パンダ外交??2025年04月29日

パンダ外交
日中友好議員連盟の森山裕会長(自民党幹事長)らは、中国・北京で中国人民対外友好協会の楊万明会長と会談し、ジャイアントパンダの貸与を要請した。現在、日本にいる6頭のパンダは貸与期限の終了により、全頭が中国へ返還される予定である。森山氏は、日中関係の改善には人的交流と相互理解が不可欠であると強調し、同連盟に所属する若手国会議員による年内の訪中を提案した。また、森山氏らは中国共産党中央対外連絡部の劉建超部長との夕食会にも参加し、翌29日には中国共産党序列3位の趙楽際・全国人民代表大会常務委員長との会談も調整中とされる。これらの活動は、日中間の国民感情の改善と外交関係の強化を目指した取り組みとされており、パンダの貸与要請も、両国の友好関係を象徴する一歩として共同通信社は報じた。

しかし、先日公明党代表が訪中したばかりのこの時期に、今度は超党派で訪中とは驚きだ。今回の訪中団には与党議員だけでなく、岡田克也氏(立憲民主党前幹事長)、近藤昭一氏(立憲民主党現幹事長)、古川元久氏(国民民主党代表代行)、志位和夫氏(共産党委員長)ら野党議員も含まれ、総勢約15名が参加しているという。その中で、共同通信が最初に報じたのが「パンダ貸与のお願い」だったことには、正直耳を疑う。邦人の拉致・監禁、領海・領空の侵犯、水産資源に関する放射能デマ、農水産物の輸入規制、レアアースの輸出制限、訪日中国人による違法行為の増加、日本国内の不動産買い占め、太陽光パネルのダンピング、電子機器のバックドア疑惑、日本技術の不正取得、為替操作による元安誘導など、中国による対日不正行為は数え切れないほどある。こうした現実がある中で、パンダ貸与要請がトップニュースになることには強い違和感を覚える。

ジャイアントパンダは四川省に生息するが、同地域は中国が武力侵攻によって奪取した、かつてのチベット領の希少動物だ。パンダは中国のマスコットのように扱われるが、その実はチベット侵略の象徴でもある。中国は、パンダの愛らしさを利用し、これまでに約60頭を各国に貸し出す「パンダ外交」を展開してきた。貸与中止の理由として「自然保護の一環で野生に返す」と説明するが、実際には外交カードとして利用し、自国に有利な条件を引き出す道具にしていることは明白だ。こうした背景を理解しているはずの国会議員たちが、与野党そろって「友好」の美名のもとに訪中し、パンダ貸与を要請するとは理解に苦しむ。中国側が過去の不正を認め、改善の意志を示した上で、お詫びとしてパンダ貸与を申し出るなら話は別だが、日本側から要請する姿勢は見当違いではないか。今回の訪中が「親中」か「媚中」かは問わない。しかし、米中貿易摩擦が激化し、トランプ前大統領の関税政策が注目される中でのこのタイミングは、外交センスの欠如といわざるを得ない。こうした振る舞いは、アメリカからも厳しく注視されていることを忘れてはならない。「どちらにもいい顔をする」いわゆる蝙蝠(こうもり)外交は、いずれ破綻する運命にある。もし、訪中議員たちがそのような現実を直視せず、選挙向けのパフォーマンスとしてパンダを求めているのだとすれば、日本の政治の将来は極めて危うい。

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