マッキンリー山 ― 2025年01月25日
米内務省は、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称したと発表した。また、アラスカ州の北米最高峰デナリ山は、かつての名称「マッキンリー山」に戻された。これらはトランプ大統領が大統領令で命じた改称である。内務省は声明で、改称が米国の偉人と歴史的資産を祝福する目的だと説明した。「アメリカ湾」はさすがに笑ってしまうが、「マッキンリー山」は経緯がある。「マッキンリー山」のあるアラスカは1867年にロシアからアメリカが買収した。1897年、北米最高峰は当時の大統領ウィリアム・マッキンリーにちなみ「マッキンリー山」と命名されたが、この名称は1896年、オハイオ州の採鉱者が提案したものだ。1975年、アラスカ州政府は山の正式名称を先住民の呼称「デナリ」(大きな山)に変更するよう連邦政府に働きかけ、1980年にはデナリ国立公園が設置された。しかし連邦地名局は「マッキンリー山」を維持し、呼称が並存する状況が続いた。2015年、バラク・オバマ大統領は山の名称を「デナリ」に変更したが、この決定はオハイオ州議員の反発を招いた。デナリ山は2015年にオバマ大統領が先住民の呼び名に改名したものだ。トランプ氏はウィリアム・マッキンリー大統領への敬意から名称復帰を目指し今回の改称に至ったわけだ。
地元民の気持ちになれば、150年前まで続いた山の名前に戻してほしいという思いは理解できる。しかし、日本の山にも明治以降に名称が変更された例は少なくなく、羊蹄山や剱岳がその代表だ。羊蹄山はアイヌ語で「ヌプリ(山)」と呼ばれており、剱岳も地元の信仰に基づきさまざまな名前で呼ばれてきた。それでも、これらの山を元の呼び名に戻せという声が上がらないのは、呼称に対する政治的な動きがないためだろう。富士山ですらかつては「不二山」「不尽山」「富士ノ高嶺」などの呼称があったが、江戸時代の呼び名に戻せという主張は聞かない。米国は多民族・多宗教国家であるため、大統領という国を統一する象徴を重視する傾向があるのだろう。「マッキンリー山」に関しては、黒人であるオバマ大統領が地元民族に肩入れしたことで、地名が政治的な問題に発展したともいえる。しかし、さすがに「アメリカ湾」への改称には正当な理由が見当たらない。メキシコ湾という名前は16世紀にメキシコから中南米に探検を行ったスペイン人やポルトガル人によって名付けられ、400年以上も使用されてきたものである。これを改称するのは無理がある。不法移民や関税をめぐるメキシコとの問題から、トランプ大統領が「メキシコ湾」という名称を取引に使うという説もあるが、いずれにしてもばかげた話だ
地元民の気持ちになれば、150年前まで続いた山の名前に戻してほしいという思いは理解できる。しかし、日本の山にも明治以降に名称が変更された例は少なくなく、羊蹄山や剱岳がその代表だ。羊蹄山はアイヌ語で「ヌプリ(山)」と呼ばれており、剱岳も地元の信仰に基づきさまざまな名前で呼ばれてきた。それでも、これらの山を元の呼び名に戻せという声が上がらないのは、呼称に対する政治的な動きがないためだろう。富士山ですらかつては「不二山」「不尽山」「富士ノ高嶺」などの呼称があったが、江戸時代の呼び名に戻せという主張は聞かない。米国は多民族・多宗教国家であるため、大統領という国を統一する象徴を重視する傾向があるのだろう。「マッキンリー山」に関しては、黒人であるオバマ大統領が地元民族に肩入れしたことで、地名が政治的な問題に発展したともいえる。しかし、さすがに「アメリカ湾」への改称には正当な理由が見当たらない。メキシコ湾という名前は16世紀にメキシコから中南米に探検を行ったスペイン人やポルトガル人によって名付けられ、400年以上も使用されてきたものである。これを改称するのは無理がある。不法移民や関税をめぐるメキシコとの問題から、トランプ大統領が「メキシコ湾」という名称を取引に使うという説もあるが、いずれにしてもばかげた話だ