ヘイトスピーチ規制は「検閲」2025年02月15日

ヘイトスピーチ規制は「検閲」
米国のバンス副大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議で演説し、欧州のヘイトスピーチ規制を「検閲」と批判した。ウクライナ情勢にはほとんど触れず、「米国第一主義」を掲げるトランプ政権と欧州の亀裂が鮮明となった。また、欧州各国に防衛費の増額を求めた。バンス氏は欧州政治の現状を「民主主義の原則に反する」と非難し、極右政党AfDのワイデル共同党首とも会談。これに対し、ドイツなどから「選挙干渉」との批判が出ている。ドイツのネットワーク執行法(NetzDG)は、SNS上の違法コンテンツを迅速に削除することを企業に義務付けた法律で、2017年に施行された。ユーザー数200万人以上のSNS企業が対象で、ヘイトスピーチや誹謗中傷などの「明らかに違法な投稿」は24時間以内、調査が必要な場合は7日以内に対応しなければならない。違反した企業には最大約80億円の罰金が科される。2021年の改正で、不服申し立て制度や警察への通報義務が追加された。一方で、表現の自由の侵害や企業の負担増加といった批判もあり、現在はEUのデジタルサービス法(DSA)に統合され、規制の枠組みが拡大している。ドイツ国民から移民問題などで批判の的になっているドイツ社民党など左翼勢力は国民批判を規制したいのだろうが、バンス副大統領は表現の自由を侵す「行き過ぎた規制」だと批判しているに過ぎない。

罰金を恐れた企業は自主規制を強め、その結果、かつての米国民主党政権下でのSNSのように、投稿が事前に削除される事態が発生している。この状態は、冷静に見れば中国やロシアなどの独裁国家の情報統制と変わらない。日本でも、SNS上のヘイト発言や偽情報の拡散を規制するかどうかについて政治議論が進んでいる。確かに、目を覆いたくなるような罵詈雑言がSNS上にあふれる現状を見ると、大人の議論とは思えず情けなくなる。しかし、これを政治権力が規制するとなると話は別だ。歴史的に見ても、権力者はしばしば誤った判断を下してきた。「どの表現が正しく、何が間違いか」を権力が決めることがあってはならない。問題なのはSNSの発言そのものではなく、「匿名投稿」である。匿名性は自由な発言を担保する一方で、過激な投稿を助長する。例えば、ネット上で特定の投稿が一定数以上の批判を受けた場合に実名を公表する仕組みを導入すれば、発言に責任を持たせることが可能ではないか。また、拡散したユーザーも同時に実名公開とすることで、投稿の削除に頼らず、表現の責任を問う方法も考えられる。表現については権力不介入の原則を貫くべきだ。

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