USスチール買収禁止2025年01月05日

USスチール買収禁止
日本製鉄によるUSスチールの買収計画は、バイデン米大統領が買収禁止を命じたことで挫折した。USスチールは全盛期には世界需要の4割を供給し、米国の鉄鋼大国としての繁栄を象徴する存在だった。しかし近年、海外勢との競争で経営が悪化し、買収合併を通じて協業相手を探していた。日鉄が買収計画を発表したものの、労働組合(USW)が雇用への影響を懸念して反対。バイデン氏は「USスチールは国家の背骨であり、米国人による所有が必要」と強調し、国家安全保障や雇用保護の観点から買収を阻止した。日鉄の提案が拒絶された背景には、米国民の自国企業の「身売り」に対する強い抵抗感がある。日本企業は過去にも東芝のウェスチングハウス買収失敗がある。今回も政府の介入により、保護主義的な機運が強まった。しかし、米産業界はUSスチール買収問題の政治化が米経済に大きな負担を強いる可能性を指摘し、バイデン政権の対応を批判。米政府が自国産業保護を優先した結果、経済論理が軽視され、米国の競争力低下や国際的信頼性の損失につながるリスクも指摘する。今回の件は、米国における外資企業の買収が依然として高い壁であることを再確認させた。自国企業が傾けば損だと分かっていても守るか、復活させるために他国企業との合併を選ぶかは難しい問題だ。鴻海に買収されたシャープや同社に買収されかけた日産自動車や、カナダ資本のセブンイレブンとの合併提案のことを考えると良くわかる。

結局シャープは切り売りされてその企業ブランドはことごとく地に落とされた。日産とて一度はフランス・ルノーにコストカットを条件に資本援助をされて息を吹き返したものの、新しい車種が生み出せず1%も営業利益を得られない事態に陥っている。もちろん日鉄の提案はUSSの切り売りや雇用削減ではない。新技術を導入し米国工場を守って雇用を確保し、合併で世界シェアのトップを取ろうというポジティブな買収合併提案で鴻海やルノーのような吸血戦略ではなかったが、米国には日本に乗っ取られるという感情が強かったのだと思う。かつて日本が米国の土地や企業を買収し、米国企業が衰退した80年代を思い起こす米国人も少なくないのだろう。この先、国内でホンダと提携した日産や売却をはねつけているセブンがどのような展開をするか全く先が見えないが、中国やインドをライバルにしたシェアの取り合いは世界規模で激化する。自国主義で国内企業と国民生活が守れるかどうかは極めて不透明というほかない。
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