約5千人の障害者が解雇2024年08月14日

今年3月から7月にかけて、障害者が働きながら技術や知識を身に付ける就労事業所が全国で329カ所閉鎖され、少なくとも約5千人の障害者が解雇や退職となったことが明らかになった。障害者の年間解雇者数の過去最多記録は約4千人であり、今回の解雇・退職者数はわずか5カ月でこれを上回る規模となっている。閉鎖の主な原因は、国が公費に依存した就労事業所の経営改善を促すために、収支の悪い事業所の報酬を引き下げたことである。この報酬引き下げは2月に発表され、4月に実施された。閉鎖が相次いでいるのは「就労継続支援A型事業所」で、障害者と雇用契約を結び、最低賃金以上を支払った上で生産活動や職業訓練が行われている。全国に約4600カ所あり、精神障害者や知的障害者を中心に8万人以上が働いている。閉鎖された329カ所のうち4割強は、最低賃金が適用されないB型事業所に移行したという。

障害者授産施設が始まったのは60年以上前だ。しかし、授産施設内での労働は福祉の枠組みの中のもので、賃金も月額1万円に満たなかった。企業並みに賃金が得られる障害者を増やし障害者の自立を目指すことが検討されてきた。2006年の障害者自立支援法で、最低賃金を保障する就労継続支援A型と従来支援を継続したB型事業所が設立された。2013年には障害者総合支援法が施行され、就労の裏付けとなる生活支援も含めた移行支援の枠組みが強化され参入団体も増えA型事業所は増加していく。しかし、参入団体は福祉団体が多く企業経営の力量がないことが問題になっていた。現在、A型の全国の平均月収は8万円程度で、時間当たりの最低賃金を保障しているとは言え実質的には半分以上がフルタイムの最賃を保障しているとは言えない。ただ、20日間労働すれば最低賃金1時間1000円で16万円以上の月収となり事業所定員の10名の賃金を捻出するのは毎月160万円以上の利益が必要となる。企業平均的な売上高人件費比率はサービス業で15%程度といわれるので月売り上げは1千万程度が必要だ。支援する人の賃金は補助金から支出されるので、支援側で営業成績を伸ばそうという積極的な動機は生まれにくい。従って、様々なハンディーのある障害者だけでフルタイムでの最低賃金を確保する収益はかなり難しい。障害者の自立を目指す最賃を保障することが目的なら、企業内の特例子会社の設立を行政が支援し、障害者の企業の法定雇用率の免除を廃止するしか方法がない。障害者だけを集めて雇用するのではなく、多様性社会の推進を言うなら障害のある人もない人も働く企業に変えていくのが筋だと思う。
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