坂の上の雲 ― 2025年01月04日

明治の激動期を描いた司馬遼太郎の名作『坂の上の雲』は、秋山兄弟や正岡子規といった歴史上の実在人物を中心に、日露戦争を背景に繰り広げられる小説だ。先日終了したドラマは2009年から3回目の再放送だそうだ。自分は2度目の視聴となるがとなるが、この配役を契機に売れっ子スターになった俳優も多い。ロシア中国とロケをして撮影に金をかけているのはさすが放漫経営のNHKドラマだと感心する。今ならNetflixかAmazonプライムなどから資金調達しないと撮れない作品と思う。司馬小説に傾倒した時期が若いころにあってこの作品も夢中に読んだ記憶がある。ドラマは脚色が若干強いもののほぼ小説を忠実に描いている。ただ、司馬遼太郎の描き方が気に入らない左右の人たちからは評判が悪いらしい。明治時代を能天気に描きすぎだとか、旅順攻略の乃木将軍の描き方が史実と違うとか、秋山兄弟を質実剛健にし過ぎだとか、正岡子規の作風を歪めているとか、挙げればきりがない。歴史小説とは作者の思い入れが発露して当たり前だが、歴史家は気に食わないらしい。
日露海戦での「丁字戦法」「東郷ターン」がこのドラマの最終回のクライマックスで描かれる。この作戦は秋山真之がつくったオリジナル戦術のように描かれるが、「丁字戦法」そのものは当時の海戦の定番戦術のひとつだ。「丁字戦法」にうまく導いた「東郷ターン」は東郷平八の度胸の良さを表現するものだ。海戦の勝ち負けは敵艦隊と向き合うときにどちらが大砲をたくさん使えるかで決まる。縦型に船団を並べたロシア艦隊の前を塞ぐように日本艦隊が横並びに変えて先頭艦に一斉砲火を浴びせて勝ったというのがこの作戦だ。縦型に艦隊を並べては後に続く戦艦は同士討ちを防ぐために前方に砲撃ができず砲火量で不利なのだ。ただ、敵艦に近づいてから横腹をみせて被弾面積を広げると味方も砲撃の餌食になる可能性が高いのでこの距離感は艦長の肝で決まる。「東郷ターン」は東郷の進路変更指示が敵艦の砲撃可能距離ぎりぎりに近づくまで出さなかった胆力が後世に評価されているわけだ。航空機で確実に敵艦を仕留める空母が登場して戦艦の存在は意味をなさなくなるが、戦艦同士の戦闘は武者同士の一騎打ち感に近いものがあるので人気があるのだろう。今や海の戦闘は軍事衛星とも連携するイージス艦と潜水艦で情報を先に掴んだものが勝者となる時代なので海戦そのものが意味をなさなくなっているが、未だに漫画や映画では軍事挑発の局地戦が描かれそれなりに人気がある。そろそろ空母「いぶき」の新刊が発売され、原潜「やまと」のドラマの続きが準備される頃だ。
日露海戦での「丁字戦法」「東郷ターン」がこのドラマの最終回のクライマックスで描かれる。この作戦は秋山真之がつくったオリジナル戦術のように描かれるが、「丁字戦法」そのものは当時の海戦の定番戦術のひとつだ。「丁字戦法」にうまく導いた「東郷ターン」は東郷平八の度胸の良さを表現するものだ。海戦の勝ち負けは敵艦隊と向き合うときにどちらが大砲をたくさん使えるかで決まる。縦型に船団を並べたロシア艦隊の前を塞ぐように日本艦隊が横並びに変えて先頭艦に一斉砲火を浴びせて勝ったというのがこの作戦だ。縦型に艦隊を並べては後に続く戦艦は同士討ちを防ぐために前方に砲撃ができず砲火量で不利なのだ。ただ、敵艦に近づいてから横腹をみせて被弾面積を広げると味方も砲撃の餌食になる可能性が高いのでこの距離感は艦長の肝で決まる。「東郷ターン」は東郷の進路変更指示が敵艦の砲撃可能距離ぎりぎりに近づくまで出さなかった胆力が後世に評価されているわけだ。航空機で確実に敵艦を仕留める空母が登場して戦艦の存在は意味をなさなくなるが、戦艦同士の戦闘は武者同士の一騎打ち感に近いものがあるので人気があるのだろう。今や海の戦闘は軍事衛星とも連携するイージス艦と潜水艦で情報を先に掴んだものが勝者となる時代なので海戦そのものが意味をなさなくなっているが、未だに漫画や映画では軍事挑発の局地戦が描かれそれなりに人気がある。そろそろ空母「いぶき」の新刊が発売され、原潜「やまと」のドラマの続きが準備される頃だ。