教職員による盗撮2025年08月13日

教職員による性被害
近年、全国で相次ぐ教職員による盗撮事件。児童生徒のプライバシーを侵すばかりか、その画像や動画がSNSに流出し、拡散される悪質な事例も発覚している。信頼を土台に成り立つ教育現場にとって、これはまさに“土台崩し”の連続だ。文科省や自治体は危機感を隠さず、新潟県では臨時の校長研修会を開き、倫理意識の強化や個人情報保護の徹底を呼びかけた。滋賀県では、私物スマホで児童を撮影することすら禁止するなど、対策は着実に強化されている。だが、制度を整えるだけで本当に防げるのか。加害者の多くは、表向きは“理想の先生”の顔を持ちながら、内心ではストレスや孤立感、抑えきれない性的衝動を抱え込む。学校という閉ざされた空間は、外部の目が届きにくい。「バレない」という慢心が、犯罪へのハードルを下げる。中にはICT機器に精通し、巧妙に証拠を隠す教員もいる。さらに、SNS上で盗撮画像を共有し合う“教員グループ”の存在も報じられ、承認欲求や仲間意識の歪みが犯罪を加速させる現実もある。

現行制度では、わいせつ行為で免許を失った教員の情報を集めたデータベース(DB)が存在するが、依願退職や懲戒回避で免許を手放していない者は対象外。しかも私立学校法人の約4分の3は照会すらしていないという。また、性被害防止と加害者のプライバシーを同列に扱う奇妙な「人権」感覚も被害防止の障壁になっている。そこで2026年度に導入予定の「日本版DBS」が注目されている。子どもと接する職業に就く前に性犯罪歴を照会し、該当者の業務従事を防ぐ制度だ。こども家庭庁を介して事業者が申請し、漏洩防止や帳簿管理も義務化。対象は学校や保育所だけでなく、学習塾やスポーツクラブなど民間にも広がる。ただし英国のDBSと比べれば、まだ腰が引けている。英国では法的義務のもと、対象職種は幅広く、就業禁止者リストの運用も徹底。日本版は民間事業者の任意参加や個人事業主の除外など、穴だらけの船出だ。

加えて、学校内部の“自己浄化能力”にも疑問が残る。文部科学省は私立学校法の改正により、学校法人に内部統制システムの整備を義務づけたが、現場では形骸化した運用が目立つ。私学におけるいじめや触法行為の隠蔽体質と同様に、制度が存在しても、それを動かす人間の倫理観が腐敗していれば機能しないことを示している。内部通報制度や監査体制も、教職員間の同調圧力や“身内意識”に阻まれ、機能不全に陥りやすい。結局のところ、内部統制とは紙の上の仕組みではなく、職場文化そのものである。心理的安全性や風通しの良い環境が伴わなければ、制度は空論に終わる。盗撮事件は、個人の逸脱行為にとどまらず、教育制度の構造的欠陥と監視体制の甘さが生み出す“繰り返される悲劇”である。制度改革と意識改革が車の両輪として機能しなければ、報道は何度でも同じ事件を伝えることになるだろう。

教育現場を「聖職」として特別扱いするのではなく、社会の他の職業と同様に、透明性・説明責任・法的規律の下で運営されるべきである。子どもを守るという公共的使命があるからこそ、特権ではなく厳格な監視と制度的整備が求められる。