心の糸2023年04月16日

耳の聞こえない母と、母からの期待を背負い目標に励む息子。石川県を舞台に、母と子で生きてきた親子のぶつかり合い、絆が描かれる。ドラマ『星の金貨』で手話表現を描いた龍居由佳里が脚本を手掛け、耳の聞こえない母を演じた松雪泰子と谷村美月、息子を演じた神木隆之介が手話に挑戦している。12年程前にNHK名古屋放送局が制作したものだ。どうりで今はアラフィフの松雪が若く見えるはずだ。しかし、その美しさは手話を使うことで引き出されているように思う。以前映画『ドライブ・マイ・カー』の評でパク・ユリムの手話があまりにも美しく、同時期のアカデミー賞の『コーダ あいのうた』の主演エミリア・ジョーンズの力強い手話と比較したことがあるが、松雪の手話はパク・ユリム系だ。

セリフをしゃべらないことによって、役者の表情や仕草が前面に押し出される。松雪の美しさがさらに引き立つということだろう。10年も経つと聴覚障害のテーマがややずれているようにも感じるが、良いドラマだ。最近の聴覚障害を扱ったドラマは『silent』と『星降る夜に』だが、前者は中途障害に悩む目黒蓮、後者は前向きに生きる北村匠海を取り巻くラブストリー。どちらもヒットしたようだが、後者の方が聴覚障害を肯定的に描くコーダ系と言えるかもしれない。時代の流れはこっちだと思う。
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