USAID閉鎖と一帯一路 ― 2025年02月14日
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トランプ大統領は、USAID(アメリカ国際開発庁)の閉鎖を計画し、職員の97%を解雇すると発表した。USAIDは貧困地域や紛争地帯で支援活動を行ってきたが、トランプ氏は「急進左派に乗っ取られ、腐敗している」と主張。海外勤務の職員は30日以内に帰国し、90日間の援助停止が決定されたことで、各国に混乱が広がっている。USAIDは年間6兆円の予算を持ち、ウクライナをはじめとする国々へ巨額の支援を行ってきた。また、30カ国以上で独立系メディアを支援し、2023年には6,200人のジャーナリストと707の報道機関に資金提供した。BBC関連団体TNIにはNHKも加盟しており、「偽情報対策」と称した言論統制の可能性が指摘されている。メディア業界では広告収入の減少により、政府資金への依存が進んでいるが、その結果、公平性が損なわれる懸念もある。USAIDの閉鎖は、「アメリカは世界の警察ではない」というトランプ氏の主張を反映し、国際援助より国内優先の動きを強めるものだ。USAIDは、米国の外交政策の一環として経済開発、人道支援、民主主義の促進を担い、ケネディ大統領の大統領令によって設立された。東西冷戦時代には対共産主義の安全保障政策の一環として設立され、CIAとも連携してきた。しかし、東西冷戦が終結した1990年代以降は、共産主義拡大の防止から人道支援や持続可能な開発支援へと重点が移った。同時多発テロ以降は、中東・アフリカでのテロ対策支援の比重が増す一方、環境政策や人権政策の分野では、海外の行き過ぎたポリコレ運動に加担しているとの批判もある。
USAIDは、日本の制度で言えば外務省傘下の政府開発援助(ODA)制度や国際協力機構(JICA)に相当する。ただし、日本の場合、安全保障よりも経済支援や技術支援が中心である。また、USAIDの年間予算はJICAの30倍以上の規模を持つ独立省庁である。海外支援の多くは、貧困支援や経済支援の名目で巨額の資金が海外のエージェントに委託されるため、不正や不透明な資金流用が問題視されることも多い。今回、マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が、USAIDの不正支出やポリコレ政策の輸出を批判し、解体を求めている。ただし、貧困支援や経済支援は国務省に引き継がれる計画だという。日本でも民主党政権時代に「行政刷新会議による事業仕分け」が行われたが、省庁への圧力に終始し、財政削減の効果は限定的だった。アメリカのように、国家規模で大胆な改革を実行する姿勢には、改めて驚かされる。ただ、この混乱の間隙をついて出てくる「一帯一路(Belt and Road Initiative, BRI)」の中国の動きには要注意だ。
USAIDは、日本の制度で言えば外務省傘下の政府開発援助(ODA)制度や国際協力機構(JICA)に相当する。ただし、日本の場合、安全保障よりも経済支援や技術支援が中心である。また、USAIDの年間予算はJICAの30倍以上の規模を持つ独立省庁である。海外支援の多くは、貧困支援や経済支援の名目で巨額の資金が海外のエージェントに委託されるため、不正や不透明な資金流用が問題視されることも多い。今回、マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が、USAIDの不正支出やポリコレ政策の輸出を批判し、解体を求めている。ただし、貧困支援や経済支援は国務省に引き継がれる計画だという。日本でも民主党政権時代に「行政刷新会議による事業仕分け」が行われたが、省庁への圧力に終始し、財政削減の効果は限定的だった。アメリカのように、国家規模で大胆な改革を実行する姿勢には、改めて驚かされる。ただ、この混乱の間隙をついて出てくる「一帯一路(Belt and Road Initiative, BRI)」の中国の動きには要注意だ。