特別支援教育に「報酬制度」を2025年10月16日

特別支援教育に「報酬制度」を!
「努力だけでは変わらない」――特別支援教育の現場に立つ多くの教員がそう感じている。情熱や経験だけでは限界があり、科学的根拠に基づいた支援をどう制度として根付かせるかが問われている。文部科学省は「科学的エビデンスに基づく指導法」を参考として示しているが、現場への導入を制度的に支援する仕組みは乏しい。教育行政が地方自治体に委ねられているため全国一律の制度設計は難しいとされるが、医療制度のように科学的根拠に基づく方法を採用した自治体に加算型助成を付与する仕組みは可能である。これにより、属人的な努力ではなく、効果が実証された方法を制度的に支える構造をつくることができる。

現行の学習指導要領は抽象的な目標を掲げるのみで、具体的な指導法は教員の裁量に委ねられている。特別支援教育では教科書のない分野も多く、教育的介入が行われなくても制度的責任を問われにくい。その結果、「子守的対応」が黙認される構造が生じている。これを改めるには、科学的根拠に基づく指導法を明示し、採用した場合に得点化・助成される仕組みを設ける必要がある。

医療制度には全国共通の「診療報酬点数表」があり、科学的根拠のある治療法を実施すれば自動的に報酬が発生する。制度が科学的方向への誘導を担うことで、効果の乏しい治療への公的支出が抑制されている。この仕組みを教育に応用するなら、文科省が認定した指導法を導入した自治体や学校に「教育加算点数」を設定し、実施単位(例:週1回×3ヶ月)に応じて助成金を配分する制度が考えられる。これにより、教育的介入の継続性と財政的合理性が両立する。

運用には、指導内容・期間・対象を記録する「教育カルテ」の整備が不可欠である。医療における診療録のように、透明性と検証可能性を担保する仕組みとして機能する。現在、多くの学校で「個別の指導計画」が形骸化しているが、教育カルテとして再構築すれば、助成制度と連動した実践記録として活用できるだろう。

従来の「モデル校方式」は先進的実践の共有を目的としながらも、人事異動による継続性の欠如や、個人の熱意に依存した「一代限りの奇跡」に終わることが多かった。教育加算制度と教育カルテを組み合わせ、指導法単位で評価と助成を制度化すれば、成果を個人の出世ではなく自治体の制度改善に還元できる。

この仕組みは、地方自治の自由を尊重しつつ、選択と責任を明確化するものである。特別支援教育にとどまらず、教育行政全体を、属人的な努力から科学的・制度的支援へと転換させる契機となる。教育を「善意」で支える段階から「制度」で支える段階へ――いま必要なのは、その発想の転換である。

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