米が足りない?2025年02月16日

米が足りない?
農林水産省は14日、米価高騰の是正に向け、備蓄米21万トンを放出すると発表した。まず、15万トンを3月中旬に放出し、流通状況に応じて追加放出を行う予定である。初回の15万トンのうち、10万トンは2024年産、5万トンは2023年産の米である。入札を経て売却先の集荷業者が決定され、3月末には店頭に並ぶ見込みである。対象となる事業者は、年間5千トン以上の玄米を仕入れる大手集荷業者であり、放出後1年以内に農水省が同量を買い戻す仕組みとなっている。農水省は、この21万トンを「流通の目詰まり」として問題視しており、2024年産米の生産量が前年より18万トン多くなる見込みであるにもかかわらず、主要な集荷業者が確保した量は21万トン少なかった。そのため、この不足分を補う形で備蓄米の放出が決定された。放出される21万トンは年間消費量の約3%に相当し、初回の15万トンは大手集荷業者が1カ月で販売する量と同等である。江藤拓農水相は記者会見で、流通の滞りを何としても改善したいとの強い決意を示し、もし放出後も流通の目詰まりが解消されない場合には、追加措置を講じる考えを示した。これまで、農水省の発表通り「コメはあるが、誰かが買い占めたため流通していない」と理解していた。しかし、ここまでの経過を見ると、そもそもコメが足りないのではないかと考えるようになった。

現在の米価高騰のきっかけは、昨年8月にスーパーの棚から一斉に米が消えた「令和の米騒動」である。これは前年の猛暑の影響でコメの供給量が減少したことが原因とされる。農水省によれば、2023年秋の主食用米の収穫量は661万トンであった。しかし、需要は705万トンであったため、「40万トンの米不足」が発生したと考えるのが自然である。今年の収穫量は683万トンと例年並みとされるが、今年の需要も昨年と同じ705万トンとすれば、21万トンが不足する計算になる。昨年と今年の不足分を合わせると61万トンとなり、備蓄米の21万トン放出では、昨年と同じ40万トンのコメ不足が起こる可能性が高い。農水省が主張するような買戻しや新たな備蓄を行う余裕は、現在の状況では無理だ。コメの収穫量は10年前の800万トンから毎年12万トン程度減少し、現在に至っている。一方、コメの需要も減少傾向にあるが、そのペースは年間10万トン程度であり、ここ2年は下げ止まり、705万トンで推移している。つまり、今後は作付面積を増やさなければ、コメの価格は上がり続ける可能性が高い。現在の日本のコメ自給の実情を考えれば、減反はやめて増産体制に切り替えるべきだ。