしろ経済の回復を妨げるリスクが高い。

また、過去の経験からも分かるように、政府の為替介入は一時的な効果にとどまり、長期的な円安傾向を変えることは難しい。市場の力が強いなかで、日銀が為替レートを主眼に置いた金融政策を進めることは、金融政策の本来の目的である物価の安定や金融システムの維持を曖昧にしてしまう恐れがある。したがって、為替や海外経済の影響に左右されにくい経済構造の構築が重要だ。具体的には、国民の手取り収入を増やす政策を優先すべきである。たとえば、所得税や住民税の一時的な減税は、家計の可処分所得を増やし、消費の回復に寄与する。消費税の軽減も同様に効果が期待できる。また、社会保障の充実も不可欠である。年金や医療費の負担軽減、子育て支援の強化は将来への不安を和らげ、消費を促す。人口の高齢化が進む中、安心して暮らせる環境整備は消費拡大の基盤となる。

住宅政策では、古い家の省エネ改修に対する補助金制度の拡充が効果的である。国の試算によれば、一戸あたり最大60万円の補助が可能で、建設関連産業に数兆円の経済効果が見込まれている。さらに、地方経済の活性化も重要だ。地域限定の商品券や観光支援策は、地域全体の消費を促し、全国経済の底上げに繋がる。企業においては、賃上げの促進が鍵となる。2025年の春闘では、大企業に加え中小企業でも5%を超える賃上げが実現した。政府は賃上げした企業に対し法人税の一部減税を行い、中小企業の賃上げを後押ししている。賃上げと並行して、生産性向上のための設備投資やデジタル化支援を拡充し、企業の成長と所得向上を両立させるべきだ。財政面では、老朽化したインフラの修繕や地方のデジタル設備整備に力を入れる必要がある。日本の橋や上下水道の約40%は築40年以上で、年間約5兆円の更新費用が必要とされる。これらの投資は防災効果もあり、公共投資として有効である。

こうした消費促進策や生活支援、投資拡大の施策を組み合わせて段階的に進めることで、外部ショックに強い経済基盤をつくることができる。日銀は物価の安定と金融システムの維持に専念し、政府は財政政策や制度改革を通じて実体経済を支える役割を担う。両者が連携し、短期的な経済変動を乗り越えつつ、長期的な成長戦略を推進することが、日本経済の安定と発展につながる。為替レートの変動を抑えることを最優先にし、日銀の金融政策が左右されることは、経済全体にマイナスの影響を及ぼすリスクが大きい。この点を踏まえ、日銀の政策は為替に過度に振り回されることなく、本来の目的に忠実であるべきだと考える。