Shrink -精神科医ヨワイ- ― 2024年09月15日
ドラマ『Shrink -精神科医ヨワイ-』(NHK)がおもしろい。本作は、七海仁による原作と月子による作画の漫画を基にし、精神科医・弱井幸之助(中村倫也)と看護師・雨宮有里(土屋太鳳)が、精神疾患を抱える人々に寄り添い治療していくヒューマンドラマだ。監督は『きのう何食べた?』や『大豆田とわ子と三人の元夫』などを手掛けた中江和仁が務め、優しいタッチで精神医療の現実を描く。ドラマは全3話で、取り上げられる精神疾患は「パニック症」「双極症」「パーソナリティ症」だ。中江監督は短い話数で作品をまとめながらも、精神医療に対する理解を深め、病に対する偏見を減らすことを目的として制作に取り組んだという。自分の仕事柄、精神科領域と深くかかわってきたのでこのドラマを興味深く観た。80年代頃までは、DVや非行などの異常行動を全て環境因で説明するものが主流を占めており、家庭環境や親の養育責任にする風潮が強かった。ようやく、脳科学の立場から異常行動がどのようなメカニズムで生じるのかを解明する研究が進み、90年代には薬物療法で対症療法をしながら認知行動療法の有効性が実証されるようになった。ここ20年程は、環境因が脳にダメージを与えることの研究も進み、現在は環境因と脳の器質的なトラブルの両方から治療が考えられるようになっている。
WHOが作成した最新版『ICD-11』の日本語版では、これまでの『パニック障害』『双極性障害』『境界性パーソナリティー障害』は『パニック症』『双極症』『境界性パーソナリティー症』に言い換えられる予定だ。『障害』という言葉が『一生付き合うもの』という印象を与えるため、治療可能性が高まっている現状を反映し『障害』から『症』呼称を使う時代に入ったということだろう。精神科医がドラマのように患者と外出して一緒に治療に取り組むことはほとんどない。初診以外は短時間で診察し患者数を稼がないと経営が成り立たないからだ。ドラマではあえて理想的な精神科医療を示したということだろう。逆に、短時間診察と投薬のみで診療をしているクリニックの問題をコントラストにして描いたのは的を射ている。最終回パーソナリティー症の治療展開は楽観的な印象を与え過ぎだ。せめて10回連続ドラマにしないと精神科治療の難しい部分は表現できないと思う。発達障害と精神科医療を描いたドラマはいくつか見られるが、精神科医療をリアルに描いたドラマは少ない。今後も良質の精神科のドラマ制作を期待したい。
WHOが作成した最新版『ICD-11』の日本語版では、これまでの『パニック障害』『双極性障害』『境界性パーソナリティー障害』は『パニック症』『双極症』『境界性パーソナリティー症』に言い換えられる予定だ。『障害』という言葉が『一生付き合うもの』という印象を与えるため、治療可能性が高まっている現状を反映し『障害』から『症』呼称を使う時代に入ったということだろう。精神科医がドラマのように患者と外出して一緒に治療に取り組むことはほとんどない。初診以外は短時間で診察し患者数を稼がないと経営が成り立たないからだ。ドラマではあえて理想的な精神科医療を示したということだろう。逆に、短時間診察と投薬のみで診療をしているクリニックの問題をコントラストにして描いたのは的を射ている。最終回パーソナリティー症の治療展開は楽観的な印象を与え過ぎだ。せめて10回連続ドラマにしないと精神科治療の難しい部分は表現できないと思う。発達障害と精神科医療を描いたドラマはいくつか見られるが、精神科医療をリアルに描いたドラマは少ない。今後も良質の精神科のドラマ制作を期待したい。