泥と罵声浴びるスペイン国王2024年11月04日

スペイン国王
スペインのフェリペ国王夫妻が3日、バレンシア州の洪水被災地を訪問した際、支援の遅れに怒る住民たちが泥を投げつけ、「人殺し」「帰れ」と罵声を浴びせる騒ぎとなった。特に被害が深刻なパイポルタでは、国王が徒歩で視察中、住民が警備隊ともみ合いながら国王に詰め寄り、「なぜもっと早く来なかったのか」と非難した。国王は対話を試み、レティシア王妃は泥を浴びた顔のまま被災者を抱きしめた。一方、サンチェス首相も視察中に住民に囲まれ、車列の窓が割られるなど緊張が高まった。夫妻と首相は別の被災地訪問も予定していたが中止され、洪水の死者は217人に上った。日本では考えられない光景だ。災害の四日後なので慰問が早すぎるが、政府の災害救助の遅れへの批判を鎮める策だとすれば、スペイン政府は国王を政治的に使っているともいえる。

スペインの国王の政治的位置づけは、日本の天皇と似ている。どちらも立憲君主制の下で、象徴的な国家元首の役割を果たす。儀礼的な活動や国民の統合の象徴としての役割を持ち、実際の行政権は政府や首相にある。国際的な場での外交活動や国民的行事への参加も含まれるが、政治的な決定には直接関与しない。だが、政府の国王の扱いも国民の受け止めも全く違うと感じさせる。建国500年余りのスペインと2600年を経た我が国とでは元首の格が違うと言えばそれまでだが、天皇を知る日本人にとってスペイン人の行動は奇異にしか映らない。そういえば天皇制が男女平等ではないと国連女性差別撤廃委員会で勧告したのはスペイン人のアナ・ペラエス委員長だった。なるほど、元首の捉え方がまるで違うのだろう。