NHK「緑なき島」の謝罪2025年03月28日

緑なき島
NHKの稲葉延雄会長が頭を下げた。長崎市の端島炭坑、通称・軍艦島を扱った1955年放送の番組「緑なき島」で、元島民たちの名誉を傷つけたとして謝罪したのだ。番組内で使用された坑内映像は、後に韓国メディアによって無断転用され、「軍艦島=地獄島」というデタラメなイメージが世界に広がるきっかけとなった。元島民たちは4年以上にわたり、NHKに訂正と謝罪を求めてきた。ようやく実現したのが26日の面談。稲葉会長は「名誉を傷つけた」と謝罪し、報道陣が多数詰めかけた。だが驚くべきはそのあとだ。当事者であるNHKが、この謝罪を自ら報じていないのである。なぜだろう。他局の不祥事は嬉々として取り上げ、自局のニュース枠でもトップ扱いするNHKが、自らの誤りは一切報じない。翌日には、フジテレビの日枝取締役相談役退任の幹部会見を動画付きで丁寧に報じておきながら、自局の謝罪はニュースにもならない。このダブルスタンダードには呆れるしかない。2014年、朝日新聞は慰安婦報道の誤りを認め、紙面で謝罪し、訂正記事を出した。民放各局も、誤報があれば幹部が頭を下げ、その様子を自ら放送してきた。それがメディアの最低限の責任というものだ。一方で、NHKは過ちを認めても、報道しない。なかったことにする。その態度こそ、公共放送として最も恥ずべき振る舞いではないか。

「緑なき島」は70年前の番組で、当時の制作者はほとんど鬼籍に入っている。軍艦島の実態を知るのは、島で少年期や青年期を過ごした元住民たちだけだ。炭鉱は立坑式で海底下に掘り進む。映像で流されたような褌一丁の作業など、あり得なかった。2015年、軍艦島が世界遺産登録された際、韓国は「朝鮮人労働者が差別され、劣悪な環境で働かされた」と主張した。そのプロパガンダの材料として、NHKの映像が利用されていたことが判明している。つまり、NHKは70年前に捏造されたイメージを、今日に至るまで世界にばらまき、その謝罪すら視聴者には知らせていない。これは朝日新聞の慰安婦誤報と同じ構図だ。それなのに、NHKは謝罪会見をしても、報道しない自由を行使している。フジテレビはスポンサー離れを機に経営方針を変えた。広告収入が命綱の民放は、視聴者やスポンサーの声を無視できない。しかしNHKは違う。国民から強制的に徴収する受信料がある限り、視聴者の声など痛くもかゆくもない。これが公共放送のやり方か。自分たちが報じられる側になると、報道しない。自己検証もしない。批判も取り上げない。それでいて他局や民間企業の不祥事には容赦なく切り込む。こんなNHKに、視聴者の信頼などあろうはずがない。この体質を改めさせるには、視聴者が「見る」「見ない」を選べるスクランブル方式に移行するしかない。少なくとも、好き放題やっておいて「受信料を払え」と言われる筋合いは、もうどこにもない。
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