1リットル10円補助2025年04月08日

1リットル10円補助
政府・与党は、6月からガソリン価格を抑えるため、1リットルあたり10円の定額補助を導入する方向で検討している。現在の価格水準から見れば、確かに一定の値下がり効果は見込まれる。しかし、1リットルあたり25円10銭の「暫定税率」の廃止を求める野党の反発は必至だ。政府はガソリンの全国平均価格を185円程度に抑える方針を掲げ、夏の参院選を見据えた「国民負担の軽減」をアピールする構えだ。財源は既存の基金を活用し、追加の予算措置は講じないとしている。昨年12月には、自民・公明・国民民主の3党が「暫定税率の廃止」で合意した。しかし、あれから半年、具体的な廃止時期は棚ざらしのまま。6月から来年3月末まで、価格を引き下げることだけは決めたようだ。だが、現実を見れば、その「効果」には疑問符がつく。市中のガソリンスタンドでは185円程度の価格が一般的。そこから10円引いたとしても、満タン給油でせいぜい500円程度の差だ。原油価格も同時株安でやや下がってはいるものの、1バレル5ドルの下落では2円分程度しか値下がりしない。しかも、その上に「暫定」の名を借りた税金がどっしりとかかる。結局、庶民の負担は「雀の涙」ほども軽くならない。そもそもこの暫定税率、1974年の石油危機を受けて「一時的措置」として導入されたものだ。それが50年経っても存続している。

昨年の与党合意ですら実行されないまま先送り。もはや「暫定」とは、政治が怒りの火消しに使う“魔法の言葉”と化している。政府は「地方財政への影響がある」と繰り返すが、インフレの影響で地方税収も軒並み増加している今、果たしてどれだけの自治体が「あと1年、暫定税率を維持してほしい」と訴えているのか。どう見ても、理由をこじつけて、少しでも多く徴収したいという国の思惑が透けて見える。そして忘れてはならないのが、ガソリンだけではないということだ。日本の電力の約7割を火力発電が占める中、電気代の高騰も深刻な問題となっている。この夏、光熱費がどれだけ跳ね上がるのか、考えるだけで寒気がする。世界経済も安定にはほど遠い。トランプ関税への報復として中国が同率の関税を発表し、世界は同時株安に突入。日経平均は3月の3万9千円から、既に8千円も下落した。賃上げが進んだとはいえ、物価高に追いつけず、実質賃金は先月もマイナス。インフレと景気後退が同時に襲う「スタグフレーション」の足音がひたひたと迫っている。それでもなお、「10円の補助」でしのげるとでも思っているのだろうか。減税には背を向け、実効性の乏しい支援策でやり過ごそうとする石破内閣に、果たして危機を乗り越える力はあるのか。いま、国民が求めているのは、言葉のごまかしではなく、現実に即した政策だ。即刻、退場を願いたい。

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